【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)

文字の大きさ
10 / 78

10.第一王子。

しおりを挟む
 仕立て屋を出て表通りを歩いていると、露店に王族の絵が並んでいた。
 金色の髪の青年――第一王子の絵に、俺は足を止める。

「うわ、これ……第一王子の絵だけすごいたくさんあるな。王子って、人気あるんだな」

 あれ、でも第一王子って確か小さいころ暗殺未遂があったみたいで、今は魔法で顔とか髪の色を変えてるって話だったよな。
 ってことはさ、これ、仮初の顔ってことか。
 そんな絵を持ってたってしょうがないじゃん。
 
 でも、かっこいい絵姿だから、偽物でも構わないってことかな?
 実物見たときにがっかりしないといいけどな。

 第一王子って、どんな人なんだろ。
 強くて、優しくて、国民のことを大事にしてくれる人ならいいな。

 もう王子は成人して色んな仕事も担っているから、そろそろ国民にも本当の姿をお披露目するだろうって聞いたけど。
 それにしてもこの世界、魔法で顔が変えられるなんてすごいよな。
 とはいっても、この国、プラーツ王国では、魔法は王族くらいしか魔法は使えない特別な力だ。
 昔は魔道士の数が多かったけれど、今は王族にしか魔力がほとんど残ってないらしい。
 一般の庶民にとって、魔法はおとぎ話や神話の中の世界だ。
  
 歴代の王族の中でも、今の第一王子は強い魔力を持つといわれてる。
 「顔を変える魔法」なんて特殊な魔法を使えるってだけで、どれほど特別な存在かわかる。
 そりゃあ、こんな絵が人気になるのも当然か。

 でも、どんなに魔法が使えても、結局は人間だ。
 その強さの裏で、きっと大変なことも多いんだろうな。

 そんなことを考えていたら、隣でフィンが小さく笑った。

「ふふ、王子様って言葉にみんな弱いんだろうね。君は、王族ってどう思う?」

「んー……遠い世界の人って感じだな」

「そっか」

 なぜかフィンは、つないでいた手をぎゅっと握りしめてきた。
 いつもより少しだけ、強く。
 
「けど、王族って責任も重くて、不自由なこともたくさんあるんじゃないかってことくらいは想像できるよ。
 それなのに、俺たち国民のために働いてくれてるんだろ?
 この国、他の国と比べても豊かなほうだし、これだけ町に活気があるってことは、きっと王様とか偉い人が、相当頑張ってくれてるんだと思う。
 だからさ。
 もし、王族の人たちに会うことがあったら“ありがとう”って言ってやりたいかな。
 あと、“お疲れ様”も。
 ま、そんなこと不敬すぎて言えないけどね」

 そう言うと、フィンが少し目を見開いて、柔らかく笑った。
 なんだか、すごく優しい笑顔だった。

「……ううん。きっと、その言葉が一番うれしいと思うよ」

「ん? なんか知ってるみたいな言い方だな」

「ふふ、そんなことないよ」

 そのフィンの笑顔が、この絵の王子と少しだけ似ていることに気付いた。
 けど、フィンにはかなわない。
 この絵よりも隣にいるフィンは何倍もかっこいいんだから。

 俺は王子の絵を見ていたはずなのに、いつの間にかフィンの横顔を見ていた。
 光を受けた髪が柔らかく輝いて、目元が穏やかで——見てるだけで胸が温かくなる。

 その瞬間、自分の中に、見たこともない感情がふつふつと湧き上がった。
 ずっと見ないようにしてきたパンドラの箱が、今まさに開こうとしているような気がした。
 だめだ。開けちゃいけない。
 なぜかそう思った俺は、慌てて俺はフィンから視線を逸らし、無理やり話題を変えた。

「な、なあ、次どこ行く? 腹ごなしに歩こうぜ!」

 俺の言葉に、フィンは懐から懐中時計を取り出して、時間を確かめていた。
 その時計、いつも持ってるよな。
 訓練の合間でも、フィンが大切にそれを扱っているのを見たことがある。
 きっと、思い入れのある品なんだろう。

「うん、そろそろいい時間だ。のんびり露店を眺めながら行こう。ねえ、エリゼオ」

「ん?」

「私は、君といる時間が好きだよ」

 その声が、真っ直ぐ胸に落ちてきた。
 冗談でも、軽い言葉でもなくて。
 本気の響きがあった。

 鼓動がひどくうるさい。
 街の喧騒が遠くに霞んで、ただフィンの声と笑顔だけが、やけに鮮明に残った。
 ほんとに俺、どうしちゃったんだろう。

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

処理中です...