【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)

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32. 本当の君と 前編

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 翼に抱きしめられたとき、今までの絡まっていた気持ちが、すっきりとほどけた気がした。
 そしたら余計に、涙が止まらなくて、グチャグチャに泣いてしまった。

「碧依が話したいなら、ちゃんと話そうよ。自分の気持ちに正直になって良いんだよ」

 翼は、背中をさすりながらそう言ってくれた。
 その言葉が僕の心を軽くしてくれたんだ。
 僕、大和とちゃんと話したい。
 許してもらえないかもしれないけど、騙したまま、傷つけたままにしてるのは、逃げてるだけなんじゃないかって思ったから。 

 次の日の朝、翼にそう伝えたら、「碧依、頑張って!」って笑って、バタバタとどこかへ出かけて行った。


 今日は午前中の講義がなくなったって、ゼミの仲間から連絡がきた。
 だから、家で一人考えてた。
 何から話せばいいんだろう?
 翼のふりをしてたこと?
 でも、僕、最初から大和にバレてたんだよね。
 大和、ほんとすごいなって思う。
 大和が言ってくれた言葉が蘇る。

「初めて会った時から、好きだった」

 初めて。
 僕は、翼だと思われてると思って、バイトの初日のことを言ってるんだとずっと思ってた。
 でも、大和がずっと碧依として見てくれてたなら、いつが初めてなんだろう?
 やっぱり、ゼミの初日のことかな。
 あの時、窓際に大和が立ってて、初めて挨拶をしてくれた。
 キラキラした笑顔が、すっごく綺麗で、眩しかった。
 でも、僕、ドキドキしすぎて、挨拶もろくにできなかったはず。
 ほんと、大和は僕のこと何で好きになってくれたんだろう?
 でも、ずっと好きでいてくれたんだ。
 なのに、僕はそんな大和を騙してしまった。
 結局、騙せてなかったけど、大和を傷つけたことには変わりない。
 僕は、胸がずきんと痛んだ。
 今日、ちゃんと謝らないと。
 許してくれなくてもいい。
 大和を好きな気持ちは嘘じゃなかったって伝えたい。
 僕には、それしかできないから。
 そう思ったら、いてもたってもいられなくて、すぐに出かけることにした。
 大和はまだ大学に来てないかもしれない。
 話すなら夕方だろうな。
 そう思っても、やっぱり落ち着かないから、家を出たんだ。


 大学に向かうと、大和が大学のキャンパスの入り口門に立っていた。
 遠くから見ていたら、大和は友達に声をかけられていた。けど、大和は穏やかに笑って断って、すぐに離れてた。
 大和は僕に気づくと、僕をまっすぐ見つめたまま目をそらさなかった。
 僕は、胸がドキッとする。

「お前の兄貴が俺のところに来たよ。店長と付き合ってるのは兄貴の方だって。詳しいことは直接本人から聞けって言われた」

 翼がそこまでしてくれたんだ。
 びっくりした。
 翼、ありがとね。
 僕は、大きく息を吸い込んだ。
 ーー今度は僕が勇気を出す番だ。

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