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8.届いた想い
しおりを挟む*再び眞琴視点に戻ります。
僕は匠海の手を引いて小走りで校舎の隅の空き教室へと向かった。
その教室は薄暗く空気はひんやりとしていて、皆の足音や話し声が遠くに感じられる。机や椅子のないがらんとした部屋はまるで別の空間に瞬間トリップした気にさせる。
僕が握る匠海の指先は白く、冷たくなっていた。
僕は匠海に向き合ってから指先を温めるように両手でそっと包んでみた。
「匠海がいてくれたから勇気が出たんだ。ありがとう」
僕がそう言うと、匠海はぼんやりした表情から目を見開いてはっとした顔に変わる。
「いつかやっぱり俺から眞琴は飛び去っていくのかな」
なんて言う匠海の顔は本当に泣きそうだった。
「僕ね、今までは匠海がそばにいて守ってくれてることで満足してた。でもね、今は頑張って外の世界に出てみようって思えたんだ」
僕がそういった途端、匠海は僕の二の腕を強い力で握り込んだ。
その力はとても強くて、痛い。その痛みはまるで匠海の心の痛みのように僕に伝わってきた。
「嫌だっ! 眞琴といるために俺がいるんだ。眞琴がいない世界なんて許せない。眞琴は俺が好きなんだろう? 何で俺の籠の中にいてくれないんだよ。俺はもう大切なものは失いたくないんだ……。頼むよ……」
少しずつ弱くなっていく匠海の言葉とは裏腹に、握り込む手の力は益々強くなる。
匠海の目には、昔何か大切なものを失った時の影がちらついている気がした。
僕は僕の右腕を掴む匠海の手に左手をそっと重ねる。
(匠海、僕が離れるかもなんて心配はしなくて良いのに。だって僕は、匠海が見守る中でしか息ができないんだよ)
今なら僕の気持ちを胸を張って匠海に言えると思った。
「匠海、僕、匠海が好きなんだ。
匠海がいてくれるから今の僕は外の世界が怖くない」
僕の言葉を匠海はどう受け止めたら良いのか分からずに戸惑っているように見えた。
僕はさらに言葉を続ける。
「だからね。僕はずっと匠海と一緒にいたい。そのために僕は強くなりたいんだ。
僕、これからも頑張るから僕を一人にしないで」
匠海の手の力が抜け、ゆっくりと僕の腕から離れていった。
僕が笑顔なのを見て、クシャリと顔を歪める。
「俺も眞琴がずっとずっと好きだったよ。眞琴は別に強くなんかなる必要は無いんだ。だから、もう俺から離れないで。俺は眞琴無しでは生きていけないんだ」
そう言った匠海は、僕を抱きしめてきた。
匠海、泣いてるのかもしれない。
匠海の背中は小さく震えていたんだ。
「ありがとう。匠海っていう鳥かごがあるから僕は羽ばたけるんだ。いつでも戻ってこれる場所を匠海が作ってくれたから。
匠海の好きな人が僕で嬉しい。
匠海は今のままの僕でも良いって言ってくれるけど。
いつかね、僕も匠海を守れるくらい大きな鳥になりたいなあ。だから、いつでも僕のそばにいて見守ってて」
匠海は僕を抱きしめる腕を緩めて、僕の顔を見つめてきた。
その瞳にはやっぱりたくさんの涙があふれている。
「俺は眞琴を守れることが生きがいなんだ。眞琴のそばにいられれば他には何もいらない。眞琴、好きだよ」
「うん、匠海。僕もだ」
それから、僕は匠海の頬に触れる。少しだけ濡れた頬は温かくて柔らかかった。
そして自分から匠海の唇にキスをする。
二人の届かなかった言葉が、やっと互いに届くことができたんだ。
嬉しくてキスするのを止められなかった。
匠海は少しだけ固まって、再び強く抱きしめてくる。
僕がゆっくりと唇を離すと、今度は匠海がそれを追いかけるように僕にキスをしてきた。
