114 / 141
学園都市編 青年期 一章 学園
入学試験 Ⅰ
しおりを挟む———四日後、時刻10時を回る
現在、俺とファシーノは住居地区から学園地区に向かって歩いている途中
四日前に入学試験の説明を受けた俺たちはわざわざ組織の本部に帰還するのは面倒と思い、住居地区に向かって宿を取った。話し合った末に一部屋の同室を取る事になったが‥‥‥間違いを起こしてはいないぞ!
そして、この四日間はファシーノと一緒に学園都市を観光した。湖に浮く島という観光フレーズは大いに期待できるものだった
都市の外側に行けば、城壁も何もない晴れたところがあり海のように砂地が一面に輝く。そして先が見えないほどの湖が視界を覆う。湖版ビーチが存在し大勢の人で賑わっていた
商業地区では衣服、防具、魔道具、などの店舗だけで数百種類。高級レストランに食べ歩き店舗などあり過ぎて全て回ることができなかったな‥‥‥
次回、観光するときは食べ歩き店舗を全て回りきるつもりだ!
———さてそろそろ学園の正門が見えてきた。学園地区の外にいるというのに中からは大きな歓声が聞こえてくる。そんな学園地区の入り口である正門の前に佇む護衛。そのイカツイ護衛に整理券を見せ正門を開けてもらいさっそく中に入る
「確か、俺たちは第3演習場だったよな?」
「ええ、そうよ。第3だから~‥‥‥右ね!」
俺の腕を強引に引っ張り道案内してくれるファシーノ。なんだかいつもよりも積極的になっているのは気のせいだろうか?
ファシーノに引っ張られて着いた第3演習場は見たことのある造形だった
そう、これはコルッセオ闘技場だ
エルフ大国にも獣族国にも全く同じ形が建設されている。どこの国もこの丸い形をメインにしているということか‥‥‥確かにこの構造以上の設計、見栄え、観客から闘技台の見やすさ、どこを探しても見つからないだろう
何箇所も入り口があり、どこを通っても闘技台へと続いている。通路を通り晴れた先には大勢の人、人、人と闘技台上に乗らない程の受験者で一面を埋め尽くされていた
数にして数千人。そんな数千人が一人また一人と騒めきだせばそれはやがて騒音になる———
「———ええ~皆様お静かにお願い致します。これより試験を実施致しますが整理券をご一緒にお持ち頂いてこちらの魔力測定器にお並びください。それでは9000番からお願い致します」
とても美人な受付嬢が声を闘技場全体に拡張し終えると、ゾロゾロと受験者が魔力測定器という魔道具に並び出した。魔力測定器というものは初めて聞くが、大方自身の魔力値を計るためだろう。そんな魔力測定器の傍には数十人の試験官と思わしき者達が受験者に睨みを飛ばしている事から一人一人を見定めているに違いない
———そして試験開始から数時間後———
「———ん~次‥‥2890。次‥‥3384。次‥‥2500。次‥‥3763。次‥‥3333———はぁ~どれもぼちぼちね」
受験者の魔力値を一人一人書面に映し取っている受付嬢は落胆していた。落胆する原因は恐らく魔力値の低さ。今年の受験者は平均を取っても魔力値が低く、その他の試験官でさえもガッカリしている
「今年は不作なのかしらね‥‥‥毎年なら5000や6000代がいたんだけど‥‥」
そんな中遂に俺の番号が呼ばれた。闘技場台の中心に魔力測定器が置かれているので、歩いていき観察すると丸い水晶のような見た目をしていた。如何やらこの水晶に手を翳して測定をするそうだ。ファシーノからは本気を出すなと念を押されているので勿論加減する‥‥‥!
「すみません。一つお聞きしたい事があるのですが?」
「はい?答えられる範囲なら構いませんよ」
「ありがとうございます。ではこの魔力測定器ですが、上限はあるのですか?」
俺は受付嬢に一つ気になっていたことを質問する。それは、魔力測定器はどの程度まで測れるのかという点だ。先程から2000、3000と言っていた事から少なくとも上限はあるのだと予想できる。しかし俺は普通を出したいので敢えて質問させて貰った
数十人の試験官に睨まれながらも質問してきた俺に一瞬驚きはしたが、受付嬢は清く返事をしてくれた
「上限は10000よ。まあ、10000を超える種族は今までいなかったわね。事実上の最高値は9000代よ。それ以上は未だ誰も到達していないわ。私からすれば9000代も人知を越えた領域‥‥‥化け物ね」
「そうですか。ありがとうございます。ではさっそく‥‥‥」
受付嬢に上限を聞いたところで俺は水晶に手を翳す
その瞬間、水晶が輝き出し闘技場内の辺り一面を光が包み込んだ———
「———え?キャッ!!」
「「「な、なんだ!?」」」
水晶が輝き出し驚愕する受付嬢とその傍に佇む試験官までもが光に目をやられ腰を抜かす。他の受験者までもが呆気に取られ辺りは静まり返ってしまった
光がだんだん収束すると受付嬢はすぐさま水晶にその焦った顔を近づけ‥‥‥
「うぅ‥‥一体‥‥水晶が輝くなんて初めて見たわよ‥‥‥貴方はどれ程の魔力を持っているというの?!」
しかし、その水晶に浮かび上がった数字は予想を大いに裏切るものだった
「———”1000”‥‥え?如何いう事?水晶の故障?でも、あの光は一体‥‥?」
「如何やら水晶の故障かもしれませんね。先程の光は故障の予兆だったのかもしれないので新しい物に交換した方がいいと思いますよ。ふむふむ‥‥‥”1000”ですか。自分もまだまだですね」
ふふふ、俺の迫真の演技には気づかないだろう。なんせこの数字は俺が意図的に操ったのだからな!こっちだって驚いているんだ。手を翳した瞬間に光のは反則だろう。急いで跳ね上がっていく数値を1000にまで落としたのだから偉いぞ俺!
「なんだよ。故障かよ!ビビらせやがって」
「全く”1000”とか雑魚にも程があるだろう!ミジンコですか~」
「あいつ確実に落ちたな!”1000”では絶望するわ」
「さっさと帰んなガキ!料理人でもなってな!」
とまあ、そんな期待はずれの俺には受験者から罵声の嵐が飛んでくる
こいつらにいちいち反応しては面倒くさいからな。直ぐに闘技台を降りよう
「———あら、魔力数値”1000”のレオンじゃない。クスクス」
「ファシーノ‥‥‥結構難しいぞ」
「それでも1000はやりすぎよ?バランスという言葉を知らないの?あら、次は私ね。行ってくるわ」
ファシーノに揶揄われた俺は渋々反省する。闘技台に行ってしまったファシーノだが、男達の恨みの篭った視線は俺に注がれていた。一方で色付いた視線を向ける男はファシーノへと注がれていた
俺は察する
これまたあのパターンじゃない?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる