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第二章
02-3.転生って、そんなにあるあるなんですか?(Side.アルフレッド)
しおりを挟む俺は前世を思い出した瞬間から今に至るまでの事を自白した。まぁ、自白というより説明に近い感じなのだけれど。
だって別に悪事を働いた訳ではないんだもの。今詰められている事自体不服なぐらい俺は潔白なんですよ。
だから俺は、まるで昔話をするようにディア叔父上に語った。
そして勿論、全部なんて語らない。マリアが聖女の力を解放した事は特に。
(あの事件はアカリが自滅した事になっているんだ。ここで真実を明かす訳にはいかない)
アカリが消滅したのは、実際本人のせいと言っても過言ではないのだけれど。取りあえず、そう処理したのだ。
それもこれも、聖女として既に力を解放してしまったマリアが、少しでも聖女候補として教会に連行される時間を伸ばすため。少しでもイベント発生を遅らせるだめだ。
(何の対策も出来ていないのに、連れて行かれる訳にはいかないんでね)
聖女となってしまえば、マリアは完全にランベール家から引き離されてしまうだろう。戻れる可能性は限りなく低い。それこそランベール家が王家から離れて、完全に教会側につかないと有り得ないほど。
ノエルとマリアの事を思えばどうしても避けたい。けれど聖女回避の良い策が浮かばない。
最悪聖女として認定されても、彼女が目指すノエルの騎士となれるようにするにはどうするべきか……俺はその解決策を探している。せめてそれを見つけるまでは時間を稼がないといけない。
あの時護衛に就いてた騎士たちは、魔物が多い辺境地に移動になっている。何か思い出したとしても、上に話が届く可能性は低いだろう。
懸念すべきは教会側だな。彼らの情報網は伊達じゃない。
まぁそれ以前に、あの時何が起きたのか、騎士たちは理解していないみたいだったけど。
職務怠慢に加え違命とか……救えない。
(でも、そこをこれ幸いにと狙って辻褄を合わせたんだから、今更違いましたには出来ないし、するつもりもない)
最悪な事に、チートな能力持ちの叔父上には、マリアが聖女だと既にバレてしまっている。本当に最悪。何でそんな能力持ってるの?
(どうにもならないので仕方ないけれど)
諦めってこの事なんだね! ってぐらいの諦念なのだけれど、希望がない訳じゃない。
聖女だと暴く事は出来ても、その力が覚醒した事まではまだ知られていない可能性が高い。願望でしかないけれど、死守するならそこだろう。
聖女認定式や今後のためにも、絶対知られる訳にはいかないし、今の状況も何とか穏便に終わらせたい。
(教会側にいいように使われるのも回避したいのと同時に、ジャンヌ・ダルクみたいに王家の犠牲になってしまう事も避けたいからね)
教会がブラック企業なのは把握済みだけど、王家がそうじゃないと良い切れないのもまた確かなのが痛い。
前世の世界で実在した、ただの農民の娘であった、オルレアンの乙女――ジャンヌ・ダルク
神の啓示を受けフランス軍に従軍し、オルレアンを始めフランス側の各領土を次々と奪還。そしてフランス王太子――シャルル七世を王位に就かせた後も戦場に立ち続けた少女だ。
けれど対立していたイングランド=ブルゴーニュ派の貴族――リニー伯ジャン二世 に生け捕りにされて、イングランドに売られ捕虜となってしまう。
シャルル七世が身代金を払えばジャンヌは解放されたものの、政治的思惑もあり、彼は少女を切り捨てた。見殺しにしたのだ。
味方に見捨てられたジャンヌは、イングランドで異端審問を受け、結果魔女として裁かれ火刑に処された。
勇敢で聡明だった、歴史に残る悲劇の乙女……マリアがジャンヌと同じ運命を辿らないという、確固たる自信が、俺にはない。
(ジャンヌの見殺しで有名なシャルル七世だけど、『勝利王』の名が付くように百年戦争を勝利で終結させた実績があるからなぁ。国と一人の人間の命、どちらを選択するかと問われたら、もう一択しかない)
酷いの一言で終わらせられない。最悪過ぎる。
けれど実際その選択を迫られる未来が来るかもしれないのだから、考えない訳にはいかない。
今の所、王家は聖女に寄り掛かる気は皆無だと宣言している。しかし、状況というのは変わるものだ。いつその意志が崩れるかわからない。教会と同じように、王家も自分たちの都合で言い分が変わってもおかしくないのだ。
つまり何を言いたいのかというと……シャルル七世のように、我が王家も聖女を頼るようになり、思惑や状況次第で見捨てるかもしれないという可能性を、どうにかさよならバイバイしなければならない、ということだ。
(だから、教会と王家双方との繋がりが強いランベール家の娘であるノエルの騎士として側に置ければ、それが一番なんですよ)
なので邪魔しないでもらいたい。切実に。
どっちも回避! なんて考えている俺は、王には向いていないのだろう。いや、王に向いていないのは庶民感覚が抜けない時点で明白なのだけど。
でも何もせずに諦めることはしたくない。何より皆を巻き込んでいる以上、俺が先に音を上げる事は出来ないし、したくない。
(初っ端ボスレベルの相手に当たったのは痛いけど)
目の前に居るのは、王弟。いくら彼が自由人といえど、『可愛い甥~!』なんて言っている俺を間者疑惑で尋問してくるくらいには、王に、国に尽くす人間だ。
どんな指令を受けているのか不明だが、王の意志次第で俺はここで死んでもおかしくないし、マリアもどうなるかわかったもんじゃない。
だからこそ、叔父上が今一番必要としている部分に集中して答えるよう注意している。身の潔白が最優先。
そんな俺に叔父上が返したのは――
『なーんじゃ、つまらんのぉ~』
――だった
いやつまらないって何だ、つまらないって。
平然としている様に見えているかもしれないけれど、これでも結構命がけなんですが。
(十分スリリングな状況を味わっているので、もうお腹いっぱいなんですよ)
そりゃ叔父上からすれば面白い情報は何一つとしてなかっただろうけれど。転生って早々ないし、決してつまらない事はないと思うんですけど、そこら辺どうなんでしょうね? 関係ないですか、そうか……
『転生あるあるパターンではないか』
そんな事を宣う口を塞ぎたい。
『そんなにあるあるなんですか? 転生ですよ?』
『あるあるじゃろ。お主の周囲にゴロゴロ居るではないか』
そんなゴロゴロ居てたまるか。
『そんなゴロゴロ居たらたまんないよ』
突如として聞こえた声に、俺の心臓が活動を止めそうになった。
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