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更科灰音

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第39話:車を買いに行く

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「車を買います」
佳乃がガッカリした顔をする。なぜにガッカリ?
「430を手放してしまうのですか?」
ああ、そういうことね。
あれは手放さない。もう手に入らないし。
「追加で買います」
花子も興味が出てきたようだ。

「マスター、買うのは良いけど置く場所が無い」
マンション住まいだと駐車場に困ることもある。
だいたい多くても1世帯1台で、むしろ世帯数分確保できていない方が普通だ。
このマンションでも地下駐車場に1台分の空きしかなかった。
色々デリケートな車なので、駐車場の条件は厳しい。
日光の当たらない屋根や壁のある駐車場付きのマンションは少ない。
さらに、機械式の駐車場だとサイズ的に入らない場合もある。
実は今の車は見た目のイメージよりも幅が大きいんだ。
だから、自走式の地下駐車場があるこのマンションに決めた。

しかし、手入れの大変な古めの高級車ではなく、安い軽自動車を買う予定。
「マンションの近くの駐車場を探さないとダメね」
マンションのそばには駐車場はたくさんある。問題は空きがあるか?
そして作業は佳乃に丸投げする。
佳乃はあたしに言われるまでもなく、スマホを操作してすぐに近くの駐車場を探す。
「空きがありました。すぐ近くです。車庫証明も含めて申し込みました」
佳乃はメイドとしてはスバラシイ。頼んだこと以上の結果を出してくれる。
どうやらこの部屋を契約したときの不動産屋に電話したらしい。
車庫証明もすぐに用意してくれるようだ。

「軽自動車を買おうと思うんだけどどれがいいかしら?」
まあ、軽自動車でなくてもいいんだけど、買い物用というか、なんていうか。
とにかく4人乗れて荷物かそこそこ積めるのが欲しい。
「今の車は3人乗れない。そして買い物の荷物も積めない」
運転していて気分が良いのは認めるけど、あまりにも実用的じゃない。
先日の引っ越しの時にも色々と思い知った。

もともとあたし一人しか乗らない車だったから、荷物は助手席に置けばよかった。
一人なら何ら問題はなかったけど、今は3人だ。そして車は二人乗り。
佳乃はいきなり興味を失ったようだ。いったいどんな車を買うと思ったんだろう。

「みんなで温泉とか行きたいじゃない?」
温泉という単語に反応した佳乃が熱心に車の検討を始める。
普段から一緒にお風呂入ってるんだし、そんなに興奮するほどのもの?
まあ、露天風呂とか気持ちいよね。星空が見えたりすると最高。

「それとか、少し遠いショッピングモールとか、アウトレットとかにも行けるし」
温泉には無反応だった花子が真剣に何かを検索している。
こちらは行ってみたいお店リストを作成しているようだ。

「ところで、なんで軽自動車なんでしょうか?普通のセダンやSUVでも条件は満たしますが?」
小さい車がいい。
「別に軽自動車じゃなくてもいいんだけど、小さいのが良いのよ」
佳乃に何か思うところがあったのか納得している。多分勘違いだと思う。
「車の中でお嬢様と密着できるわけですね!」
ああ、やっぱり。目がハートになって背景がキラキラしてる。
実際にはそんなことはないんだけど、そういう描写がまさにぴったりな雰囲気だ。

「あたしが運転するときに大きい車だと不便なのよ」
平日の昼間はあたし一人だしね。
「お嬢様が運転?私は用無し?」
佳乃が盛大にショックを受けている。

「だって、平日の昼間は佳乃学校じゃない」
メイドとして働いているし、車の免許も持ってはいるが、
佳乃はまだ高校生。しかも高2だ。3回目らしいけど。
「なんでしたら、学校をやめても・・・」
そう言いかけた佳乃にきつく言う。
「高校卒業できなかったらクビね」
佳乃が呆然としている。
え?そんなに成績悪いの?
「メイドはそんなにバカなの?胸にも栄養がいってないのに?」
佳乃が花子を睨むが何も言い返せない。
花子は学年トップレベルの成績だし、胸も佳乃より大きい。
「くぅぅ、天はなぜ山田ごときに二物を与えたのでしょう!」
血の涙を流さんばかりに悔しがっている。

「まあ、勉強でわからないところがあれば見てあげるし、まずは進級しましょう」
佳乃の顔に笑顔が戻った。むしろまたもや目がハートになっている。
「お嬢様と二人っきりで個人指導・・・」
イヤンイヤンとくねってるけど、どこまでの妄想をしてるんだろう。
あたしも大学を卒業して10年経つけど、高校を落第しない程度には教えられるだろう。
ついでにもう一回勉強しなおしてもいいかな?家庭教師を雇うと言ったら暴れそうだし。
勉強の指導はともかく。今は車。

「とにかく1度お店に見に行きましょう!」
近くにあるディーラーに車を見に行く。
歩いて10分ほど。近ければメンテナンスを頼むときも便利だ。

「お嬢様、これはどうです?」
そう言って佳乃が指さすのはなんか四角いバンのような車。
「四角い、かわいくない」
最近多いデザイン。使い勝手はいいかもしれないけど、見た目がいまいち。
「マスターこれの方がかわいい」
そう言って花子が指さすのは丸っこいコンパクトカー。
「なかなか良いじゃない」
花子の頭を撫でる。

それを見て佳乃が対抗意識を燃やす。
「お嬢様、それではこちらは・・・」
残念それは二人しか乗れない。
「それも可愛いんだけど、二人しか乗れないよ」
自然と花子が選んだ車を確認する流れに。
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