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21. 婚約破棄をした男
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ドリスは令嬢達を引き連れて大広間へと戻った。例のフィアンセの男を取り囲む。
「な、何でしょうか?」
ドリス
「アナタ、ワタクシを好きなのですって?」
「は、はい!」
男が答えると、フィアンセの令嬢はさめざめと泣き出す。
ドリス
「それは、どういう好きなのかしら? 女優のファンのようなもの? それとも、友情や憧れのようなもの? はたまた、恋人になってゆくゆくは結婚したいとか、そういった事ですの?」
「え、えぇっと...」
男は思考を巡らせた。
クソ女め! 先日、婚約破棄を言い渡した復讐か!? よりによってドリス嬢に泣きつくとは! だが、かえって幸運だ。普段は公爵家の護衛や他の男達に阻(はば)まれて近付くことも出来ないが、これでドリス嬢に告白出来る!
「そうです! 私はドリス嬢を愛しております! 誰よりも! そのため、先日、フィアンセだった女性とは婚約破棄をし、別れました。私には貴女だけです! どうか、私と恋人になって下さい!」
ドリス
「ワタクシはシルバー家の女です。何よりも貞淑である事を美徳としております。ですから、将来、結婚する意思がある方としか付き合いたくないのです」
「ドリス嬢と結婚したいです!」
ドリス
「まぁ! ご冗談を!」
「私は本気です! 私と結婚して下さい!」
ドリス
「いいえ、本気でしたら、そんな冗談みたいに、お手軽なプロポーズはなさらないわ」
「そ、そんなことはありません! い、今は突然の事で、上手い言葉が出てきませんでしたが、また、後日、正式にプロポーズさせて頂きます!」
ドリスは14歳とは思えない妖艶な笑みを浮かべた。
ドリス
「まぁ! 本当? 嬉しいですわ」
男は有頂天になり、ドリスに近付く。
ドリス
「でも、後日では遅いかも? 今日はニコラス・ホワイト次期伯爵様がプロポーズして下さる予定ですの。明日には婚約が決まっているかもしれませんわ?」
男は慌てて跪(ひざまず)き、騎士が主君に忠誠を誓う姿勢をとった。
「ドリス嬢! 私は貴女の愛を失いたくありません! 今すぐにプロポーズさせて頂きます! 貴女に永遠の愛を誓います! どうか私と結婚して下さい!」
男がそう言うと、フィアンセだった令嬢は泣き崩れた。
「嘘吐き! 魔法を解いてくれるって言ったのに! この悪魔!」
ドリス
「大丈夫よ? 彼は魔法になんてかかっていませんわ。すぐに真実が分かります。少し黙っていて下さい」
「そうだ! 私は魔法になんかかかっていない! 心からドリス嬢を愛しているんだ!」
ドリス
「有難うございます。でしたら、ワタクシの事を誰よりも幸せにして下さいませ」
「もちろんです!」
すると、人混みをかき分けブレイデン・B・ホワイト子爵(ニコラス父)とアンジェリカ・ホワイト伯爵(ニコラス母)が現れる。
アンジェリカ
「ドリちゃん酷い! ニコを捨てるつもりなの!? あんなに尽くしたのに!」
ドリス
「ちょ、ちょっと、伯爵様、落ち着いて! ワタクシは、ワタクシを誰よりも幸せにして下さるならばと言っているのです」
アンジェリカ
「ん? どういうこと?」
ドリス
「今は黙って聞いていて下さいませ」
ドリスは男の方に向き直る。
ドリス
「アナタはニコラス様よりもワタクシを幸せにして下さるのですわよね?」
「その通りです!」
ドリス
「でしたら、今まで、ニコラス様がして下さった事よりも、上の事をして下さいませ!」
