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何かを想う気持ち
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「スキルが発動する時には、身体のどこかに紋章が浮かび上がる傾向があるのですが、廉さんは浮かびますか?」
「それなら…手首に出てますね」
そう言うと、廉は手首をアッシュの方へ向けた。
すると廉の手首には薄い緑色の紋章が広がり、小さく光った。
「それって、薬の調合をイメージするだけで紋章が浮かぶのですか?」
「そうですね。今から調合するぞーって考えると、ここが光ります」
キルヴァンはその紋章を初めて見たようで、おぉ、と感心する。
「緑の紋章、初めて見た・・・草に関わってるから緑色なのか。しかも紋章も、なんか森って感じだ」
「もしかして、紋章ってそれぞれ違うんですか?」
廉がそう言うと、キルヴァンは首元に紋章を浮かばせた。
「俺のスキルの透視は、白く光る。紋章は目の形だ。ちなみに…」
ぽふんっ
キルヴァンは狐に変化すると、額に光る紋章を見せた。
「狐に変化してる時は、額が黄色く光って狐の尻尾の紋章が浮かぶんだぜ」
「貴方、狐の姿でも人の言葉を話せるのですね」
アッシュは感心したように言うと、キルヴァンは「まぁな」と言いながら再び人の姿へと戻った。
「アッシュさんは、どんな風になるんですか?」
「私もいくつかスキルは持っているのですが…よく使うのはこれでしょうか」
そう言うと、アッシュの手の甲に、蜘蛛の巣のような繊細な紋章が薄紫色に浮かび上がった。
「これは、防御スキルです」
光の揺らめきとともに、透明なドームが三人の周りに広がる。
「おぉ…!」
「この中にいれば、大抵の攻撃からは守ることができます。今はドーム状ですが、盾のような形にしたりなど、変化させたりもできますよ」
「すごい…アッシュさんらしいスキルって感じですね」
「ありがとうございます」
「さて、一旦調合に必要な器具を準備しましたが…」
廉たちが座るテーブルに置かれた器具の数々。
キルヴァンは物珍しそうにそれらを眺め、すごい、と感心した様子だった。
「まずは普通に薬を作ってみましょうか」
廉はそう言うと、薬を作り出す。
手首の紋章は調合の間も光り続けたが、それ以外にスキルが発現している様子はなかった。
「調合のスキルしか出てないっぽいぞ」
「うーん…治したいとは思ってるんですけど…」
「今は誰を治したいと思って調合したのですか?」
「村の人たち…ですかね」
その時、キルヴァンはふと思い出したように口を開いた。
「そういや俺は狐に変化する時、昔はかなり精密に狐の姿をイメージしないと変化できなかったんだ。今はもう慣れてそんな必要もなくなったが」
「へぇ、そうなのですか。結構繊細なスキルなのですね」
「で、ちょっと思ったんだけどよ。”村の人”って範囲が広すぎるっつうか、曖昧なイメージになっちゃってるんじゃねぇのかなって思ってさ」
「曖昧、ですか」
廉はその言葉にあまりピンと来ず、キルヴァンは話を続けた。
「例えば、昨日はセインの弱った姿を実際に見ただろ。だからセイン一人に対して治したいって気持ちが強くなって、スキルが発動したんじゃねぇのかな、って」
「なるほど!たしかに村の人を助けたいという気持ちでは、村のどんな人のどんな病気を治したいのか、その辺りが少し曖昧になってしまうかもしれませんね」
アッシュは納得したように言った。
廉にも少しそれが分かるような気がして、あぁ、と曖昧に返事をした。
「つまり、曖昧で広すぎる範囲の想いではスキルも不安定で発現しない。ってのはありそうな話じゃねぇか?」
一理ある、そう廉は思った。
たしかになんとなく腑に落ちるし、それがスキルが発現する条件であるとなんとなく頭でも理解できた。
ただ、かといってどう思いを集中させればよいのかが、廉には分からない。
「セインくんは完治したと知った今、僕の中のセインくんを治したい気持ちは弱くなってて…」
「そりゃそうだよな。今の俺たちもピンピンしてるから、身近で治したい人をイメージして、ってのは厳しいか」
うーん、と二人は悩む。
