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6.厄災の魔女と一人の人間
妖精の覚悟
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クラリス達が地下牢に着いてみれば、中は酷いものだった。魔法によって強風が吹き荒れ、少しでも気を抜けば飛ばされてしまいそうだ。クラリスはリック達に入口前の壁に隠れるよう促した。そして手を叩いて自分とリック達に紫色の光を纏わせる。魔法に影響されない防御壁のようなものだ。しかし、地下牢の魔力はとてつもなく大きく、気休め程度にしかならなそうだ。
壁に身を隠しながら地下牢の様子を探る。そこでは同じ蒼色の光が激しくぶつかり合っていた。ウィルが刃のような光を何度も放ち、クレイスがそれを蒼色の光を纏った手で弾いている。その攻防によって地下牢に暴風が吹き荒れていた。あの二人の闘いにはとても入れそうになかった。
一瞬見えたクレイスは鎖から解放されていた。クラリスは冷や汗をかきながら舌打ちをした。
「あいつ、捕縛と魔力を封じる魔法が外れている…」
鎖はクレイスの魔力を封じる為のものだった。ウィルが度々訪れては魔法を掛け直していた。彼女の魔力は強大だ。息子のウィルでさえ、封じ切る事が出来なかった。
今はウィルが攻撃魔法を立て続けに放出しており有利に見えるが、いつ形勢逆転してしまうか分からない。ウィルは無計画に勢いで攻撃しているように見えた。いつ魔力が切れてしまってもおかしくない。
「おろろ…これは中に入っていけないよ…」
あまりの凄まじい魔力のぶつかり合いに、人型のオロロンが身体を震わせる。リックは圧倒されながらも冷静に辺りを見渡し、隅に築野が倒れているのを発見した。
「あ、築野専務…!」
築野が倒れている場所は丁度出入り口に近い場所だ。あの場所なら二人の死角になっており、運んでもバレない。クラリスは両手を擦り合わせてから開き、息を吹きかけた。するとクラリスの息が紫の光に変わり、倒れたままの築野の元へ向かう。紫の光は築野を包み込むと、そのまま身体を浮き上がらせゆっくりとこちらに向かって動き出す。途中で弾かれた刃の魔法が築野を襲いそうになったが、クラリスが防御壁を張り事無きを得た。
何とか築野を救い出す事に成功したクラリスは、築野を素早く壁の内側へ引き寄せる。そして何度か頬を叩いた。
「おい、坊ちゃん起きろ!」
容赦なく頬を叩くクラリスにリックとオロロンはおろおろしていたが、やがて築野の瞼が痙攣し、ゆっくりと目が開いた。
「う…柊は……無事か…?」
開口一番が部下の安否の確認だった。自分の事など二の次の築野に、クラリスは相変わらずだと微笑んだ。
「燈は…まだ見つかっていない。一体どこにいるのか―」
「燈は…あそこだ!」
話している途中で、リックがそう声を上げた。クラリスは彼の指が差す方向を見る。そこはいつもクレイスがいた檻の中だった。中は瓦礫が高く積み上がっている。その中腹辺りに、燈が横たわっていた。
この騒ぎの中だというのに、燈は目を閉じたまま起きそうにない。そしてこの激しい魔力をかいくぐって助けに行くのは至難の業だ。燈は丁度クレイスの真後ろで眠っているので、攻撃が運良く当たっていない。しかし、それもいつまで続くか分からない。どうしようかと思案していると、今まで黙っていたセイラが声を上げた。
「…! 燈、感情が抜かれているわ!」
「な…!」
クラリスもリック達も驚愕した。感情が抜かれる魔法はウィルが掛けられた禁忌のものだ。12年前、その魔法によって苦しめられたウィルを目の当たりにしているクラリス達にとっては衝撃の事実だ。見ただけでは感情を抜かれているかクラリスでも判断出来なかったが、セイラがこんな所で嘘を言うとは思えなかったし、クレイスの一部だった彼女だからこそ分かるのだろう。
ウィルの感情はクレイスが持っている。きっと、燈の心もそうなのだろう。
「クソ、燈の身体も心も取り返さないといけないのに、二人の魔力が激しすぎてあそこまで行けない…!」
