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38 (注意:大人のロマンスが少しだけ入りますがコメディです)

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 突然の事で理解が追いつかない! 疲労している上に、勉強してこなかった分野だし、頭に血が上って何も考えられない!

 エミリア嬢は何て言っていた? 確か、後は殿下に任せれば仲直りは完了すると...

 は!? そういうこと!? 深い男女の中になれば自然と仲直り出来る的な? しかし、一体、あの会話のどこに殿下のヤル気を引き出すスイッチが???

 全然、分からないけど、今、身を委ねてもいいのだろうか? 結婚式の前に純潔が失われても? 結婚する相手とだからいい...? むしろ、既成事実があった方が、気持ちを引き止められるし、子供が出来ちゃったら世継ぎが生まれて、正妃の座は揺るぎないものに...

 なら、いいか?

「クリスチナ...これは、どうやって脱がせばいいんだ?」

 ヴィルヘルムはドレスの飾りのリボンを懸命に解こうとしていた。だが、飾りのリボンはしっかりと縫い付けられているので解けない。

「着脱のボタンは、背中側にあると思われますが、正確には分かりません」

「分からない?」

「いつも侍女が着替えを手伝ってくれますので、ワタクシは自分でドレスを脱ぎ着した事がありません」

「自分で服も着替えられないとは...」

「申し訳ありません。殿下はご自身でお召し物を着られるのですか?」

「もちろんだ! 服は執事が選ぶが、着替えは自分でする」

「殿下にそんな特技があったとは存じ上げませんでした! 素晴らしいですね」

「そうだろう!」

 ヴィルヘルムは機嫌を良くして踏ん反り返った。

「では後ろを向け! 私が脱がしてやる」

「はい...」

 ワタクシは自分で着替えが出来ないが、多くの令嬢がそうである。そして、舞踏会で、一晩限りの恋を楽しむ者は、本当は服を脱がずにするらしいと聞いたが?

 つまり、殿下はおそらく童貞だ。

 それは嬉しいのだが、大丈夫かな? 急に不安になって来た。乱暴にされたらどうしよう?

 ヴィルヘルムはクリスチナをうつ伏せに転がして、ドレスの背面のボタンを外していく。

 熱を持ったヴィルヘルムの指が背中を触る度に、クリスチナの心臓は鼓動を加速させる。

 ヴィルヘルムはボタンを全部外し終えると、クリスチナの体を起こし、両手を万歳させ、スカート部分をまくり上げてドレスを引き抜こうとした。

 しかし、パニエ(スカートにボリュームを出す下着)も一緒に掴んでいたので、ウエストで固定されているパニエが動かず、ドレスを脱がすことが出来ない。

 ヴィルヘルムの試みは、ただのスカートめくりになっているのだが、クリスチナのドロワーズとタイツを履いた下半身を見たヴィルヘルムは頭に血が上って、冷静ではなかった。

「どうなっているんだ!? 取れないぞ?」

 無理矢理引っ張っるので、薄い生地で出来ているパニエがビッ! と破れたような音を立てた。

 ヴィルヘルムはそっとスカートから手を離す。

「すまん。なんか変な音がした」

「いえ、見えない部分ですし、大丈夫だと思います。殿下、おそらく、ドレスと下着は同時には脱げないと思われます」

「ドレスと下着? あぁ、これとこれは別の服か...わ、分かっているなら早く言えよ!」

「ワタクシもよく分かっておらず、申し訳ありません」

 いつも何でも出来て澄ましかえっているクリスチナが、しどろもどろでオタオタしているのを見て、ヴィルヘルムは親近感を覚えた。

「では、まずは上の服からだな!」

 再び、クリスチナを万歳させて、上のドレスだけ脱がした。

 ヴィルヘルムは楽しい気分になっていた。

 赤ちゃんのように無抵抗のクリスチナ。手伝ってあげないと服も脱げないクリスチナ。そんなクリスチナが可愛く感じる。

 しかし、ドレスを脱がせた後に、コルセットとパニエが繋がっている一体型の下着が現れると、再び気持ちはへこんだ。

「ドレスの下から、またドレスが現れたんだが...これはどうやって脱がせばいいんだ?」

「侍女達は背中の編み上げを緩めてから、前側のホックを外していました」

「カチカチの生地で鎧みたいだな」

 ヴィルヘルムはコルセットの紐の蝶結びを解いたが、解いただけでは紐は緩んだりしなかった。そこで、一本一本紐を穴がら引き抜いていく。

「殿下? 少し緩めたら前のホックで外せるのですが、もしかして、紐を引き抜いたりしています?」

「あぁ、だって紐を引き抜かないと緩められないんだ」

 ヴィルヘルムも編み上げになっている靴などを持っているが、自分で紐を調整した事がなかった。靴紐はいつも執事が結んでくれるのだ。編み上げの正しい緩め方が分からない。

 クリスチナはさらに不安になっていた。

 またドレスを着直して帰れるかしら?

「全部、紐が取れたぞ!」
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