アンジェリカ
「なるほど! そういう事か!」
男は訝(いぶか)しげな顔をした。
「と、言いますと?」
ドリス
「うぅ~んと...ニコラス様が下さったプレゼントの中で最も高価なプレゼントは何だったかしら...」
ブレイデン
「ニコラスがドリス様に贈った最も高価なプレゼントは爬虫類動物園です。動物園にはレストラン、写真館、グッズショップ、軽食売店なども併設されており、土地と総工費用で3億5千万イェニ(10億5千万円位)。それとは別に、飼育費や人件費など年間経費が1億2千万イェニ(3億6千万円)かかります。人件費の中には園長であるドリス様への給与も含まれている。それらの初期費用をニコラスがギルドアカデミーに借金して創設致しました。負債(借金)は毎月上がる収益の中から返済しております」
アンジェリカ
「順調に収益が上がっていますので、3年以内には、初期費用が完済出来る予定でっす! そうなったら、その後の利益はまるまるドリちゃんのものなのです! どうだ! 勝てないだろう!」
ドリス
「伯爵様、有難うございます。ですが、本当に今はお静かにお願い致します」
アンジェリカ
「はーい...」
アンジェリカ伯爵はしょんぼりして引き下がった。
ドリス
「ですので、5億イェニ位のプレゼントを下さるかしら?」
男は苦笑いで答える。
「その金額をすぐには...」
ドリス
「大丈夫ですわ。シルバー家が借金として貸付けましょう」
ドリスはシルバー公爵に視線をおくる。
ドリス
「お祖父様! 5億イェニの貸付証書を!」
シルバー公爵
「もちろんだとも! 利率はいかほどにしようか?」
ドリス
「相場で宜しいのではないかしら?」
シルバー公爵
「かなり優遇して10年以内の返済で年率3%にしてあげよう」
ピーター(ドリス父)
「初年度の返済は元金の1割である5,000万イェニと年利1,500万イェニ、あわせて6,500万イェニ(1億9千5百万円位)でございます。 収益はそれ以上あげないといけませんから、結構なビッグビジネスになるかと存じます」
「そんな決断、今すぐには出来ませんよ!」
ドリス
「ニコラス様はすぐに決断しましたわよ? あの時は、生きた爬虫類のプレゼントがいっぱい届いていたので、すぐに仮設動物園を作って、本格的な工事に入ったの。お陰で動物が死ななくて済んだわ」
「お金で愛の強さをはかるのですか!?」
ドリス
「愛にはお金が必要ですもの。愛以前に生命維持にも、ワタクシのこの美しさを維持することにもお金が必要ですのよ? それ以外でどうやって、ワタクシを幸せに出来ると証明するのですか?」
「よ、世の中にはお金よりももっと大切な物があるのです! 私は命をかけて貴女をお守りします!」
ドリス
「命をかけて? では、貴方も猛獣を捕まえて来て下さるの? ニコラス様はコモドドラゴンを捕まえて来て下さったわ」
男は目を瞬(しばた)かせた。
「コモドドラゴン?」
「な、何でしょうか?」
ドリス
「アナタ、ワタクシを好きなのですって?」
「は、はい!」
男が答えると、フィアンセの令嬢はさめざめと泣き出す。
ドリス
「それは、どういう好きなのかしら? 女優のファンのようなもの? それとも、友情や憧れのようなもの? はたまた、恋人になってゆくゆくは結婚したいとか、そういった事ですの?」
「え、えぇっと...」
男は思考を巡らせた。
クソ女め! 先日、婚約破棄を言い渡した復讐か!? よりによってドリス嬢に泣きつくとは! だが、かえって幸運だ。普段は公爵家の護衛や他の男達に阻(はば)まれて近付くことも出来ないが、これでドリス嬢に告白出来る!