状況はかなり最悪だ。思考をフル回転させて打開策を考えるが、一向に良い案が浮かばない。リックも一緒に考えていたが、同じように良い考えが浮かんでいないようだった。オロロンは少々パニックになっているので思考が止まってしまっている。築野も考えている素振りを見せていたが異世界の住人だ。良い案など浮かばないだろう。
こうなったら身を投げ出す覚悟で行かねばならない、とクラリスが名乗りでようとした時だった。目前にセイラがふわりと浮いてこちらを真剣な眼差しで見つめてきた。
「…私が燈の心を取り戻しにクレイスの元へ行くわ。私はクレイスの分身だから、簡単に彼女の身体に入り込む事が出来る」
「お前…!」
「燈の身体は…黒い翼の彼にお願いしようかしら」
「う、うん。分かった…」
自分の事だと気付いたオロロンは何度も頷いた。どんどん話を進めて、じゃあ行くわと言って行こうとするセイラを、クラリスは慌てて引き止めた。
「おい、待て妖精…! お前の少ない魔力でクレイスの中へ戻ったら、吸収されてしまうぞ!」
「いいのよ。私は、元はクレイスの一部だった。それが元に戻るだけ」
「それでも燈が悲しむ!! あ、あたしだって―」
セイラを探すという話しになった時、燈は彼女の身を案じていた。燈はセイラの事を大切に思っていた。そして何よりも、自分の知る姉の姿に瓜二つのセイラが遠くに行ってしまうと思ってしまうと胸が張り裂けそうだった。そんな思いが表情に出ていたのだろうか。クラリスの顔を見て、セイラは優しく微笑んだ。
「私はクレイスではないわ、悲しまないで。あなたは笑顔の似合う優しい子―ずっと笑っていて」
「―あ」
自然と涙が零れた。その言葉は、優しかった頃の姉がかけてくれたものと同じだったから。クラリスにもう一度微笑みかけると、セイラは意を決した表情で暴風吹き荒れる地下牢へと身を投じた。
「セイラ!!」
背後からクラリスの呼び止める声が聞こえたが、セイラは止まらなかった。セイラの身体はクラリスがかけてくれた魔法のお陰で強風にさらわれる事は無かった。魔法の刃を避けてクレイスの元へと飛ぶ。
ウィルの動きが先程よりも鈍くなっている。無理も無い。怒りのままに魔法を使っていたからだ。
「あら、疲れてきたのかしら? 私はこんなにも元気なのに」
「…うるさい!」
息を荒げながらウィルが叫ぶ。二人は視界の隅で飛ぶ小さな妖精は見えていないようだった。クレイスに見つかってはいけない。今はウィルに気が向いているからセイラの意識が自分から外れている事に気が付いていない。
「うふふ、そろそろ私も反撃させて貰おうかしら」
クレイスはそう言って指を鳴らすと、手の中で蒼い光が銃のような形に変化する。クレイスが引き金を引く動作をすると、その銃の形をした光から銃弾のようなものが放たれた。ウィルは自分の前に蒼い壁を作りそれを防御する。
「ふふふ、これは不思議な動きをするのよ。この弾丸は、私の意のままに動くの」
そう言いながらクレイスは手を上げて上に向かって三発撃った。その弾丸は天井へ穴を開けるのかと思いきや、突然軌道を変えてウィルに襲いかかる。
「!」
ウィルは防御壁を作りやりすごそうとしたが、反応が遅れて一発が右肩を掠めた。灰色のローブが裂け、そこから血がじわりと滲む。ウィルは左手で傷を押えながらクレイスを睨んだ。
「掠っただけか、残念」
クレイスはそう言って怪しく笑うと、また天に向かって銃を何発も撃つ。その弾丸は同じようにウィルに向かって飛んで行く。魔法を駆使しながら必死に避けるウィルを横目に、セイラは彼の無事を祈る。ウィルには命を狙われた事もあるのに、変な話しだ。彼は自分の事をクレイスの分身としてしか見ていなかったから、今でも憎んでいるのだろう。
好きか嫌いかと言われたら彼の事は嫌いだ。握りつぶされそうになった感触は今でも覚えている。それでも、燈が好きな人だから。彼女の好きな人には傷ついて欲しくない。
そして燈にもずっと笑っていてほしい。
クレイスはウィルに攻撃を当てるのに夢中で全くこちらに気付いていない。低空飛行をして、彼女の背後に回る。目に入ったのは、瓦礫の上で眠った燈の姿。彼女はセイラがクレイスの分身だと知っても友達だと言い続けてくれた人。視界が滲んで燈の姿がぼやける。彼女を助ける為に行かなくては、と奮い立たせセイラは燈に背を向けた。
