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2.二人だけの秘密
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先輩と付き合うようになってからは、土日はどちらかの家で過ごすことが多かった。
僕の家は小さい弟妹たちがいてにぎやかだ。弟妹たちは先輩が大好きで取り合いになるから、あんまり二人きりにはなれなかった。
けれど、小さい弟妹と遊んでいるときの先輩の優しい笑顔に僕はずっとドキドキしていた。先輩に抱っこされている妹がちょっとだけうらやましかったんだ。
そんな僕に気がついたのかな。先輩が僕のそばに来て耳元で囁く。
「少しだけ、二人きりになれない?」
僕は弟妹たちにリビングでおやつを振る舞って、その隙に二人きりで僕の部屋へと向かった。すると、先輩が僕の髪に触れて来る。
「はるの髪は柔らかくて気持ちいいな」
先輩は僕にそう囁いて毛先にキスをしてくる。それから額と額を合わせ、じっと僕の目を見つめてきた。その目は、優しいだけじゃなくてギラギラした何かを感じて僕はゾクリとした。
何か話さなくちゃと口を開いた途端、僕の部屋の扉が開く。
おやつを食べ終えた弟妹たちが侵入してきたのだ。
先輩は「残念、また今度ね」と言って、弟妹たちを引き連れてリビングへと先に向かっていった。
先輩、また今度って何だよ!
また別の日、先輩と僕の家で過ごしていると、秋良からこれから行くと連絡がきたことがあった。
「せ、せ、先輩っ! 大変っ! 秋良がこれから来るって!」
俺がそう言うと、先輩は抱っこしていた妹を降ろして急に僕を後ろから抱きしめてきた。
「俺は、はるともっと一緒に過ごしたかったのに。はるは違うの?」
そんなの、一緒にいたいに決まってるよ。でも、秋良は僕が断っても弟達に会いに来ちゃうから。
僕は先輩の腕をぎゅっと握りしめてから、するりとその腕から抜け出した。
「先輩が見つかっちゃうと大変だよ。それに、急に来る時は、多分彼女と何かあった時だから話聞いてやらないと」
困ったという感じで僕がへらりと笑って先輩に話すと、先輩は深くため息をついた。
「はるは、ほんとに夏目と仲がいいんだな」
「え?」
「……いや何でもない。またな」
先輩は少しだけ硬い表情をしていたけど、すぐにいつもの優しい笑顔になって僕の頬に軽くキスをして帰っていった。
僕は先輩の突然のキスに動転して、頬を押さえながらその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
逆に兄弟のいない先輩の家ではご両親が仕事で忙しいらしく、二人きりでゆっくり過ごせる。
付き合ってから二週間ぐらい経った定期テスト明けの土曜日、先輩の家で映画を見ようって誘われて一緒に映画を見ていた時だった。
僕は、一夜漬けのテスト勉強をしていたせいで気付いたら眠ってしまったみたいだった。ぼうっとしながら目を開けると、先輩のドアップが目の前に広がっていた。
「おはよう」
「うわーっ!!!」
大声で叫んで、僕は起き上がる。キョロキョロと周りを見渡して、僕は先輩のお家で先輩の膝枕で寝てしまっていたことに気付いた。
「せ、せ、せんぱいっ! ご、ご、ごめんなさいっ。僕なんてことをっ!」
「残念。君の寝顔をもっと見ていたかったな」
先輩は、ふふっと笑いながら茶目っ気のある笑顔を見せて僕の頭を撫でる。そのままその手は僕の項をくすぐり、襟の中に少しだけ指を入れて鎖骨をなぞる。
「そんな可愛い顔、俺だけに見せてくれ」
「僕、そんな可愛くなんか、ないよ」
「可愛いかどうかは俺が決める。このまま俺の腕の中にいてくれたら良いのに」
僕はもうキャパオーバーでソファーに突っ伏してしまう。すると先輩は、上から覆い被さるように僕を抱きしめて囁いてきた。
「そうやってずっと俺にドキドキしていてくれ。俺も頑張るからな」
が、頑張るって何を!? もうっもうっ! 先輩は僕をキュン死させる気なのかな?
