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24時のランドリーで
しおりを挟む気が付くと、いつの間にか"今日"になっている。
どうやら今日もまた、このコインランドリーで日をまたいでしまったらしい。
バンドマンとしていつかフェスのトリを務める。
それが小さい頃からの夢だった。
しかし現実は27歳、フリーター。バンドマンとしての仕事はほとんど無いに等しい。
ちなみに3年付き合った彼氏とは、つい先週別れたばかりだ。
今にも切れそうな蛍光灯がチカチカと光る。
「明日には使えないゴミになっていそうだな」
ぽつりと呟く。
まるで自分の事を言っているかのようだった。
恋人と出会ったのはこのコインランドリーだった。
いつものように僕はコインランドリーで一人溜め込んだ洗濯物を洗い眺めていると、不意に声をかけられたのだ。
「そのバンド、好きなんですか?」
振り向くと、そこには小柄な身体に似合わないブカブカのパーカーを着た青年が立っていた。
それが、元恋人との出会いだった。
彼が指さす先には僕の好きなバンドのライブTシャツ。
近所に出かけるときのために着ているものだった。
「あ・・・そうなんすよ・・・」
「インディーズのバンドですよね?俺も時々聴くけど、ベースが好きなんです」
「音楽好きなんすか」
「はい!」
キラキラと目を輝かせてぐいぐいと人のテリトリーに入って来ようとする彼にはじめは戸惑った。
だが、それから何度かこのコインランドリーで話すうち、彼のその人懐っこい性格に惹かれていった。
付き合おう、なんてことをちゃんと言った記憶は正直、ない。
一度、何を思ったのか身体の関係になって、そこからずるずるセフレの関係に落ち着いて、気が付いたら恋人同士になっていた。
大人の恋なんて、そんなものなんだろう。
午前4時、一通りセックスを終えてタバコを吸う僕に彼が聞いたことがあった。
「ねぇ、バンドやってて楽しい?」
「楽しいよ。死にたくなることも多いけど」
「そっかぁ」
彼は僕と同い年だったが学校の先生として毎日楽しく仕事をしているらしい。
コンビニでバイトしながら売れもしない曲を書いている僕とは大違いだった。
そんな彼に劣等感を持ち始めるのは、ある意味当然のことではないだろうか。
ある日、彼と大喧嘩になったことがあった。
きっかけは些細な事だった。
だが、お酒の力もありお互いがお互いに踏み込んではいけない部分にまで踏み込んでしまったのだ。
「お前はいいよな、親もいて最悪実家帰ればいいし。でも俺は違うの。お前みたいに夢ばっか追いかけてらんないの」
「俺もいい年だし同棲だって視野に入れてた。でも、もう無理だ。正直今のお前と将来のことなんて考えらんない」
「ごめん。もう別れたい」
一方的にそう言われ、別れを告げられた。
あの日の事は、今でも嫌というほど鮮明に思い出せる。
僕は今日もこのコインランドリーで真夜中に一人ぽつんと洗濯物を洗い、眺めている。
別れを告げた以降、彼はここには来なかった。
「そうだ、今日のバイト早番だった・・・早く帰らなきゃ」
独り言をぽつりと呟き、乾いた洗濯物を取り込む。
小さい頃に思い描いたような大人にはなれなかった。
どこで失敗したのか、僕にはわからない。
彼の好きだったバンドのTシャツがくしゃくしゃになって乾いている。
僕はそれをそっと手に取り、家へと向かった。
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