【完結】そんなプロポーズでは結婚出来ません![乙女ゲーム転性の続編]

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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20. 婚約破棄をされた女

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ドリス
「ワタクシは鼻を叩いたり、血糖値が上がるような甘いお菓子を差し入れしてはおりませんし、鼻血は勝手に出されたのでは? ですが、一体どんなことを考えたら鼻血がでるというのです? 教えて下さる?」

 問いかけられた女性は答える事が出来ず、後ずさった。

ドリス
「それに転ばれた方は、別の女性のスカートに足を取られていたようですし、男性が突き飛ばしていらっしゃったケースもありましたわね。その方達が加害者だと思いますけど、意義があるならば裁判して下さってかまいませんわよ」

 裁判と聞いて女性達はビクッと体を震わす。ドリスの祖父、シルバー公爵は今まで数多くの裁判を起こしてきたが1度も負けなしである。裁判に負けた相手の末路は無残なものだ。

ドリス
「アナタのフィアンセがどなたか存じ上げませんが、ワタクシを好きだと仰ったことの真意はワタクシには分かりません。フィアンセなのですから、きちんとお二人で話し合われては? もしかしたら、相手は別にいるかもしれませんわ。ひょっとすると、男色家(ゲイ)でカモフラージュ(偽装)なのかも!」

「そ、そんな事ないわ! ちゃんと女性が好きだもの!」

ドリス
「どうして、そう思われるの? もしかして、女好きの浮気症ですの?」

「そ、それは...ワタクシのフィアンセを馬鹿にしないで! 彼は立派な方なのよ!」

ドリス
「そんなに立派な方だったら、どうしてアナタからワタクシに乗り換えたいだなんて、言ったのかしら? アナタに何か問題でも?」

「問題なんかある訳ないでしょ!」

ドリス
「でしたら、やっぱり、アナタのフィアンセの方に問題があるのですわ! そんなクズ男なんか、アナタの方から捨てておやりなさい!」

「そ、そ、そんな! でも...優しいところだってあるのよ!」

 令嬢は涙ながらに訴える。

ドリス
「それこそが、詐欺師やダメンズ(駄目な男)の手口なのです! 誰にでも言えるお手軽な愛の言葉で近付き、誰にでも出来る簡単な優しさで信用させ、アナタの名誉(貞操)や財産をむしり取る極悪非道の手口! 思い出してみて! 彼がアナタにして下さった事は何?」

「え、えっと...バラの花をプレゼントしてくれたわ」

ドリス
「バラの花はアナタが世界で一番アナタが好きな花なの? ちゃんと好みは聞いてくれた?」

「好みは聞かれなかったけど、そうよ! 一番好きな花なの!」

ドリス
「品種は?」

「品種!? そんなの知らないわ」

ドリス
「どうして? 世界で一番好きなのでしょう? バラは品種によって、色も形も大きさも異なれば、持っている歴史や意味合いも異なるわ。ニコ...ワタクシの幼馴染のニコラス・ホワイト次期伯爵だったら、取り寄せられる品種を全部調べて、ワタクシに一番適切なバラをプレゼントしてくれます。まぁ、ワタクシの1番好きな花はバラじゃないから、ジャムの材料を有難うって言って、目の前で花をむしってやったけど。アナタのフィアンセはニコ位の事はしてくれたの?」

「凄い」

「ニコラス様、可哀想...」

 ドリスは自分で言って溜息が出た。

 確かにニコは凄い。他の男が霞むほど。

「ワ、ワタクシは...花は詳しくないの! 花の中ではバラが1番好きってだけですもの」

ドリス
「えぇ!? 花が好きなわけではないのですか!? でしたら、どうして好きでもない物をプレゼントされて満足していらっしゃるの!? ワタクシの欲しい物を聞かずに、無駄金を使っているんじゃない! って突き返してやらなかったの!? そんな事を許していたら、結婚してからも、見当違いの買い物で、どんどんお金を無駄遣いするわよ? それとも、アナタのフィアンセは億万長者なの!? ニコのように子供の頃から稼ぐ能力に長けていらっしゃるの?」

「ニコラス様、子供の頃から稼いでいらっしゃったの!?」

「天才!?」

 そうなのよ。ニコは天才で特別。ワタクシだけが特別だと思っているわけじゃない。

「お、お金なんて無くたって愛があれば...」

ドリス
「あら? アナタ...子供は欲しくないの?」

「欲しいに決まっていますわ!」

ドリス
「子供に貧しい思いをさせても平気なのですか? アナタが贅沢を我慢すればすむとか、そういう問題ではないのですわ。子供の教育にはお金がいるし、子供の安全には外敵よりも強い護衛を雇うお金が必要です。子供が人脈を作る時にも、トラブルが起きて裁判で争う時にも、病気をして治療する時にも、お金が必要! 子供の結婚相手を探すときだって、貧乏人の子供よりも、お金持ちの子供が選ばれる! 動物だって、巣作りや獲物を上手にとる雄が番(つがい)に選ばれるのに、どうしてアナタは餌をとって来られない雄を選ぶの? しかも、アナタ以外の雌にまでちょっかい出して、ハーレムを希望するような性根の卑しい雄を!」

 そうなのよね。ニコはどんな雄よりも優秀だわ。どうして、ニコを選ばないで他の男を選ぶことが出来るのかしら?

「うぅ...」

「もう、その位にしてあげて!」

「本当はこの子も分かっているのよ。でも、魔女に魔法をかけられているかもしれないだなんて、ファンタジーな事を考える位、追い詰められていたの!」

「...皆、酷い! 彼はワタクシを愛してくれてるの! 魔女の魔法にかかってるから、今は一時的に貴女を好きだと言っているだけよ!」

ドリス
「そう...分かったわ。その男の魔法を解いてあげる。真実の姿に戻してあげるわ!」
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