そして目前にはクレイスの背中。彼女は白いワンピース越しでも痩せ細っているのがよく分かった。その背中に、そっと手を添える。その瞬間、セイラの存在に気が付いたクレイスは振り返る。
「…分身? あなた何やって―」
「ごめんね、燈―」
セイラはそう言うと、クレイスの中へ躊躇なく飛び込んだ。
壁に身を隠しながら地下牢の様子を探る。そこでは同じ蒼色の光が激しくぶつかり合っていた。ウィルが刃のような光を何度も放ち、クレイスがそれを蒼色の光を纏った手で弾いている。その攻防によって地下牢に暴風が吹き荒れていた。あの二人の闘いにはとても入れそうになかった。
一瞬見えたクレイスは鎖から解放されていた。クラリスは冷や汗をかきながら舌打ちをした。
「あいつ、捕縛と魔力を封じる魔法が外れている…」
鎖はクレイスの魔力を封じる為のものだった。ウィルが度々訪れては魔法を掛け直していた。彼女の魔力は強大だ。息子のウィルでさえ、封じ切る事が出来なかった。
今はウィルが攻撃魔法を立て続けに放出しており有利に見えるが、いつ形勢逆転してしまうか分からない。ウィルは無計画に勢いで攻撃しているように見えた。いつ魔力が切れてしまってもおかしくない。
「おろろ…これは中に入っていけないよ…」
あまりの凄まじい魔力のぶつかり合いに、人型のオロロンが身体を震わせる。リックは圧倒されながらも冷静に辺りを見渡し、隅に築野が倒れているのを発見した。
「あ、築野専務…!」
築野が倒れている場所は丁度出入り口に近い場所だ。あの場所なら二人の死角になっており、運んでもバレない。クラリスは両手を擦り合わせてから開き、息を吹きかけた。するとクラリスの息が紫の光に変わり、倒れたままの築野の元へ向かう。紫の光は築野を包み込むと、そのまま身体を浮き上がらせゆっくりとこちらに向かって動き出す。途中で弾かれた刃の魔法が築野を襲いそうになったが、クラリスが防御壁を張り事無きを得た。
何とか築野を救い出す事に成功したクラリスは、築野を素早く壁の内側へ引き寄せる。そして何度か頬を叩いた。
「おい、坊ちゃん起きろ!」
容赦なく頬を叩くクラリスにリックとオロロンはおろおろしていたが、やがて築野の瞼が痙攣し、ゆっくりと目が開いた。
「う…柊は……無事か…?」
開口一番が部下の安否の確認だった。自分の事など二の次の築野に、クラリスは相変わらずだと微笑んだ。
「燈は…まだ見つかっていない。一体どこにいるのか―」
「燈は…あそこだ!」
話している途中で、リックがそう声を上げた。クラリスは彼の指が差す方向を見る。そこはいつもクレイスがいた檻の中だった。中は瓦礫が高く積み上がっている。その中腹辺りに、燈が横たわっていた。
この騒ぎの中だというのに、燈は目を閉じたまま起きそうにない。そしてこの激しい魔力をかいくぐって助けに行くのは至難の業だ。燈は丁度クレイスの真後ろで眠っているので、攻撃が運良く当たっていない。しかし、それもいつまで続くか分からない。どうしようかと思案していると、今まで黙っていたセイラが声を上げた。
「…! 燈、感情が抜かれているわ!」
「な…!」
クラリスもリック達も驚愕した。感情が抜かれる魔法はウィルが掛けられた禁忌のものだ。12年前、その魔法によって苦しめられたウィルを目の当たりにしているクラリス達にとっては衝撃の事実だ。見ただけでは感情を抜かれているかクラリスでも判断出来なかったが、セイラがこんな所で嘘を言うとは思えなかったし、クレイスの一部だった彼女だからこそ分かるのだろう。
ウィルの感情はクレイスが持っている。きっと、燈の心もそうなのだろう。
「クソ、燈の身体も心も取り返さないといけないのに、二人の魔力が激しすぎてあそこまで行けない…!」
状況はかなり最悪だ。思考をフル回転させて打開策を考えるが、一向に良い案が浮かばない。リックも一緒に考えていたが、同じように良い考えが浮かんでいないようだった。オロロンは少々パニックになっているので思考が止まってしまっている。築野も考えている素振りを見せていたが異世界の住人だ。良い案など浮かばないだろう。
こうなったら身を投げ出す覚悟で行かねばならない、とクラリスが名乗りでようとした時だった。目前にセイラがふわりと浮いてこちらを真剣な眼差しで見つめてきた。