いつの間にか匠海の右手は、僕の頭を包みこんでいた。
匠海の唇が僕の頬から首筋、項へと滑るように触れてくる。
くすぐったくて、僕は思わず肩をすくめたけど、匠海の真剣な眼差しに言葉を飲み込む。
「眞琴、好き、好きだ。俺を拒まないで。頼む。」
匠海の囁きに胸が熱くなり、僕はされるがままに身を委ねた。
すると、匠海は僕の制服のネクタイをほどいて、更にはシャツのボタンを外し始める。
僕は外気の寒さに身体が震えた。
途端に匠海の動きが止まる。
「ごめん、怖いよな。でも、それでも眞琴に触れて俺のものだって安心したいんだ」
匠海は泣きそうな声を出しながら、僕を決して離さないと宣言するように強く抱きしめる。
僕はそんな匠海の髪を優しく指で梳いた。
恥ずかしさよりも今は匠海を安心させたい気持ちのほうが強かった。
「匠海、僕は怖くなんかないよ。匠海のする事なら、僕は何でも嬉しいんだ。安心して。
僕はずっとそばにいるよ。だから、匠海も一緒にいてね」
匠海はそれを聞いて、少しだけ僕を抱きしめる腕の力が緩む。
僕は匠海の背中を撫でながら再び口を開いた。
「匠海、好き。どんな匠海も大好き。
ずっと僕を守ってくれてありがとう。
不安にさせてごめんね」
僕から言葉が溢れて止まらない。匠海はそんな僕の身体に再び唇を寄せてきた。
突然、僕の鎖骨を甘噛みする。
「んっ」
思いがけない刺激に僕は甘い声を出す。
そして、匠海は宥めるように噛んだ箇所を舐めあげる。
さらに匠海は、僕の胸元に唇を寄せて強く吸い上げてきた。
その感触に、僕は思わず匠海の頭を両手でぎゅっと抱きしめる。
匠海は顔を上げ、どこか無垢な、子どものような目で僕を見つめてきた。
その視線に、先ほどの彼の「真琴のそばにいさせて」という言葉が脳裏をよぎり、胸が熱くなった。
匠海の唇が離れた後、僕の胸元に赤い痕が浮かんでいるのを見て、匠海の顔がふっと緩む。
「これで眞琴は俺のものだよね」
と言う匠海の満足気な表情に、僕は自分が本当に匠海の「もの」になれた気がして、心臓がドキドキと高鳴った。
でも、僕だけじゃなく、匠海も僕のものになってほしい――そう思った瞬間、いてもたってもいられなくなった。
僕は屈んでいた匠海を引き上げ、彼のネクタイを緩めて首筋に唇を寄せた。
僕が匠海のものになれたなら、僕も匠海に自分の痕をつけたかった。
少し力を込めて吸い上げると、匠海の首筋がほんのり赤く染まった。でも、すぐにその色は薄れ、ほとんど目立たなくなってしまう。
僕はそれが悔しくて唇を尖らせた。
そんな僕を見て、匠海はフッと笑う。
と同時にチャイムが鳴る。
僕たちはすっかり今が学校の中でこれから片付けをしなくちゃいけないってことを忘れていた。
僕たちは互いに顔を見合わせて、声を出して笑い合った。
「そろそろ戻ろうか」
そう言いながら僕の制服を整えてくれる匠海の顔は晴れ晴れとしていた。
僕はそれがたまらなくなって、ネクタイを付け直してくれる匠海の頬に思わずキスをする。
すると、不意をつかれた匠海は一瞬呆けた顔をしたあと、噛みつくように僕の唇を奪ってきた。
その時に、匠海の舌が僕の口の中に侵入する。
僕は息ができなくて、匠海の胸をどんどんと叩いた。
ゆっくりと離れていく匠海の顔はとても色っぽくて、僕ははあはあと息をしながら顔を真っ赤にした。
「可愛すぎると、我慢できなくなる」
と言いながらもういつもの穏やかで爽やかな顔をした匠海は、僕と自分ののネクタイをあっという間に整えていた。
僕は、そんな匠海をちょっとだけずるいって思った。
それから。
