虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

文字の大きさ
57 / 141
四章 月下香

獄炎

しおりを挟む
———俺は一時的に距離を取り先ほどの魔法について思考していた。一体どう言う能力で背後や何もない空間に炎を出現させられるのか?

先ほどの戦闘を思い返す‥‥‥

(そうかっそう言うことか‥‥)

そしてある事に俺は気づいた。気付いたというより勘の方が正しいかも知れない

その気付いたこととは‥‥


———視線だ


格闘での死闘を繰り広げていた俺たちは相手の動きを戦闘中に観察する
コンマ1秒以下の動きさえも敏感に感じ取り相手の出方を読み取る

少しでも反応が遅れればそれは死を意味する

一対一での戦闘中彼女は時折視線を外していた。外した視線の先は俺の背後。

そして俺はある仮説を立てた。仮説を立てると案外すんなり理解できるものだ

カラクリが分かり正面の彼女を見る

「———そういうことですか。カラクリが分かりましたよ」

「カラクリですと?」

「ええ。あなたの視線だ。そして必ず炎を出現させる時は動きが鈍る。だから先ほどの俺の攻撃を避けきれなかった。違うか?」

俺はリコリスに向かってカラクリを解いていると必然と口調が変わってきてしまった。リコリスもそれに気づき、疑心が少しづつ確信へと変わってゆく

「ええ、その通りです。よく見破りました。でも残念、あなたの本性も垣間見えてしまいましたね。そしてこれ以上はかわいそうなので一撃で終わらせます」

「それはどうも。最後の一撃って事はまた何か隠しているのか?」

俺は否定せずにそのまま会話を続行し、彼女の一撃とやらに意識を集中する

「もちろん。それもとっておきのをお見せしましょう。この魔法は獣人からしてみれば卑怯と言われるかもしれません。私自身もダメージを負います。それでも貴方を買ってこの魔法を使いましょう」

「それは買ってくれてありがたい。では見せてくれ。その魔法とやらを———」

「ふふふ。後悔しないでください。今度は本当に眼を覚まさなくなりますよ?」

そして彼女からは強大な魔力の圧を感じた。彼女の髪が掻き乱れ、熱風と乱れる炎が闘技場を襲う

「おいおいおいおい!!やばいんじゃないか?!」

「ひぃぃっ!溶けてる!」

「あちっ!離れた方がいいんじゃない?!」

観客が混乱に包まれるがそこでアナウンスが鳴る

「会場の皆さん!安心してください!魔障壁が闘技台を包み込んでいます!少々暑いですがこれ以上の被害は無いですので安心してください!」

アナウンスで混乱を抑制しようとしているがもう被害がいろいろと出ている
本当に魔法壁は大丈夫なのだろうか‥‥下手をすれば破れかねないぞ

「———もっと上げますっ!」

彼女の魔力がさらに跳ね上がり、全身に底知れない圧がかかる

もしかしたらリコリスは可視化まで一歩手前の存在まで上り詰めているだろう

残り数年もすれば母親を抜きそうな勢いだな、それにとんでもない炎の渦だ

正直、眼を開けることがやっとだ

「どこまで解放する気だ‥‥」

悪態をつくしか無いこの状況
彼女の周りを渦巻いているのは高熱の風。下手に突破出来ない‥‥‥


———そしてとうとうその時が訪れた


リコリスの魔力が最高潮まで達し、彼女の唇が上下に動いた

「罪人よ‥‥灼かれなさい」


———獄炎《フォーコ・インフェル》



「———なんだその魔法はっ」

全身から汗が吹き出す。暑くてかく汗では無い。身体が恐怖している汗だ
俺は一瞬恐怖した。あの時‥‥‥親が目の前で殺された以来の恐怖

してリコリスが唱えた魔法

彼女の背後に炎が集まり、鳥の形が形成されていく、それは伝説の鳳凰の姿

彼女は鳳凰の化身を炎で創り上げたのだ



「———リコリス‥‥その魔法を使うとは‥‥そういうことなのだな」


———この光景を貴賓室で見守っていた女王ストレニア。彼女は確信のとこまで来ていた。
あの少年が今回の事件の犯人だと‥‥‥




———あの魔法は一撃必殺。リコリスは可視化までは届いていないがあの魔法を使えるという事は我と同じ領域に並んだという事


「———娘の成長は親として嬉しいものだ」


あの魔法を食らえばたとえ化け物でさえ、そして”厄災級の魔獣”でさえも灰になるだろう。しかし、折角見つけた犯人を消炭にしてしまえばいかがなものか‥‥‥


「———まあ良いか‥‥‥事の犯人がこれで消炭になり万事解決か。あの魔法を受けて倒れなかったその時は‥‥‥まあ、あり得ないが。後に他国へ報告でもするかな」



———女王は娘の勝利に一変の疑いを抱かない。しかし女王はこの瞬間油断していた。そしてあることも忘れていた。

———あの少年、レオンは可視化できる魔力ヴィズアリタを秘めている事を‥‥‥

またさらに勘違いをしている事。女王並びにリコリスの魔法でさえ”厄災級の魔獣”は倒せないという事

5000年前人類全体が挑み、そして人類が破れた存在を彼女は知らない————

彼女が学んできた歴史は時代と共に捻じ曲げられ改変され続けてきた事も知らない————

軍上層部さえ知る者は存在しない————


そんな彼女らは後に起きる厄災に絶望する


———しかしそれはまだ先の話である———
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...