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消失
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酷く憔悴した様子の男を見る。どうやら彼は俺たちがあずかり知らぬところで椿と恋仲になったらしい。
だが、流石神宮寺の男。そこで焦りはするがまだ冷静を保っている。
そう評価しながら俺は考えたことを彼らに伝える。
「私たちには大規模の親衛隊がいます。なのでその手を使わないわけにはいきません」
ただ椿が部屋にいなかっただけの話だが、ここにいる誰もがそれだけでは収まらないと直感している。
ここ最近の椿の様子は修羅のようで何をやらかすのか予想がつかなかった。
口数は少なくなり、笑顔も見せず終始白面を張り付けたかのように内心を計ることはできない。
最低限のこと以外は話しかけるなと言い放ち、俺たちのことを冷たくあしらっていた。
必然と前のようなほのぼのとした会話はなくなり、あるのは事務的な会話とぎこちない空気のみ。
「それでは、各々親衛隊に連絡を取りましょう」
その言葉にそれぞれが頷く。生徒会の親衛隊に所属しているのは大体学園の三割の生徒たち。広大な敷地だが、学園内で探し出すのなら十分だろう。
問題は学園の外に出た場合だ。彼は前に退学の要請を行っていた。それを龍が何とか食い止めていたが、この様子だと受理されているいないに関わらず出ていっているかもしれない。
学園にいなかったのならば次にいる可能性があるのが彼の生家だ。
「…………ねぇ」
「…………どうしたのです?」
薙刀が声をかけてくる。俺はしばらく考え込んでいたのに気づき、俯けていた顔を上げた。
「律たち、って…なんだろ…………」
俺はその言葉に黙る。それは俺にもわからない。白い神官服を着こみ、心底椿を神を見るように崇拝していた。
「椿が……」
龍が顔を上げる。
「自分のことを【白】だと言っていた。そして、教団……【白の祝福】に前はいたと言っていた」
「白……白の祝福…………その呼称からして椿はその教団の中核にいたのではないでしょうか」
「ッ…………クソッ!」
龍がイラついたようにテーブルを拳で叩く。
わからないことだらけだ。肝心の椿もほとんど答えずにいる。
もしかしたらと考える。
「…………父なら、わかるかもしれません」
「ハッ…………!」
「神官服を着ていた人たちはどれも若かった。それに、あの後何十人規模で生徒たちが行方知れずになっています。何かしらの関わりはあるでしょう」
「それだけ」
「食い込んでいてー」
「「何も情報がないってのはないはずだもんねー!」」
そういうことだ。
あの後夜祭の後、あの場にいた律や椿の親衛隊長を始め何十人もの生徒が姿をくらましている。
その件には律の叔父だという理事長も対応しているので俺達生徒は関わらずに一任している状態であった。
行方知れずになった生徒は中小企業の生徒から海外進出まで行っている世界規模の子息もいなくなっている。少なくとも何か騒ぎが起こるかと思いきや不穏にも沈黙している。まるで恐ろしいものから目を逸らすようにいなくなった生徒たちは元からいないものとされた。
これは不自然だ。
大樹たちも知らなくてもいいことがあるなんて当たり前のように知っている。
だが、それは自らを闇の底から掬ってくれた大切な友人の悲しみを放置するようなものなのか。
あの時、愚かだった自分たちを切り捨ててもおかしくないというのに真摯に向き合って諭してくれた。
そして胸の内に蟠っていたものを解いてくれたのだ。
完全に闇が晴れはしない。そこまで他人が世話をするものではないからだ。
だが、それでもここまでしてくれた彼を自分たちが助けようとせずに指をくわえて見つめるだけなのか?
