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四章 月下香
獄炎
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———俺は一時的に距離を取り先ほどの魔法について思考していた。一体どう言う能力で背後や何もない空間に炎を出現させられるのか?
先ほどの戦闘を思い返す‥‥‥
(そうかっそう言うことか‥‥)
そしてある事に俺は気づいた。気付いたというより勘の方が正しいかも知れない
その気付いたこととは‥‥
———視線だ
格闘での死闘を繰り広げていた俺たちは相手の動きを戦闘中に観察する
コンマ1秒以下の動きさえも敏感に感じ取り相手の出方を読み取る
少しでも反応が遅れればそれは死を意味する
一対一での戦闘中彼女は時折視線を外していた。外した視線の先は俺の背後。
そして俺はある仮説を立てた。仮説を立てると案外すんなり理解できるものだ
カラクリが分かり正面の彼女を見る
「———そういうことですか。カラクリが分かりましたよ」
「カラクリですと?」
「ええ。あなたの視線だ。そして必ず炎を出現させる時は動きが鈍る。だから先ほどの俺の攻撃を避けきれなかった。違うか?」
俺はリコリスに向かってカラクリを解いていると必然と口調が変わってきてしまった。リコリスもそれに気づき、疑心が少しづつ確信へと変わってゆく
「ええ、その通りです。よく見破りました。でも残念、あなたの本性も垣間見えてしまいましたね。そしてこれ以上はかわいそうなので一撃で終わらせます」
「それはどうも。最後の一撃って事はまた何か隠しているのか?」
俺は否定せずにそのまま会話を続行し、彼女の一撃とやらに意識を集中する
「もちろん。それもとっておきのをお見せしましょう。この魔法は獣人からしてみれば卑怯と言われるかもしれません。私自身もダメージを負います。それでも貴方を買ってこの魔法を使いましょう」
「それは買ってくれてありがたい。では見せてくれ。その魔法とやらを———」
「ふふふ。後悔しないでください。今度は本当に眼を覚まさなくなりますよ?」
そして彼女からは強大な魔力の圧を感じた。彼女の髪が掻き乱れ、熱風と乱れる炎が闘技場を襲う
「おいおいおいおい!!やばいんじゃないか?!」
「ひぃぃっ!溶けてる!」
「あちっ!離れた方がいいんじゃない?!」
観客が混乱に包まれるがそこでアナウンスが鳴る
「会場の皆さん!安心してください!魔障壁が闘技台を包み込んでいます!少々暑いですがこれ以上の被害は無いですので安心してください!」
アナウンスで混乱を抑制しようとしているがもう被害がいろいろと出ている
本当に魔法壁は大丈夫なのだろうか‥‥下手をすれば破れかねないぞ
「———もっと上げますっ!」
彼女の魔力がさらに跳ね上がり、全身に底知れない圧がかかる
もしかしたらリコリスは可視化まで一歩手前の存在まで上り詰めているだろう
残り数年もすれば母親を抜きそうな勢いだな、それにとんでもない炎の渦だ
正直、眼を開けることがやっとだ
「どこまで解放する気だ‥‥」
悪態をつくしか無いこの状況
彼女の周りを渦巻いているのは高熱の風。下手に突破出来ない‥‥‥
———そしてとうとうその時が訪れた
リコリスの魔力が最高潮まで達し、彼女の唇が上下に動いた
「罪人よ‥‥灼かれなさい」
———獄炎《フォーコ・インフェル》
「———なんだその魔法はっ」
全身から汗が吹き出す。暑くてかく汗では無い。身体が恐怖している汗だ
俺は一瞬恐怖した。あの時‥‥‥親が目の前で殺された以来の恐怖
してリコリスが唱えた魔法
彼女の背後に炎が集まり、鳥の形が形成されていく、それは伝説の鳳凰の姿
彼女は鳳凰の化身を炎で創り上げたのだ
「———リコリス‥‥その魔法を使うとは‥‥そういうことなのだな」
———この光景を貴賓室で見守っていた女王ストレニア。彼女は確信のとこまで来ていた。
あの少年が今回の事件の犯人だと‥‥‥
———あの魔法は一撃必殺。リコリスは可視化までは届いていないがあの魔法を使えるという事は我と同じ領域に並んだという事
「———娘の成長は親として嬉しいものだ」
あの魔法を食らえばたとえ化け物でさえ、そして”厄災級の魔獣”でさえも灰になるだろう。しかし、折角見つけた犯人を消炭にしてしまえばいかがなものか‥‥‥
「———まあ良いか‥‥‥事の犯人がこれで消炭になり万事解決か。あの魔法を受けて倒れなかったその時は‥‥‥まあ、あり得ないが。後に他国へ報告でもするかな」
———女王は娘の勝利に一変の疑いを抱かない。しかし女王はこの瞬間油断していた。そしてあることも忘れていた。
———あの少年、レオンは可視化できる魔力を秘めている事を‥‥‥
またさらに勘違いをしている事。女王並びにリコリスの魔法でさえ”厄災級の魔獣”は倒せないという事
5000年前人類全体が挑み、そして人類が破れた存在を彼女は知らない————
彼女が学んできた歴史は時代と共に捻じ曲げられ改変され続けてきた事も知らない————
