先輩のことが好きなのに、

未希かずは(Miki)

文字の大きさ
2 / 14

2.二人だけの秘密

しおりを挟む
 先輩と付き合うようになってからは、土日はどちらかの家で過ごすことが多かった。
 僕の家は小さい弟妹たちがいてにぎやかだ。弟妹たちは先輩が大好きで取り合いになるから、あんまり二人きりにはなれなかった。
 けれど、小さい弟妹と遊んでいるときの先輩の優しい笑顔に僕はずっとドキドキしていた。先輩に抱っこされている妹がちょっとだけうらやましかったんだ。
 そんな僕に気がついたのかな。先輩が僕のそばに来て耳元で囁く。

「少しだけ、二人きりになれない?」

 僕は弟妹たちにリビングでおやつを振る舞って、その隙に二人きりで僕の部屋へと向かった。すると、先輩が僕の髪に触れて来る。

「はるの髪は柔らかくて気持ちいいな」

 先輩は僕にそう囁いて毛先にキスをしてくる。それから額と額を合わせ、じっと僕の目を見つめてきた。その目は、優しいだけじゃなくてギラギラした何かを感じて僕はゾクリとした。
 何か話さなくちゃと口を開いた途端、僕の部屋の扉が開く。
 おやつを食べ終えた弟妹たちが侵入してきたのだ。
 先輩は「残念、また今度ね」と言って、弟妹たちを引き連れてリビングへと先に向かっていった。

 先輩、また今度って何だよ!
 

 また別の日、先輩と僕の家で過ごしていると、秋良からこれから行くと連絡がきたことがあった。
 
「せ、せ、先輩っ! 大変っ! 秋良がこれから来るって!」

 俺がそう言うと、先輩は抱っこしていた妹を降ろして急に僕を後ろから抱きしめてきた。

「俺は、はるともっと一緒に過ごしたかったのに。はるは違うの?」

 そんなの、一緒にいたいに決まってるよ。でも、秋良は僕が断っても弟達に会いに来ちゃうから。
 僕は先輩の腕をぎゅっと握りしめてから、するりとその腕から抜け出した。

「先輩が見つかっちゃうと大変だよ。それに、急に来る時は、多分彼女と何かあった時だから話聞いてやらないと」

 困ったという感じで僕がへらりと笑って先輩に話すと、先輩は深くため息をついた。

「はるは、ほんとに夏目と仲がいいんだな」
「え?」
「……いや何でもない。またな」

 先輩は少しだけ硬い表情をしていたけど、すぐにいつもの優しい笑顔になって僕の頬に軽くキスをして帰っていった。
 僕は先輩の突然のキスに動転して、頬を押さえながらその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
 
 
 逆に兄弟のいない先輩の家ではご両親が仕事で忙しいらしく、二人きりでゆっくり過ごせる。

 付き合ってから二週間ぐらい経った定期テスト明けの土曜日、先輩の家で映画を見ようって誘われて一緒に映画を見ていた時だった。
 僕は、一夜漬けのテスト勉強をしていたせいで気付いたら眠ってしまったみたいだった。ぼうっとしながら目を開けると、先輩のドアップが目の前に広がっていた。

「おはよう」
「うわーっ!!!」

 大声で叫んで、僕は起き上がる。キョロキョロと周りを見渡して、僕は先輩のお家で先輩の膝枕で寝てしまっていたことに気付いた。

「せ、せ、せんぱいっ! ご、ご、ごめんなさいっ。僕なんてことをっ!」
「残念。君の寝顔をもっと見ていたかったな」

 先輩は、ふふっと笑いながら茶目っ気のある笑顔を見せて僕の頭を撫でる。そのままその手は僕の項をくすぐり、襟の中に少しだけ指を入れて鎖骨をなぞる。

「そんな可愛い顔、俺だけに見せてくれ」
「僕、そんな可愛くなんか、ないよ」
「可愛いかどうかは俺が決める。このまま俺の腕の中にいてくれたら良いのに」
 
 僕はもうキャパオーバーでソファーに突っ伏してしまう。すると先輩は、上から覆い被さるように僕を抱きしめて囁いてきた。

「そうやってずっと俺にドキドキしていてくれ。俺も頑張るからな」
 
 が、頑張るって何を!? もうっもうっ! 先輩は僕をキュン死させる気なのかな?
 あまりにドキドキしすぎた僕は、先輩とその後どう過ごしていたか何にも覚えていなかった。

 
 先輩との初めてのキスも、先輩のお家でだった。まだ付き合って一ヶ月くらいの頃だ。手土産に僕が持ってきたドーナツを二人並んで食べている時だった。
 
「クリーム、ついてるよ」
 
 先輩は、僕の口端に付いたクリームを指ですくってペロリと舐めた。その先輩の仕草が艶っぽくて、僕は心臓が強く脈打つのを感じた。
 口をパクパクさせてしまった僕は、きっと変な顔をしているに違いない。そんな顔を見られたくなくて、僕は先輩の胸に顔を埋めるなんて大胆なことをしてしまったんだ。そしたら、突然先輩がぎゅうっと抱き締めてきた。先輩の体温がじんわり伝わってきて僕はクラクラした。
 
「……はる、キスしていい?」
 
 先輩が掠れた声で僕の耳元で囁く。僕はそれが擽ったくて体がビクッと震えた。僕の身体はとても熱くてたまらない。僕はぎゅっと目をつぶって頷いた。
 すると、先輩の柔らかくて大きな手が僕の頬を包む。柔らかな指先が僕の頬を撫でる。その感触が、緊張で固まってしまった僕の肩の力を抜いていく。その瞬間――
 唇に柔らかい感触がした。
 
 あ、先輩とキスしてる!

 その時、ドーナツの甘い香りがした気がした。それはとても甘くて。
 幸せと緊張がい交ぜになって僕は涙が一つ溢れてきた。それが頬にあった先輩の指へと伝う。その途端、先輩はさっと離れてしまい僕はさみしくなった。
 
「こめん。焦りすぎた。君を泣かせるなんてな……」 
「違うよ! 僕、キスしたの初めてで、緊張しただけだからっ。謝らないで。僕の気持ちの問題なんだっ」
 
 先輩は少しだけ眉を下げたあと、僕の涙の跡を拭って微笑んだ。
 
「ごめんな。はるのファーストキスだったんだな。はるのペースに合わせるから。抱きしめるのは良い?」
 
 僕は、返事をせずに自分から先輩に抱きついた。先輩からは若葉の様な爽やかな匂いがして、僕は思いきりそれを吸い込んだんだ。
 先輩は、そんな僕を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。僕は、この時間がずっと続いて欲しくて先輩のシャツの裾をぎゅっと握り込んだ。
 これは、僕にとって大切な先輩との思い出だ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

【BL】無償の愛と愛を知らない僕。

ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。 それが嫌で、僕は家を飛び出した。 僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。 両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。 それから十数年後、僕は彼と再会した。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

処理中です...