「見くびるなよ…………」
知るべきではない、相対するべきではないものがこの世に云万と溢れていることは聡い自分たちなら知っている。
だがここで黙るようならあそこまで愚かになれる自分たちではない。
「龍、薙刀、皐月、睦月」
一人一人目を合わせる。
「椿を、助けますよ」
そして、またみんなで笑い合うんです。
だが、流石神宮寺の男。そこで焦りはするがまだ冷静を保っている。
そう評価しながら俺は考えたことを彼らに伝える。
「私たちには大規模の親衛隊がいます。なのでその手を使わないわけにはいきません」
ただ椿が部屋にいなかっただけの話だが、ここにいる誰もがそれだけでは収まらないと直感している。
ここ最近の椿の様子は修羅のようで何をやらかすのか予想がつかなかった。
口数は少なくなり、笑顔も見せず終始白面を張り付けたかのように内心を計ることはできない。
最低限のこと以外は話しかけるなと言い放ち、俺たちのことを冷たくあしらっていた。
必然と前のようなほのぼのとした会話はなくなり、あるのは事務的な会話とぎこちない空気のみ。
「それでは、各々親衛隊に連絡を取りましょう」
その言葉にそれぞれが頷く。生徒会の親衛隊に所属しているのは大体学園の三割の生徒たち。広大な敷地だが、学園内で探し出すのなら十分だろう。
問題は学園の外に出た場合だ。彼は前に退学の要請を行っていた。それを龍が何とか食い止めていたが、この様子だと受理されているいないに関わらず出ていっているかもしれない。
学園にいなかったのならば次にいる可能性があるのが彼の生家だ。
「…………ねぇ」
「…………どうしたのです?」
薙刀が声をかけてくる。俺はしばらく考え込んでいたのに気づき、俯けていた顔を上げた。
「律たち、って…なんだろ…………」
俺はその言葉に黙る。それは俺にもわからない。白い神官服を着こみ、心底椿を神を見るように崇拝していた。
「椿が……」
龍が顔を上げる。
「自分のことを【白】だと言っていた。そして、教団……【白の祝福】に前はいたと言っていた」
「白……白の祝福…………その呼称からして椿はその教団の中核にいたのではないでしょうか」
「ッ…………クソッ!」
龍がイラついたようにテーブルを拳で叩く。
わからないことだらけだ。肝心の椿もほとんど答えずにいる。
もしかしたらと考える。
「…………父なら、わかるかもしれません」
「ハッ…………!」
「神官服を着ていた人たちはどれも若かった。それに、あの後何十人規模で生徒たちが行方知れずになっています。何かしらの関わりはあるでしょう」
「それだけ」
「食い込んでいてー」
「「何も情報がないってのはないはずだもんねー!」」
そういうことだ。
あの後夜祭の後、あの場にいた律や椿の親衛隊長を始め何十人もの生徒が姿をくらましている。
その件には律の叔父だという理事長も対応しているので俺達生徒は関わらずに一任している状態であった。
行方知れずになった生徒は中小企業の生徒から海外進出まで行っている世界規模の子息もいなくなっている。少なくとも何か騒ぎが起こるかと思いきや不穏にも沈黙している。まるで恐ろしいものから目を逸らすようにいなくなった生徒たちは元からいないものとされた。
これは不自然だ。
大樹たちも知らなくてもいいことがあるなんて当たり前のように知っている。
だが、それは自らを闇の底から掬ってくれた大切な友人の悲しみを放置するようなものなのか。
あの時、愚かだった自分たちを切り捨ててもおかしくないというのに真摯に向き合って諭してくれた。
そして胸の内に蟠っていたものを解いてくれたのだ。
完全に闇が晴れはしない。そこまで他人が世話をするものではないからだ。
だが、それでもここまでしてくれた彼を自分たちが助けようとせずに指をくわえて見つめるだけなのか?
「見くびるなよ…………」
知るべきではない、相対するべきではないものがこの世に云万と溢れていることは聡い自分たちなら知っている。
だがここで黙るようならあそこまで愚かになれる自分たちではない。
「龍、薙刀、皐月、睦月」
一人一人目を合わせる。
「椿を、助けますよ」
そして、またみんなで笑い合うんです。
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