匠海は相変わらず僕が他の人と仲良くしてると心配になって割り込んでくる。
匠海は不安気な顔を隠そうとしない。それが僕はたまらなく嬉しくて、その度に匠海の手を触れるんだ。
すると、匠海も少しだけ安心した顔になって僕の手を握り返してきた。
それを見た星宮さんはなぜかガッツポーズだった。
「ヤンデレとハピエンの融合よ!尊い!」
相変わらず星宮さんの言葉は僕にはちっとも分からなかった。
廊下から見ていた和馬は僕たちをからかう。
「匠海もいい加減、眞琴を信じてやれよ。眞琴、やっぱり俺と付き合わないか」
和馬はそう言って笑う声はいつもの元気な和馬だった。
僕と目が合うと、ひまわりのような明るい笑顔を返してくれる。
「そうやって心配してくれる匠海だから僕は好きなんだ」
僕がそう言うと、和馬は小さく肩をすくめる。
「まぁ、そう言うと思ったぜ」
匠海はそんな僕の言葉を聞いて、眉をへニョリと下げて僕の肩に頭を乗せてきた。
「眞琴、好きだよ。ずっと一緒だ」
「うん、僕も大好き。約束だよ」
そう言って抱きしめて僕の髪に軽くキスをしてくる匠海の腕の強さが僕には心地良かった。
匠海は僕を腕の中にしまい込んで安心するし、僕は匠海という鳥かごの中で安らげる。
これは他の人から見たらおかしな関係かもしれない。
けれどこれが僕達の幸せなんだ。
匠海、ずっとずっと一緒だよ。
僕を離さないでね。
学校のベランダではニ羽の雀が寄り添うようにしてくっついているのが見えた。
おしまい
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すれ違いからのハッピーエンド.........大好き!!!
欲を言えば拓海と眞琴のイチャイチャと和馬が幸せになれるところまで見たいな〜なんて笑
たべっこどうぶつ さま。
感想ありがとうございます💕✨。
私もすれ違いからのハッピーエンドが何よりも大好きなので、同じものが好きな方から、こうして感想をいただけて、本当に嬉しいです✨。
二人の後日談と、和馬が幸せになるお話のリクエスト、ありがとうございます😭。
今、新作を書いておりますので、そちらが終わりましたら、構想を練ってみたいと思います!
来月には新作を完結できるかと思いますので、その後にでも!
ついでに、読みづらいところを修正もしたい……。
たべっこどうぶつさまから感想をいただき、元気をいただけました。
ありがとうございます!
頑張ってみます✨
退会済ユーザのコメントです
大福さま。
感想ありがとうございます💕✨
そして、最後までお読みいただき感謝しかありません😭
大福さまのおっしゃる通り二人は共依存でしたね😂
それが眞琴の成長で崩れていって。でも、眞琴が匠海を大好き過ぎて闇堕ちせずにすんだのだと思います🥰
そして、急遽思いついて作り上げた星宮さんにだいぶ救われました✨
キュンしていただけて良かったです💕なかなかラブにならなくて、最後まで苦労したので(両想いになっても何だか青春ものになってしまっていたのでラブになるように書き直しを何度もしました😂)
本当にありがとうございました✨
yu―chiさま。
感想ありがとうございます💕✨。
そして最後まで読んでいただき感謝で一杯です💕
匠海、何だかおかしなヤンデレになりました😂
色んな策略をしているわりにはうまくいってないですし、眞琴はどんどん成長していって、おいていかれそうになってましたし😂
でも何とか両思いになれて作者の私が一番ホッとしてます✨
そして星宮さんは突然思い立って、作品は完成していたにも関わらず二日前に追加したキャラでした。書いていて楽しかったので褒めていただけて嬉しいです✨