虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

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五種族会談編 一章 虚の王

アザレア達の日常 Ⅲ

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———今日1日の訓練が終了し時刻は18時を回り、太陽が夕焼けの色を地上に照らし出している。夏季の夜は短く、空が闇に覆われる時刻は遅い。夕焼けの空が広がる中、訓練生達は海沿いの駐屯地に戻り各々自由時間を過ごしていた

そして六幻楼《アルターナ》の女子達3人は一応訓練生という事もあり3人一部屋の空間が与えられていた。今はまだ軍の種という事で個室ではないが学園に入学と同時に各個人に部屋が渡される。それまでは3人仲良くという事だ。そんな3人は夕飯の時間前に今日の事を楽しく話していた‥‥‥‥


「はぁぁぁ~‥‥今日も疲れたわね。ほんとあの教官は疲れる事を知らないのかしら」

「ふふふ、ほんとね。でも毎日私達のために訓練を付けてくれる人はあの人ぐらいかしらね」

「私はそれよりお腹すいた‥‥」

今日の訓練で体力を使い果たした3人。ベッドの上で大の字になり教官の文句をたれるアザレア。そんなアザレアを大人の対応で慰めるカメリア。訓練の話よりも空腹でベッドに蹲るベラ

3人は2年と半年同じ部屋で心身を共にしてきた事でお互いの性格や価値観を全て知っている。好きな事も好きな料理も好きな人も3人はお互いに認識している。無論アザレアがレオンに想いを寄せていることも知っている間柄である

アザレアが幼少期の頃レオンの家にまで行き、夕食を作った話は3人の秘密でもあり、そして実はレオンの為に自ら率先して軍入隊試験に挑んだ事も3人の秘密
他の3人の男子はこの事を知らない。これは女子だけの秘密

そんなお互いを知り尽くしている3人はいつもの様に談笑し、気を落ち着かせていた

談笑しているとコンコンと突然扉がノックされる。いつの間にか夕食の時間になっており呼びに来たのだと察する3人はベッドから起き上がり扉を開ける。すると扉を開けた先に軍服を着た女性が直立していた

「お疲れ様です!夕食の準備が整いましたのでお呼びに参りました!」

「ありがとう」

「あら、わざわざありがと」

「ありがと!」

アザレア達を呼びにきた女性は3人よりも背が高く大人で二十代ほどの軍人
そんな女性軍人に敬語を使わず感謝をする。無論これは呼びにきた彼女よりも階級が高いからである

もう一度言うが年上年下は関係なく実力、階級で上下が決める

その為、アザレア達が敬語を使ってしまうと相手が困ってたじろいでしまう。16歳だからと言って敬語を部下に使うのはどちらも不利益というわけだ。街を出歩くプライベートの時は年上を尊重し敬語を使う3人だが軍内部ではしっかりと線引きする

女性軍人を先頭に食堂まで案内された3人。数百人程座れる椅子とテーブルがぎっしりとあり食堂はとても広い。ほとんどの席が埋まり皆食事を美味しそうに食べている。また海沿いの駐屯地は軍人の人数が他の駐屯地に比べて少ない。この時期は訓練生が海沿いで訓練している事もあり、大半が訓練生である。本職の軍人と訓練生とで食事の時間がずれ、今ここにいる数百名は訓練生ということになる。

食堂はセルフシステムでメニューは決まっているが自分でトレーを持ち運び、配膳係から料理をトレーに装ってもらう

しかし3人の食事の分は事前に装ってあり、海が一望できるテーブルに置いてある。テーブルにはすでにワルドス、コキン、テルの男子3名がすでに着席していた。訓練生の中で唯一の隊長である六幻楼《アルターナ》のために用意された食事とテーブル

