虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

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学園都市編 青年期 一章 学園

謎に包まれていた存在。その名も‥‥‥

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「———黙れ外道。貴様風情が我らの名を口にするな」

私の目の前に立つ彼女はリーダー格の男に怒りを口にする。
地面に転がる数十人の死体を跨ぎ、彼女は剣先を向けていた

「———下がりなさい“ストゥーシー”」

「——!は、はい‥‥申し訳ありません‥‥」


———私は彼女を呼び止め、後ろへ下がらせる。少し可哀想だけれど‥‥時々暴走しかけるから私がセーブしているの‥‥慕われているのは物凄く感じるのだけどね

さあ‥‥ストゥーシーを後ろに下がらせたのはいいけど、どうしようかな‥‥
ネロ様を待つ事を優先すべきか‥‥それともあそこにいる私と同年代の彼らを守るか‥‥目の前の男を生捕にして情報を吐かせるか‥‥

いいえ、まずは相手の正体を確かめましょう


「———貴方は一体何者でしょうか?聞くに我らの事を少し知っているような口ぶりですね。主君が来るまで貴方と遊びましょうか?」


私は率直にリーダー格の男に問いかける。この者が未だ何者かもわからなければ情報を吐かせても無意味と判断したから‥‥

本音は我らの名を語り、我らに近づく手段として一般市民を殺したこの愚か者を今にでも首を刎ねてやりたい。そう思うと、任務上、常に隠している殺気を抑えられそうにない‥‥

私の殺気と魔力による圧は周りの建物を押し潰していってしまう‥‥
私を中心に放たれる殺気。それを身に受けているにも関わらず目の前の男は笑っていた

「ふっ‥‥我らは無嶺の彩色アクロード!“頂の魔法”を求め、“虚無の統括者”を崇拝し、そして導く者我らがこの腐った世界に変革をもたらし正常へと誘う神の使いだ!月下香《トゥべローザ》のその力の根源を身に宿し、我らは世界の王となる!」



————ブチッ



「———はぁ?」


————私の中で何かが切れる音が響いた。目の前の男‥‥いや“ゴミ”が言い放った言葉の一つ一つが私の沸点を上昇させるっ

初めて心の底から感じる激しい怒りと殺意が込み上げてくる

瞳に血が走り、眉間にシワが出来るほど、この”ゴミ”を睨みつけた
そして私は怒りに身を任せ、周囲に全開の魔力を放出させた———



「———おい、ゴミ‥‥なにを言った?」



◊◊◊



「———な、なんて魔力なの‥‥?!これが月下香《トゥべローザ》の力‥‥?」

私の隣で驚愕し顔面蒼白するヴァレンチーナ先輩は“彼女”の魔力を目の当たりにして戦慄していた‥‥それも当然の反応で無理はない‥‥
私達、六人は一度経験しているからこそ、この圧倒的存在感の魔力に当てられてもなんとか耐えられる‥‥
この反応から見てヴァレンチーナ先輩は初めて相対したのだと思う

何も先輩を責めたりはしない‥‥私たちも初めて相対した当時は身の毛もよだつ感覚だったのだから‥‥あの、心臓を鷲掴みされたような恐怖と感覚は今でも体が覚えている

あの時よりは幾分マシになったけれど、彼女が放出する魔力も引けを取らない程に濃密で細密な魔力‥‥少しでも気が緩むとこちらが気を失いかけてしまう‥‥

「ヴァレンチーナ先輩は初めてのようですね‥‥それが当然の反応です。私たちも初めて相対した当時は何も出来ず、膝を崩して下から見上げる事しかできませんでしたから‥‥」


それに“彼女は激情している‥‥きっとあの男の発言で彼女の逆鱗に触れてしまったに違いない‥‥


「———おお、なんて魔力だ‥‥!この圧倒される感覚、存在感、体が震えて恐怖するこの力を‥‥この力を私は欲するっ!この桁違いの魔力を宿らせればあの美しき魔法を‥‥!」

無嶺の彩色アクロードの男はこの状況でも笑っている。私は確信している‥‥彼女を怒らせたこの男の命は後僅かだという事を‥‥そして彼女の口調が様変わりしてまるで別人のようでとても冷たかった


「———黙れ。二度と話せぬようその口引き裂いてくれる」


彼女は腰に据えている剣を抜いて男に剣先を向ける。彼女の片手に握られている剣は見たところ人族が最も好み扱う“刀”だった。

もしかしたら彼女は人族なのかもしれない‥‥確信はないけれど‥‥それでも彼女の素顔を確認するまでは分からない。上半分の仮面とローブに包まれている素顔では断定できない‥‥

そんな彼女は刀の握っている右腕を左に伸ばし、横薙ぎの構えを取った

圧倒的な魔力を刀に集約させる一振りはこの一帯を吹き飛ばしてしまう‥‥!
そう思った私はヴァレンチーナ先輩と皆に魔障壁を張るよう促す

「これでは、この高級街が吹き飛びます!魔障壁を張りましょう!」

「ええ!分かったわ!————」



「———デリカート、よせ」


「「「———!!誰?!」」」


私たちが今にでも魔障壁を張る瞬間の出来事。突如として空から現れた黒い二つの影は私たちの前に立ち塞がる。その黒い影を見て私達は懐かしさと絶対的な恐怖を覚える

二人が現れた事により、周囲に漂わせていた殺気と濃密な魔力の渦は徐々に薄れていく。そしてデリカートと呼ばれた“彼女は冷静さを取り戻していった


「———!申し訳ありません‥‥“ネロ様”。取り乱しました‥‥」

ネロ‥‥2年ぶりに姿を見たわ‥‥初めて相対した時と同じく彼からは何も感じな
い。普通ならどんなに小さな魔力でも感じ取れるのに不思議な事に彼からは何も感じない。魔力の片鱗も感じない‥‥