「そうです! 私はドリス嬢を愛しております! 誰よりも! そのため、先日、フィアンセだった女性とは婚約破棄をし、別れました。私には貴女だけです! どうか、私と恋人になって下さい!」
ドリス
「ワタクシはシルバー家の女です。何よりも貞淑である事を美徳としております。ですから、将来、結婚する意思がある方としか付き合いたくないのです」
「ドリス嬢と結婚したいです!」
ドリス
「まぁ! ご冗談を!」
「私は本気です! 私と結婚して下さい!」
ドリス
「いいえ、本気でしたら、そんな冗談みたいに、お手軽なプロポーズはなさらないわ」
「そ、そんなことはありません! い、今は突然の事で、上手い言葉が出てきませんでしたが、また、後日、正式にプロポーズさせて頂きます!」
ドリスは14歳とは思えない妖艶な笑みを浮かべた。
ドリス
「まぁ! 本当? 嬉しいですわ」
男は有頂天になり、ドリスに近付く。
ドリス
「でも、後日では遅いかも? 今日はニコラス・ホワイト次期伯爵様がプロポーズして下さる予定ですの。明日には婚約が決まっているかもしれませんわ?」
男は慌てて跪(ひざまず)き、騎士が主君に忠誠を誓う姿勢をとった。
「ドリス嬢! 私は貴女の愛を失いたくありません! 今すぐにプロポーズさせて頂きます! 貴女に永遠の愛を誓います! どうか私と結婚して下さい!」
男がそう言うと、フィアンセだった令嬢は泣き崩れた。
「嘘吐き! 魔法を解いてくれるって言ったのに! この悪魔!」
ドリス
「大丈夫よ? 彼は魔法になんてかかっていませんわ。すぐに真実が分かります。少し黙っていて下さい」
「そうだ! 私は魔法になんかかかっていない! 心からドリス嬢を愛しているんだ!」
ドリス
「有難うございます。でしたら、ワタクシの事を誰よりも幸せにして下さいませ」
「もちろんです!」
すると、人混みをかき分けブレイデン・B・ホワイト子爵(ニコラス父)とアンジェリカ・ホワイト伯爵(ニコラス母)が現れる。
アンジェリカ
「ドリちゃん酷い! ニコを捨てるつもりなの!? あんなに尽くしたのに!」
ドリス
「ちょ、ちょっと、伯爵様、落ち着いて! ワタクシは、ワタクシを誰よりも幸せにして下さるならばと言っているのです」
アンジェリカ
「ん? どういうこと?」
ドリス
「今は黙って聞いていて下さいませ」
ドリスは男の方に向き直る。
ドリス
「アナタはニコラス様よりもワタクシを幸せにして下さるのですわよね?」
「その通りです!」
ドリス
「でしたら、今まで、ニコラス様がして下さった事よりも、上の事をして下さいませ!」
アンジェリカ
「なるほど! そういう事か!」
男は訝(いぶか)しげな顔をした。
「と、言いますと?」
ドリス
「うぅ~んと...ニコラス様が下さったプレゼントの中で最も高価なプレゼントは何だったかしら...」
ブレイデン
「ニコラスがドリス様に贈った最も高価なプレゼントは爬虫類動物園です。動物園にはレストラン、写真館、グッズショップ、軽食売店なども併設されており、土地と総工費用で3億5千万イェニ(10億5千万円位)。それとは別に、飼育費や人件費など年間経費が1億2千万イェニ(3億6千万円)かかります。人件費の中には園長であるドリス様への給与も含まれている。それらの初期費用をニコラスがギルドアカデミーに借金して創設致しました。負債(借金)は毎月上がる収益の中から返済しております」
アンジェリカ
「順調に収益が上がっていますので、3年以内には、初期費用が完済出来る予定でっす! そうなったら、その後の利益はまるまるドリちゃんのものなのです! どうだ! 勝てないだろう!」
ドリス
「伯爵様、有難うございます。ですが、本当に今はお静かにお願い致します」
アンジェリカ
「はーい...」
アンジェリカ伯爵はしょんぼりして引き下がった。
ドリス
「ですので、5億イェニ位のプレゼントを下さるかしら?」
男は苦笑いで答える。
「その金額をすぐには...」
ドリス
「大丈夫ですわ。シルバー家が借金として貸付けましょう」
ドリスはシルバー公爵に視線をおくる。
ドリス
「お祖父様! 5億イェニの貸付証書を!」
シルバー公爵
「もちろんだとも! 利率はいかほどにしようか?」
ドリス
「相場で宜しいのではないかしら?」
シルバー公爵
「かなり優遇して10年以内の返済で年率3%にしてあげよう」
ピーター(ドリス父)
「初年度の返済は元金の1割である5,000万イェニと年利1,500万イェニ、あわせて6,500万イェニ(1億9千5百万円位)でございます。 収益はそれ以上あげないといけませんから、結構なビッグビジネスになるかと存じます」
「そんな決断、今すぐには出来ませんよ!」
ドリス
「ニコラス様はすぐに決断しましたわよ? あの時は、生きた爬虫類のプレゼントがいっぱい届いていたので、すぐに仮設動物園を作って、本格的な工事に入ったの。お陰で動物が死ななくて済んだわ」
「お金で愛の強さをはかるのですか!?」
ドリス
「愛にはお金が必要ですもの。愛以前に生命維持にも、ワタクシのこの美しさを維持することにもお金が必要ですのよ? それ以外でどうやって、ワタクシを幸せに出来ると証明するのですか?」
「よ、世の中にはお金よりももっと大切な物があるのです! 私は命をかけて貴女をお守りします!」
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