軍上層部さえ知る者は存在しない————
そんな彼女らは後に起きる厄災に絶望する
———しかしそれはまだ先の話である———
先ほどの戦闘を思い返す‥‥‥
(そうかっそう言うことか‥‥)
そしてある事に俺は気づいた。気付いたというより勘の方が正しいかも知れない
その気付いたこととは‥‥
———視線だ
格闘での死闘を繰り広げていた俺たちは相手の動きを戦闘中に観察する
コンマ1秒以下の動きさえも敏感に感じ取り相手の出方を読み取る
少しでも反応が遅れればそれは死を意味する
一対一での戦闘中彼女は時折視線を外していた。外した視線の先は俺の背後。
そして俺はある仮説を立てた。仮説を立てると案外すんなり理解できるものだ
カラクリが分かり正面の彼女を見る
「———そういうことですか。カラクリが分かりましたよ」
「カラクリですと?」
「ええ。あなたの視線だ。そして必ず炎を出現させる時は動きが鈍る。だから先ほどの俺の攻撃を避けきれなかった。違うか?」
俺はリコリスに向かってカラクリを解いていると必然と口調が変わってきてしまった。リコリスもそれに気づき、疑心が少しづつ確信へと変わってゆく
「ええ、その通りです。よく見破りました。でも残念、あなたの本性も垣間見えてしまいましたね。そしてこれ以上はかわいそうなので一撃で終わらせます」
「それはどうも。最後の一撃って事はまた何か隠しているのか?」
俺は否定せずにそのまま会話を続行し、彼女の一撃とやらに意識を集中する
「もちろん。それもとっておきのをお見せしましょう。この魔法は獣人からしてみれば卑怯と言われるかもしれません。私自身もダメージを負います。それでも貴方を買ってこの魔法を使いましょう」
「それは買ってくれてありがたい。では見せてくれ。その魔法とやらを———」
「ふふふ。後悔しないでください。今度は本当に眼を覚まさなくなりますよ?」
そして彼女からは強大な魔力の圧を感じた。彼女の髪が掻き乱れ、熱風と乱れる炎が闘技場を襲う
「おいおいおいおい!!やばいんじゃないか?!」
「ひぃぃっ!溶けてる!」
「あちっ!離れた方がいいんじゃない?!」
観客が混乱に包まれるがそこでアナウンスが鳴る
「会場の皆さん!安心してください!魔障壁が闘技台を包み込んでいます!少々暑いですがこれ以上の被害は無いですので安心してください!」
アナウンスで混乱を抑制しようとしているがもう被害がいろいろと出ている
本当に魔法壁は大丈夫なのだろうか‥‥下手をすれば破れかねないぞ
「———もっと上げますっ!」
彼女の魔力がさらに跳ね上がり、全身に底知れない圧がかかる
もしかしたらリコリスは可視化まで一歩手前の存在まで上り詰めているだろう
残り数年もすれば母親を抜きそうな勢いだな、それにとんでもない炎の渦だ
正直、眼を開けることがやっとだ
「どこまで解放する気だ‥‥」
悪態をつくしか無いこの状況
彼女の周りを渦巻いているのは高熱の風。下手に突破出来ない‥‥‥
———そしてとうとうその時が訪れた
リコリスの魔力が最高潮まで達し、彼女の唇が上下に動いた
「罪人よ‥‥灼かれなさい」
———獄炎《フォーコ・インフェル》
「———なんだその魔法はっ」
全身から汗が吹き出す。暑くてかく汗では無い。身体が恐怖している汗だ
俺は一瞬恐怖した。あの時‥‥‥親が目の前で殺された以来の恐怖
してリコリスが唱えた魔法
彼女の背後に炎が集まり、鳥の形が形成されていく、それは伝説の鳳凰の姿
彼女は鳳凰の化身を炎で創り上げたのだ
「———リコリス‥‥その魔法を使うとは‥‥そういうことなのだな」
———この光景を貴賓室で見守っていた女王ストレニア。彼女は確信のとこまで来ていた。
あの少年が今回の事件の犯人だと‥‥‥
———あの魔法は一撃必殺。リコリスは可視化までは届いていないがあの魔法を使えるという事は我と同じ領域に並んだという事
「———娘の成長は親として嬉しいものだ」
あの魔法を食らえばたとえ化け物でさえ、そして”厄災級の魔獣”でさえも灰になるだろう。しかし、折角見つけた犯人を消炭にしてしまえばいかがなものか‥‥‥
「———まあ良いか‥‥‥事の犯人がこれで消炭になり万事解決か。あの魔法を受けて倒れなかったその時は‥‥‥まあ、あり得ないが。後に他国へ報告でもするかな」
———女王は娘の勝利に一変の疑いを抱かない。しかし女王はこの瞬間油断していた。そしてあることも忘れていた。
———あの少年、レオンは可視化できる魔力を秘めている事を‥‥‥
またさらに勘違いをしている事。女王並びにリコリスの魔法でさえ”厄災級の魔獣”は倒せないという事
5000年前人類全体が挑み、そして人類が破れた存在を彼女は知らない————
彼女が学んできた歴史は時代と共に捻じ曲げられ改変され続けてきた事も知らない————
軍上層部さえ知る者は存在しない————
そんな彼女らは後に起きる厄災に絶望する
———しかしそれはまだ先の話である———
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