あまりにドキドキしすぎた僕は、先輩とその後どう過ごしていたか何にも覚えていなかった。
先輩との初めてのキスも、先輩のお家でだった。まだ付き合って一ヶ月くらいの頃だ。手土産に僕が持ってきたドーナツを二人並んで食べている時だった。
「クリーム、ついてるよ」
先輩は、僕の口端に付いたクリームを指ですくってペロリと舐めた。その先輩の仕草が艶っぽくて、僕は心臓が強く脈打つのを感じた。
口をパクパクさせてしまった僕は、きっと変な顔をしているに違いない。そんな顔を見られたくなくて、僕は先輩の胸に顔を埋めるなんて大胆なことをしてしまったんだ。そしたら、突然先輩がぎゅうっと抱き締めてきた。先輩の体温がじんわり伝わってきて僕はクラクラした。
「……はる、キスしていい?」
先輩が掠れた声で僕の耳元で囁く。僕はそれが擽ったくて体がビクッと震えた。僕の身体はとても熱くてたまらない。僕はぎゅっと目をつぶって頷いた。
すると、先輩の柔らかくて大きな手が僕の頬を包む。柔らかな指先が僕の頬を撫でる。その感触が、緊張で固まってしまった僕の肩の力を抜いていく。その瞬間――
唇に柔らかい感触がした。
あ、先輩とキスしてる!
その時、ドーナツの甘い香りがした気がした。それはとても甘くて。
幸せと緊張が綯い交ぜになって僕は涙が一つ溢れてきた。それが頬にあった先輩の指へと伝う。その途端、先輩はさっと離れてしまい僕はさみしくなった。
「こめん。焦りすぎた。君を泣かせるなんてな……」
「違うよ! 僕、キスしたの初めてで、緊張しただけだからっ。謝らないで。僕の気持ちの問題なんだっ」
先輩は少しだけ眉を下げたあと、僕の涙の跡を拭って微笑んだ。
「ごめんな。はるのファーストキスだったんだな。はるのペースに合わせるから。抱きしめるのは良い?」
僕は、返事をせずに自分から先輩に抱きついた。先輩からは若葉の様な爽やかな匂いがして、僕は思いきりそれを吸い込んだんだ。
先輩は、そんな僕を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。僕は、この時間がずっと続いて欲しくて先輩のシャツの裾をぎゅっと握り込んだ。
これは、僕にとって大切な先輩との思い出だ。
僕の家は小さい弟妹たちがいてにぎやかだ。弟妹たちは先輩が大好きで取り合いになるから、あんまり二人きりにはなれなかった。
けれど、小さい弟妹と遊んでいるときの先輩の優しい笑顔に僕はずっとドキドキしていた。先輩に抱っこされている妹がちょっとだけうらやましかったんだ。
そんな僕に気がついたのかな。先輩が僕のそばに来て耳元で囁く。
「少しだけ、二人きりになれない?」
僕は弟妹たちにリビングでおやつを振る舞って、その隙に二人きりで僕の部屋へと向かった。すると、先輩が僕の髪に触れて来る。
「はるの髪は柔らかくて気持ちいいな」
先輩は僕にそう囁いて毛先にキスをしてくる。それから額と額を合わせ、じっと僕の目を見つめてきた。その目は、優しいだけじゃなくてギラギラした何かを感じて僕はゾクリとした。
何か話さなくちゃと口を開いた途端、僕の部屋の扉が開く。
おやつを食べ終えた弟妹たちが侵入してきたのだ。
先輩は「残念、また今度ね」と言って、弟妹たちを引き連れてリビングへと先に向かっていった。
先輩、また今度って何だよ!
