虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

文字の大きさ
93 / 141
二章 会談と予兆

各国の王達 Ⅱ

しおりを挟む
———時は同じくして場面は獣族国に変わる

獣族国の首都ベスティア 
犯罪が最も少ないと名高い評判を誇るその国は、全て王による統制と世界一の娼婦街により実現されている

また山々に囲まれた首都ベスティアは鉱山と、鉱山から鋼を採掘し加工する技術が盛んな国としても有名である

一つが鋼。そして鋼より硬い性質、羽よりも軽く魔力を通し易い魔法具にもなる便利なミスリル。凄まじい切れ味に決して錆びる事は無く異様な刃紋が特徴のダマスカス

これらは武具などに加工されその中でもダマスカスが鋼の100倍の値が付く
 
商会などでは大事な利益に結びつく為、競争率も非常に高い。多種多様な商会の中ここ2年で急成長し、独走している商会がある


その名もパンテーラ=ネーラ商会

マイアーレ商会が倒産し、その後継という形で新たに改名した商会であり、レオン率いる月下香の傘下にしてその資金を担っている。 
月下香大幹部五華の5人のうちの1人、黒豹族のエルディートが娼婦街並びに商会を管轄し統制している

そして獣族国の王城はまさに軍本部。軍本部と王城が同敷地に存在し、周りを要塞で固めている。王城に立ち入ることが許可されている者は王族とSSランク以上の者のみ。緊急事態ではSランクも立ち入ることができるが滅多にない

王城は首都ベスティアの中央に佇み、常に四方八方を見渡せ監視には最適である。そんな王城にて、現女王陛下であるストレニア・ヴォルペ・ディエーチが王の間にて五種族会談へ出発の準備を進めていた

玉座に腰を下ろし、女王ストレニアが見下ろす先には軍服を纏った3人の獣人が跪いていた


「———陛下、魔車の用意が済みました」

「そうか、もうこの時期が来てしまったか」

跪く3人の中、最初に話を切り出したのは灰色の尻尾を生やし、灰色の髪をオールバックに交戦的な顔付きをする狼族の青年イゾラート・ルーペ

彼は最年少の19歳にしてSSランクの座に就き、師団長を務める一際優秀な軍人である。戦いを非常に好む性格と筋肉質の体はこの国のあり方に適正だ

そして彼には野望があった。それは獣王の座を手に入れること。若気の至りでもあり、最年少でSSランクという肩書きはそれほどまでに彼を掻き立たせた。しかし、女王はルーペの野望を既に見通し、放っていた。この国は力こそ正義、奪いたくば奪えと言う名の下で女王はこのイゾラートに挑戦させようとしていた 

しかしイゾラートは挑戦せず現状維持のままを過ごしている。それはなぜか?

女王の前にリコリスという女王の娘がいるからである。2年前の獣武祭にてオリジナル魔法を顕現させたリコリスはそれ以降、学園に通う学生ながら時期獣王と噂されていた

また年がリコリスは今年で20、イゾラートが19と非常に近い
リコリスが18でオリジナル魔法を顕現させたにも関わらず、イゾラートは未だにオリジナル魔法、もとい最上級魔法がない。そんな優秀であるルーペはそのことに対し非常に苛立っていた

どんなに優秀で魔法力があろうと最上級魔法すらない者が女王やリコリスに勝てるわけがなく、そのためルーペは挑戦せず自身のオリジナル魔法習得のため休戦中というわけである

「最近は魔獣の大群が多いが、気にする程でもない‥‥ところで“アクイラ。魔族帝国領の首都までどれほどの日数で到着する?」

女王が呼ぶアクイラという獣人は鷲族の血統である。
本名はアクイラ・コアトル。腕に黒い羽が生え、また足が鳥の様に鋭くなっている。腕と脚以外は人と遜色ないが獣人の中では一番獣に近いと言えよう。鷲族の末裔はかのケツァルコアトルであることから遺伝子を多く受け継いでいるとも捉えられる。

そんな彼女は女王の問いに対し、懐から日記帳のような物を取り出すと淡々と話し始めた

「我々の航路は地上、それも険しい山々であることから長く見積もって三週間。魔族帝国の道中は幾度となく山々を乗り越えるため早くても二週間と言ったところでしょうか。道などは全て補正されているものの仕方がないことでしょう」

「そうか、会談まで1ヶ月。そんなものだな。あまり早く着きすぎても暇なだけだ。さて、そろそろ行くとするか。“ランベルト”お前は妾と同乗しろ」

「——はっ」

女王がランベルトと言った人物は女王ストレニア・ヴォルペ・ディエーチの実の夫であり、リコリスの父親でもある。本名はランベルト・レオーネ。狐族が王位に即位するまで彼ら獅子族がこの国を統制していたが、300年前に敗北して以来側近の地位を得ている

力が全てのこの国において女も男も関係なく勝者こそが絶対であり、敗者は勝者に平伏す。男であるランベルトは一族の代表であるが妻のストレニアには敵わず頭が上がらなかった。しかしその実力もさる事ながらSSランクの称号を持ち、現在では軍に尽力している


———玉座から女王は立ち上がり、王の間を背に歩き出す。その背後には3人のSSランクが共に続いた


「「「女王陛下に敬礼!」」」


城の外へ出るや否や、軍本部と同敷地のこともあり軍人は隊列を組み、全員が一斉に敬礼する。女王の通る道を開けて左右に展開する軍人。その光景はまるで、戦争へと駆り出て行く戦士を讃える行進。 

行く道の先には魔車が停車し娘のリコリスが待ち構えていた

「お母様、準備が整いました。」

「ふむ、リコリスお前も同乗しろ。いい経験になるだろう」

「わ、私もご一緒に?!‥‥お母様のご命令とあらば同乗させていただきます」

浮かない表情のリコリスだったが母の言葉に渋々従い、共に同乗する

時期王であるリコリスを連れてゆくことで女王はさまざまな経験をさせようとしていた。
まだ17と学生の身だが同じ年齢の者よりとても貴重な体験をするだろうと思い、親である女王は娘を成長させようとした

そしてあの事件から約2年と半年。獣王に即位してから初の汚点を残した例の事件。女王の記憶にこびり付く謎の少年と組織

それは未だに解決されず、また存在すら確認できずにいた

レオン達がこの2年で勢力を大幅に拡大したことなど女王は知らない。
世界トップの商会を手中に収め、世界一の娼婦街を束ねる統率力。精鋭の中の猛者を配下に収めるその力は次第に無視できぬ存在へと変わり、人々に、世界に衝撃を走らせる

しかしそれはまだ先の話‥‥
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...