「…私が燈の心を取り戻しにクレイスの元へ行くわ。私はクレイスの分身だから、簡単に彼女の身体に入り込む事が出来る」
「お前…!」
「燈の身体は…黒い翼の彼にお願いしようかしら」
「う、うん。分かった…」
自分の事だと気付いたオロロンは何度も頷いた。どんどん話を進めて、じゃあ行くわと言って行こうとするセイラを、クラリスは慌てて引き止めた。
「おい、待て妖精…! お前の少ない魔力でクレイスの中へ戻ったら、吸収されてしまうぞ!」
「いいのよ。私は、元はクレイスの一部だった。それが元に戻るだけ」
「それでも燈が悲しむ!! あ、あたしだって―」
セイラを探すという話しになった時、燈は彼女の身を案じていた。燈はセイラの事を大切に思っていた。そして何よりも、自分の知る姉の姿に瓜二つのセイラが遠くに行ってしまうと思ってしまうと胸が張り裂けそうだった。そんな思いが表情に出ていたのだろうか。クラリスの顔を見て、セイラは優しく微笑んだ。
「私はクレイスではないわ、悲しまないで。あなたは笑顔の似合う優しい子―ずっと笑っていて」
「―あ」
自然と涙が零れた。その言葉は、優しかった頃の姉がかけてくれたものと同じだったから。クラリスにもう一度微笑みかけると、セイラは意を決した表情で暴風吹き荒れる地下牢へと身を投じた。
「セイラ!!」
背後からクラリスの呼び止める声が聞こえたが、セイラは止まらなかった。セイラの身体はクラリスがかけてくれた魔法のお陰で強風にさらわれる事は無かった。魔法の刃を避けてクレイスの元へと飛ぶ。
ウィルの動きが先程よりも鈍くなっている。無理も無い。怒りのままに魔法を使っていたからだ。
「あら、疲れてきたのかしら? 私はこんなにも元気なのに」
「…うるさい!」
息を荒げながらウィルが叫ぶ。二人は視界の隅で飛ぶ小さな妖精は見えていないようだった。クレイスに見つかってはいけない。今はウィルに気が向いているからセイラの意識が自分から外れている事に気が付いていない。
「うふふ、そろそろ私も反撃させて貰おうかしら」
クレイスはそう言って指を鳴らすと、手の中で蒼い光が銃のような形に変化する。クレイスが引き金を引く動作をすると、その銃の形をした光から銃弾のようなものが放たれた。ウィルは自分の前に蒼い壁を作りそれを防御する。
「ふふふ、これは不思議な動きをするのよ。この弾丸は、私の意のままに動くの」
そう言いながらクレイスは手を上げて上に向かって三発撃った。その弾丸は天井へ穴を開けるのかと思いきや、突然軌道を変えてウィルに襲いかかる。
「!」
ウィルは防御壁を作りやりすごそうとしたが、反応が遅れて一発が右肩を掠めた。灰色のローブが裂け、そこから血がじわりと滲む。ウィルは左手で傷を押えながらクレイスを睨んだ。
「掠っただけか、残念」
クレイスはそう言って怪しく笑うと、また天に向かって銃を何発も撃つ。その弾丸は同じようにウィルに向かって飛んで行く。魔法を駆使しながら必死に避けるウィルを横目に、セイラは彼の無事を祈る。ウィルには命を狙われた事もあるのに、変な話しだ。彼は自分の事をクレイスの分身としてしか見ていなかったから、今でも憎んでいるのだろう。
好きか嫌いかと言われたら彼の事は嫌いだ。握りつぶされそうになった感触は今でも覚えている。それでも、燈が好きな人だから。彼女の好きな人には傷ついて欲しくない。
そして燈にもずっと笑っていてほしい。
クレイスはウィルに攻撃を当てるのに夢中で全くこちらに気付いていない。低空飛行をして、彼女の背後に回る。目に入ったのは、瓦礫の上で眠った燈の姿。彼女はセイラがクレイスの分身だと知っても友達だと言い続けてくれた人。視界が滲んで燈の姿がぼやける。彼女を助ける為に行かなくては、と奮い立たせセイラは燈に背を向けた。
そして目前にはクレイスの背中。彼女は白いワンピース越しでも痩せ細っているのがよく分かった。その背中に、そっと手を添える。その瞬間、セイラの存在に気が付いたクレイスは振り返る。
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