それなのに力を開放すると爆発したかのように一気に押し寄せて来るあの暴力的な魔力はなんなの‥‥

「———気にするな。それよりあの男が先程報告にあった奴か」

「はい。そうのようです‥‥あの“ゴミ”はあろう事か我ら月下香《トゥべローザ》の名を語り、ネロ様の魔法を求める哀れでゴミのような愚か者です」

あの圧倒的な魔力を見せつけたデリカートと呼ばれる彼女でさえ、ネロに頭を下げている‥‥やはりネロという人物は次元の違う存在だと改めて認識させられるわ‥‥‥


「———はっははは!!ようやく‥‥ようやくだ!遂に、遂に来たか!!どれほど待ちわびたことか!貴様が“あの虚無の統括者”なのだろう?!各国の軍という軍が貴方を探し回っている!存在自体が未だに謎の多い人物、本人だよな!?なあ、そう言ってくれよ?!」

男は興奮して呂律がまわっていない‥‥なんて品のない男‥‥


「———だったら何だという?貴様は逃しはしないぞ?」

「はっはっは!!その答えは善と見ようっ!悪いが俺はその答えを聞ければいいのだ!その答えだけでここに来た甲斐があったというもの!本当に、本当に存在したぞ!!!我らは今まさに神の前にいる!?そしてさらばだ!月下香《トゥべローザ》!」

「逃げるのか?だがこの学園都市からは逃しはしない———デリカート追えっ」

「——はっ」

その瞬間、無嶺の彩色アクロードの男は闇に溶け込み、一瞬で姿が見えなくなってしまった‥‥そして同時に私たちの後方から応援が駆けつけた



「第二班到着!」 「第四班到着!」 「第三、第一班も到着した!」



「———!来ましたか皆さん!?気をつけてください!今、目の前にいるのはあの月下香《トゥべローザ》です!」

ヴァレンチーナ先輩は駆けつけた数十人の応援に警戒を促した
勿論私たちも標的は違えど目の前の彼らに警戒を一層強める

「月下香《トゥべローザ》だと‥‥!?あれがそうなのか‥‥?」

「先程感じたあの魔力はそういう事か‥‥‥」


月下香《トゥべローザ》と聞いた他の隊員達は全員同じ表情をして驚愕していた‥‥また同じく所属する極秘隠密部隊である一人の先輩が報告の組織を探すけど見あたる筈もなく‥‥

「———なに?!月下香《トゥべローザ》だと?!では報告にあった無嶺の彩色はアクロードどこだ?!」

「それなら地面に転がる死体がそれです‥‥一人は逃げましたが、今は月下香《トゥべローザ》の方が優先と判断しました。そして目の前にいる人物こそ私たちの最も優先するべき“敵”です」

ヴァレンチーナ先輩が今でも震える口を動かして説明した
さらに追い討ちをかけるようにヴァレンチーナ先輩は話を続ける‥‥‥


「———二人いる内の一人身長の高い方があの———“虚無の統括者”と呼ばれる人物ですっ」

「———なっ何だと?!それは本当か?!」

「はい‥‥先程月下香トゥべローザ無嶺の彩色アクロードの二人が話していた内容から彼は正真正銘の虚無の統括者本人です」

「なんだと‥‥!?本当にじっ実在したのか?!」

「まさか‥‥あの厄災の魔獣を一振りで滅ぼした張本人とは‥‥実在したのね」

「それなのに何も感じない‥‥魔力が何も感じないなど‥‥あの“頂の魔法”と同じ‥‥本物だ‥‥‥本物のあいつだ‥‥‥」


———あの“虚無の統括者”が実在したという事実に隊員達は怖気付いている。今までは王達の噂や自信を守る為の保険で嘘をついているのかと思われていた事柄が目の前の存在で覆された

まさかこの場で出くわすとは私達ですらも予想外の出来事で混乱している

同じ隊員達の、上位の魔法剣士でさえ恐れる存在が目の前にいる現実は誰が予想できたことなの‥‥‥

「———だいぶギャラリーも増えたな‥‥もうここに用はない。行くぞ」

「———ええ」

ネロこと虚無の統括者とその従者は私達を確認すると直ぐに闇に溶け込んで行き‥‥‥

「———またね?」

「「「———?!」」」

闇に消えていく従者の彼女は消える瞬間に私達に向けて言葉を投げかけてきた
その言葉は透き通る声で耳に届き、何故だか聞いたことのある声に驚く私達

そして消え掛かる“彼女の耳”‥‥月明かりが照らした”ピアス”が光輝く

私達はまた、何も出来ずその場で立ち尽くすことしかできずに闇に消えていく彼らを見ているだけだった‥‥
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