アザレア達は空いている席に座ると案内人の女性訓練生はお辞儀をし同じ訓練生のテーブルへと向かっていった。アザレア達が座ったのを確認してワルドスは口を開いた

「来たか、それじゃあ食べるとしよう」

「「「いただきます」」」

6人全員が一緒に食事をとり、いつもの様に今日の事を話しながら笑い合う
そんな楽しそうに仲良く食べる6人を他の訓練生達は遠くのテーブルから見守っていた‥‥‥

「———ああ、今日もワルドス隊長はかっこいいわぁ」

「———ええーコキン隊長の方がかっこいいって」

「———いやいやテル隊長の方が断然かっこいいから」

女性訓練生はワルドス達の食事を熱の篭る瞳で見つめ、食べるのを忘れている程だった

女性訓練生の中ではワルドス派とコキン派、テル派の三つの勢力に分かれ日々議論している。そしてその派閥のようなものは女性達だけではなかった‥‥‥

「———アザレア隊長、今日も麗しい‥‥」

「———カメリア隊長に責められたい‥‥」

「———ベラ隊長の明るさに浸りたい‥‥」

同じく熱の篭る瞳で見詰める男性訓練生。色恋に乏しい軍人にはさぞかし手に入れたいと願う6人の隊長達。誰もが隣に立ちたいと恋焦がれる対象


———毎日訓練生の誰かが6人のうちの一人に迫り、頬を赤くして泣いて帰ってくると言われている。訓練生の中には6人のうちの一人を想い、辛い訓練に励んでいる者までいるとも言われ、派閥の中にも掟があり皆それぞれ心に刻み守っている

その掟とは同じ派閥に属する者は絶対に抜け駆けしない事。誘いや告白するときは派閥内で知らせてから行動する事。これらを守らずに抜け駆けした者はそれ以降‥‥‥これ以上は言わないでおこう。お互いの為、知らない方がよかった事にしよう


「そういえば、あの6人の隊長達は全員が同じ町出身で同年代らしいわ」

「何それ?!いいなぁ~、私もあんな素敵な人たちと同年代だったらな~」

「天才達が同じ町同じ歳で現れたら、それは六幻楼《アルターナ》なんて名前で呼ばれるわね。なんて羨ましいのでしょう」

「「「はぁぁぁ~~」」」

深くため息をする女性訓練生達。羨ましいと思う半分、落胆し気分が落ち込んでゆく。顔をトレーに戻し現実を見せられる訓練生。そんな現実を突きつけられても好意の気持ちは決して揺るがない。チャンスがあると信じ、チャンスは自ら切り開くと信じ、今日も6人の隊長を遠くから眺めるのだった‥‥


「はあ~美味しかったわね」

「そうだな、軍の食事は毎日美味い。よしコキン、テル行くか」

「オッケー」

「了解」

3人は食事を済ませると食堂を後にしトレーニングルームの方角へと消えていった


「3人ともよく鍛えられるわ。男って体力馬鹿ね」

「ふふ、そうね。なんであんなに体力があるのか不思議ね」

「もしかして訓練さぼってたり‥‥」

「「「ありえるわね」」」

3人の声が重ねるとツボに嵌まったのかクスクスと笑いあう。3人も食事を食べ終えるとカメリアがお風呂にと言い3人で部屋に戻り着替えを準備し、大浴場へと向かう 


軍の大浴場でとても広く海が見渡せて心も安らげる空間となっている。女性にとってはまさに天にも登る気分である。心も体もスッキリとした3人は部屋に戻り魔法座学の予習を行う。

三人でわかる所わからない所を共有しあいページをめくってゆく

魔法座学の教科書は学園でも扱われページ数は3500程 
またアザレア達の教科書は特注製で学園の物よりもさらに高度な魔法理論が示されており、軍がアザレア達に期待している証でもある
一番分厚くページ数はなんと5000を超える。この特注製の教科書は学園で過ごす5年間にも対応している為分厚くなっている

そんな教科書を黙々と読み続ける3人は消灯時間まで勉学に励んでいた


「「「おやすみ~」」」


消灯時間を過ぎベッドに潜る3人は光魔法のランプを消し、目を瞑る

(———今日1日も大変だったぁ。体がクタクタ‥‥2年半も毎日訓練してたから筋肉も大分付いてきちゃった。も、もしレオンとあんな事やこんな事になってしまった時に硬いと言われないかしら‥‥なっ!何を考えているのかしら私!ああーもう!寝なくちゃ!)


アザレアは今日もモヤモヤの気持ちのまま深い眠りへと落ちていった
1日が過ぎ去り、また明日から始まる訓練に備える為、今日もまたよく眠る
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