また別の日、先輩と僕の家で過ごしていると、秋良からこれから行くと連絡がきたことがあった。
「せ、せ、先輩っ! 大変っ! 秋良がこれから来るって!」
俺がそう言うと、先輩は抱っこしていた妹を降ろして急に僕を後ろから抱きしめてきた。
「俺は、はるともっと一緒に過ごしたかったのに。はるは違うの?」
そんなの、一緒にいたいに決まってるよ。でも、秋良は僕が断っても弟達に会いに来ちゃうから。
僕は先輩の腕をぎゅっと握りしめてから、するりとその腕から抜け出した。
「先輩が見つかっちゃうと大変だよ。それに、急に来る時は、多分彼女と何かあった時だから話聞いてやらないと」
困ったという感じで僕がへらりと笑って先輩に話すと、先輩は深くため息をついた。
「はるは、ほんとに夏目と仲がいいんだな」
「え?」
「……いや何でもない。またな」
先輩は少しだけ硬い表情をしていたけど、すぐにいつもの優しい笑顔になって僕の頬に軽くキスをして帰っていった。
僕は先輩の突然のキスに動転して、頬を押さえながらその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
逆に兄弟のいない先輩の家ではご両親が仕事で忙しいらしく、二人きりでゆっくり過ごせる。
付き合ってから二週間ぐらい経った定期テスト明けの土曜日、先輩の家で映画を見ようって誘われて一緒に映画を見ていた時だった。
僕は、一夜漬けのテスト勉強をしていたせいで気付いたら眠ってしまったみたいだった。ぼうっとしながら目を開けると、先輩のドアップが目の前に広がっていた。
「おはよう」
「うわーっ!!!」
大声で叫んで、僕は起き上がる。キョロキョロと周りを見渡して、僕は先輩のお家で先輩の膝枕で寝てしまっていたことに気付いた。
「せ、せ、せんぱいっ! ご、ご、ごめんなさいっ。僕なんてことをっ!」
「残念。君の寝顔をもっと見ていたかったな」
先輩は、ふふっと笑いながら茶目っ気のある笑顔を見せて僕の頭を撫でる。そのままその手は僕の項をくすぐり、襟の中に少しだけ指を入れて鎖骨をなぞる。
「そんな可愛い顔、俺だけに見せてくれ」
「僕、そんな可愛くなんか、ないよ」
「可愛いかどうかは俺が決める。このまま俺の腕の中にいてくれたら良いのに」
僕はもうキャパオーバーでソファーに突っ伏してしまう。すると先輩は、上から覆い被さるように僕を抱きしめて囁いてきた。
「そうやってずっと俺にドキドキしていてくれ。俺も頑張るからな」
が、頑張るって何を!? もうっもうっ! 先輩は僕をキュン死させる気なのかな?
あまりにドキドキしすぎた僕は、先輩とその後どう過ごしていたか何にも覚えていなかった。
先輩との初めてのキスも、先輩のお家でだった。まだ付き合って一ヶ月くらいの頃だ。手土産に僕が持ってきたドーナツを二人並んで食べている時だった。
「クリーム、ついてるよ」
先輩は、僕の口端に付いたクリームを指ですくってペロリと舐めた。その先輩の仕草が艶っぽくて、僕は心臓が強く脈打つのを感じた。
口をパクパクさせてしまった僕は、きっと変な顔をしているに違いない。そんな顔を見られたくなくて、僕は先輩の胸に顔を埋めるなんて大胆なことをしてしまったんだ。そしたら、突然先輩がぎゅうっと抱き締めてきた。先輩の体温がじんわり伝わってきて僕はクラクラした。
「……はる、キスしていい?」
先輩が掠れた声で僕の耳元で囁く。僕はそれが擽ったくて体がビクッと震えた。僕の身体はとても熱くてたまらない。僕はぎゅっと目をつぶって頷いた。
すると、先輩の柔らかくて大きな手が僕の頬を包む。柔らかな指先が僕の頬を撫でる。その感触が、緊張で固まってしまった僕の肩の力を抜いていく。その瞬間――
唇に柔らかい感触がした。
あ、先輩とキスしてる!
その時、ドーナツの甘い香りがした気がした。それはとても甘くて。
幸せと緊張が綯い交ぜになって僕は涙が一つ溢れてきた。それが頬にあった先輩の指へと伝う。その途端、先輩はさっと離れてしまい僕はさみしくなった。
「こめん。焦りすぎた。君を泣かせるなんてな……」
「違うよ! 僕、キスしたの初めてで、緊張しただけだからっ。謝らないで。僕の気持ちの問題なんだっ」
先輩は少しだけ眉を下げたあと、僕の涙の跡を拭って微笑んだ。
「ごめんな。はるのファーストキスだったんだな。はるのペースに合わせるから。抱きしめるのは良い?」
僕は、返事をせずに自分から先輩に抱きついた。先輩からは若葉の様な爽やかな匂いがして、僕は思いきりそれを吸い込んだんだ。
先輩は、そんな僕を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。僕は、この時間がずっと続いて欲しくて先輩のシャツの裾をぎゅっと握り込んだ。
これは、僕にとって大切な先輩との思い出だ。
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