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キルヴァン
アッシュの怒りはおさまらない。
それもそのはず、弟のための薬草と、廉へ渡すお金を盗まれかけたのだから。
「何者なんだ」
アッシュは再び問うと、男は小さな声で話し始めた。
「その先の村に住んでるキルヴァンだ。旅人じゃない。ただの料理人だ」
男は素直にそう答えると、二人は驚き顔を見合わせた。
「料理人…」
「そうだ。今、俺の住んでいる町である病が流行していてな…。妹も、その病に感染した。そしてその病を治すためには、お前たちが持っている薬草が必要だった」
「…っ!」
アッシュは、取り返したカバンをギュッと抱きしめる。
「全部もらうつもりはなかった。一人分の薬草と金さえ手に入ればそれで良かった…残りの分は、その辺に放っておくつもりだったんだ」
キルヴァンはそう言うと、深々と頭を下げ、この通りだ、と弱々しく言う。
「病が流行りだして、人々は外出を拒み俺の店にも人が来なくなった。稼ぎもなくて…。すまん、どうかしていた。悪かった…」
「…頭を上げてください」
アッシュは頭を下げ続けるキルヴァンに優しく言った。
そしてキルヴァンがほっとした表情で、顔を上げたその瞬間だった。
ドゴッ…
「え!?アッシュさん!?」
アッシュは思いっきりキルヴァンの顔を殴ると、胸ぐらを掴み睨みつけた。
「すまんで済むならこの世界に秩序管理局は不要だ」
秩序管理局…警察のことだろうか?廉はそう思いつつ、アッシュを怒らせてはならないと心に誓った。
そんなことがあり、アッシュは自分の弟とキルヴァンの妹が同じ村に住んでいることを知り、ついでの道案内を頼むことにした。
アッシュは、自分は歩きますから、と廉とキルヴァンを馬に乗せた。
「一発殴ったので、気が済みました。兄弟を想う気持ちは同じです。そういえば少し水が足りないので、村に着いたら水を分けていただけますか?こちらの薬草も少しお分けしますので」
「本当か…!?ありがとう…本当にありがとう!水もいくらでも持って行ってくれ」
「ただ、この薬草だけではおそらく効き目が弱い。こちらの彼は薬草を調合できますので、流行病に合う薬草を後で探し、そして後日またこちらへ届ける形になるかと思います。大丈夫ですね?」
「もちろんだ。だが、薬の代金を払えるほどの金が今はないんだ…」
「稼ぎが戻った後で良いですから、返しに来てください。ちなみに貴方の料理屋、私も知っています。とてもおいしいお店だったと記憶していますよ。そしてその上の階が、貴方の居住地でしょう」
お金、頼みましたよ。
脅しともとれる言葉を投げかけられ、キルヴァンは引きつった笑顔で「はい」と答えた。
それもそのはず、弟のための薬草と、廉へ渡すお金を盗まれかけたのだから。
「何者なんだ」
アッシュは再び問うと、男は小さな声で話し始めた。
「その先の村に住んでるキルヴァンだ。旅人じゃない。ただの料理人だ」
男は素直にそう答えると、二人は驚き顔を見合わせた。
「料理人…」
「そうだ。今、俺の住んでいる町である病が流行していてな…。妹も、その病に感染した。そしてその病を治すためには、お前たちが持っている薬草が必要だった」
「…っ!」
アッシュは、取り返したカバンをギュッと抱きしめる。
「全部もらうつもりはなかった。一人分の薬草と金さえ手に入ればそれで良かった…残りの分は、その辺に放っておくつもりだったんだ」
キルヴァンはそう言うと、深々と頭を下げ、この通りだ、と弱々しく言う。
「病が流行りだして、人々は外出を拒み俺の店にも人が来なくなった。稼ぎもなくて…。すまん、どうかしていた。悪かった…」
「…頭を上げてください」
アッシュは頭を下げ続けるキルヴァンに優しく言った。
そしてキルヴァンがほっとした表情で、顔を上げたその瞬間だった。
ドゴッ…
「え!?アッシュさん!?」
アッシュは思いっきりキルヴァンの顔を殴ると、胸ぐらを掴み睨みつけた。
「すまんで済むならこの世界に秩序管理局は不要だ」
秩序管理局…警察のことだろうか?廉はそう思いつつ、アッシュを怒らせてはならないと心に誓った。
そんなことがあり、アッシュは自分の弟とキルヴァンの妹が同じ村に住んでいることを知り、ついでの道案内を頼むことにした。
アッシュは、自分は歩きますから、と廉とキルヴァンを馬に乗せた。
「一発殴ったので、気が済みました。兄弟を想う気持ちは同じです。そういえば少し水が足りないので、村に着いたら水を分けていただけますか?こちらの薬草も少しお分けしますので」
「本当か…!?ありがとう…本当にありがとう!水もいくらでも持って行ってくれ」
「ただ、この薬草だけではおそらく効き目が弱い。こちらの彼は薬草を調合できますので、流行病に合う薬草を後で探し、そして後日またこちらへ届ける形になるかと思います。大丈夫ですね?」
「もちろんだ。だが、薬の代金を払えるほどの金が今はないんだ…」
「稼ぎが戻った後で良いですから、返しに来てください。ちなみに貴方の料理屋、私も知っています。とてもおいしいお店だったと記憶していますよ。そしてその上の階が、貴方の居住地でしょう」
お金、頼みましたよ。
脅しともとれる言葉を投げかけられ、キルヴァンは引きつった笑顔で「はい」と答えた。
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