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第二章
03-1.閑話・神の使者(Side.ディア・キリスティス)
しおりを挟む数々の世界を誕生させ、その存在を管理する神――創造神・ディミオルゴ
そんな世界の全てである彼には、彼自身が生んだ部下たちがいる。
例えば、下界の人々が救済や戒めの心から、目に見える形として生んだ神が存在する。ショウたちが生きていた世界でも、神と呼ばれる対象が存在していた。
そうして生んだ世界の神には、付き従う他の神が存在している。彼らは親であり上司である神に仕える事でその存在を確かなものにしていた。
つまり、想像でも空想でもない、世界の生みの親である神・ディミオルゴにも、そういう者たちがしっかり存在している、という事だ。
ディミオルゴに従う彼らは、その存在を知る者たちから【神の使者】と呼ばれている。
使者の数は、世界が存在する数分。つまり世界の一つ一つにディミオルゴの部下が身を置いている事となる。
勿論、一つの世界にずっと留まっている訳ではないし、その世界の神として存在する訳でもない。
彼らの仕事は、その世界の住人……一人の人間として転生し、世界が存在するに相応しいかどうかを見極めて、主である創造神に報告する事だ。
そんな彼らの任務年数は千年。つまり千年の寿命を持って世界に産まれ落ちる事となる。
神が生んだ存在である彼らも神であるため、世界から出て元の姿に戻れば寿命の概念は消失する。人間界でいえば“不老不死”という存在が近い。
だが、世界を見極めるために不老不死の概念は不要。そもそも寿命を持つ人間の世界で生きて行くのには、人間誰もが持つ死の概念は持っていなくてはならない。故に期限が設けられている。
そんな千年の時を生きる事となる神だが、実際彼らがそこまで長い年月を生き残るのはごく稀である。
寿命は千年と果てしないものの、肉体は通常の人間と何ら変わらない。つまり、病や怪我で呆気なく命を落すのだ。
任務の途中で命を落した死者は、一度ディミオルゴの下に戻り、途中までの調査結果を報告する。その後は、同じように途中退場となった使者と交代して相手の居た世界の調査に向かったり、滅んだ世界の替わりの如く新たに生まれた世界の調査に乗り出したりする。少数である寿命全う派も同じように世界を巡り、ディミオルゴの下に戻る事を繰り返している。
王国・グランディオーソの王子の叔父であり、現国王・リュシアンの弟としてこの世界に誕生した――ディア・キリスティス
彼もまた、創造神・ディミオルゴの部下で【神の使者】の内の一神であった。
創造神に生み出されたディアは、後に生まれた神々同様、生まれたその瞬間から己の使命を全うしていた。
他の使者たちと違うのは、彼はディミオルゴが初めて生んだ神であり、従者であり、また友人であるところだろう。
己の親であり圧倒的力を持つ上司に向かって、『ポコポコ生み落とすだけでのうて、たまにはお主も転生してみてはどうじゃ?
果てしない生の良い刺激になるじゃろ』と、ニコニコ笑顔で言える間柄である。
余談だが、ディアのその軽い提案に『じゃあ、そうしてみようかな』と本気にしてしまい、味を占めて度々人間として転生してしまう様になった原因として、他の使者に盛大に怒られる事になった。
閑話休題。
そんな高位に君臨するディアが、アルフレッドたちと同じ世界、同じ時代に転生して来たのは、今から二九年前のこと。王国・グランディオーソに、第二王子として転生を果たした。
使者たちは転生して世界に産まれ落ちた時から記憶があるため、自由に動けない期間をのんびりと過ごし、少しでも肉体が成長する事に努めるのだが、ディアも例に漏れずそうして赤子時代を過ごした。
赤子なのでおしめの交換は勿論、優しい乳母の母乳も飲んだりするのだが、そこは幾千も転生を繰り返している猛者。甘んじて受けるのがディアであった。尚、羞恥は始めからない。
そして時が経ち、魔力を自在に操れる肉体にまで成長した彼は、『それでは、出発進行じゃ!』と、まるで子どもが近所の雑木林に探検に向かう様な気軽さで王宮を飛び出したのだった。
母や乳母のブロックを掻い潜り、王宮の騎士たちの柵を躱し、跳ねる兎の様に国境を飛び越え、至るところで悲鳴を上げさせながら、使者としての任務を遂行してきた。
任務を開始したのは六つの時である。
そんな規格外の王子が生まれれば、やはり王位を巡る貴族間の争いが勃発するもの。歴代の兄弟持ちの王たちも、その苦悩の道を歩んで来た。
だがリュシアンとディアの王位争いは、ものの数秒でケリが付いた。
ディアが最初から王位継承権を放棄する意志を示していたというのはあるが、一番は前国王の言葉だった。
『あの暴れ馬を王なんぞにしてみろ。今以上に泣かされる事になるぞ?』
ただですら、当時既に王妃に従僕、騎士や侍女、メイドや憲兵までを振り回し、国内貴族だけでなく他国の上層部まで泣かせているのだ。これ以上被害を出す訳にはいかなかった。
それだけ聞けば王としての力はあるし、実際相応しい力は備わっている。だが王に必要なのは後方で情勢を把握し指揮をとる……つまり統率力であり、決して単身で乗り込み暴れ回る狂戦士の質ではない。
力を持っていても、本人に力を使う意志がなければ意味が無いのである。
そんな神の使者としての使命と、周囲を泣かせはしても今世の責務を器用に熟しているディアは、楽しい事が大好きだ。特に人を突っつき回して、相手の反応を見るのが楽しくて仕方ないという、付き合うには問題しかない楽しみを持っていた。
『生まれる命に性格までは定める事が出来ないのは難点だよねぇ。神秘的と言えば聞こえは良いんだけど』というのは、ディアに泣かされた神々の訴えに返したディミオルゴの言葉である。
その非常にはた迷惑は遊びを好んでいる彼は今、今世の甥を捕まえて楽しんでいた。
※教習の二段階効果測定の勉強のため更新遅くなります。
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