そんな中、アッシュはふと違和感に気が付いた。
「あれ…?そういえば今日はまだ、おばさんが来てないですね」
「それなら…手首に出てますね」
そう言うと、廉は手首をアッシュの方へ向けた。
すると廉の手首には薄い緑色の紋章が広がり、小さく光った。
「それって、薬の調合をイメージするだけで紋章が浮かぶのですか?」
「そうですね。今から調合するぞーって考えると、ここが光ります」
キルヴァンはその紋章を初めて見たようで、おぉ、と感心する。
「緑の紋章、初めて見た・・・草に関わってるから緑色なのか。しかも紋章も、なんか森って感じだ」
「もしかして、紋章ってそれぞれ違うんですか?」
廉がそう言うと、キルヴァンは首元に紋章を浮かばせた。
「俺のスキルの透視は、白く光る。紋章は目の形だ。ちなみに…」
ぽふんっ
キルヴァンは狐に変化すると、額に光る紋章を見せた。
「狐に変化してる時は、額が黄色く光って狐の尻尾の紋章が浮かぶんだぜ」
「貴方、狐の姿でも人の言葉を話せるのですね」
アッシュは感心したように言うと、キルヴァンは「まぁな」と言いながら再び人の姿へと戻った。
「アッシュさんは、どんな風になるんですか?」
「私もいくつかスキルは持っているのですが…よく使うのはこれでしょうか」
そう言うと、アッシュの手の甲に、蜘蛛の巣のような繊細な紋章が薄紫色に浮かび上がった。
「これは、防御スキルです」
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「おぉ…!」
「この中にいれば、大抵の攻撃からは守ることができます。今はドーム状ですが、盾のような形にしたりなど、変化させたりもできますよ」
「すごい…アッシュさんらしいスキルって感じですね」
「ありがとうございます」
「さて、一旦調合に必要な器具を準備しましたが…」
廉たちが座るテーブルに置かれた器具の数々。
キルヴァンは物珍しそうにそれらを眺め、すごい、と感心した様子だった。
「まずは普通に薬を作ってみましょうか」
廉はそう言うと、薬を作り出す。
手首の紋章は調合の間も光り続けたが、それ以外にスキルが発現している様子はなかった。
「調合のスキルしか出てないっぽいぞ」
「うーん…治したいとは思ってるんですけど…」
「今は誰を治したいと思って調合したのですか?」
「村の人たち…ですかね」
その時、キルヴァンはふと思い出したように口を開いた。
「そういや俺は狐に変化する時、昔はかなり精密に狐の姿をイメージしないと変化できなかったんだ。今はもう慣れてそんな必要もなくなったが」
「へぇ、そうなのですか。結構繊細なスキルなのですね」
「で、ちょっと思ったんだけどよ。”村の人”って範囲が広すぎるっつうか、曖昧なイメージになっちゃってるんじゃねぇのかなって思ってさ」
「曖昧、ですか」
廉はその言葉にあまりピンと来ず、キルヴァンは話を続けた。
「例えば、昨日はセインの弱った姿を実際に見ただろ。だからセイン一人に対して治したいって気持ちが強くなって、スキルが発動したんじゃねぇのかな、って」
「なるほど!たしかに村の人を助けたいという気持ちでは、村のどんな人のどんな病気を治したいのか、その辺りが少し曖昧になってしまうかもしれませんね」
アッシュは納得したように言った。
廉にも少しそれが分かるような気がして、あぁ、と曖昧に返事をした。
「つまり、曖昧で広すぎる範囲の想いではスキルも不安定で発現しない。ってのはありそうな話じゃねぇか?」
一理ある、そう廉は思った。
たしかになんとなく腑に落ちるし、それがスキルが発現する条件であるとなんとなく頭でも理解できた。
ただ、かといってどう思いを集中させればよいのかが、廉には分からない。
「セインくんは完治したと知った今、僕の中のセインくんを治したい気持ちは弱くなってて…」
「そりゃそうだよな。今の俺たちもピンピンしてるから、身近で治したい人をイメージして、ってのは厳しいか」
うーん、と二人は悩む。
そんな中、アッシュはふと違和感に気が付いた。
「あれ…?そういえば今日はまだ、おばさんが来てないですね」
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