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商会にて神官様とばったり 2
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「対価はお花で如何でしょうか? 僕の代わりに神殿にお花を捧げて貰いたいんです。出来れば、明るい色の花を」
全く予想もしていなかった神官様の申し出に対して、私だけじゃなくて周りの人々も首を傾げてしまう。
神殿に花を飾るなんて神官様でもできそうな気がするのに。
そういえば、さっき神殿には近づけないっておっしゃっていたから、もしかして神官様のランクによって神殿でお参り出来るか出来ないかとかかな?
「本当によろしいのですか」
「僕にはしたくても『出来ない難しいこと』なんです」
「わかりました。では、お花を購入して飾らせて貰いますね。ただ、神殿は国が管理しているため、レイに聞いて可能ならという条件付きですが構いませんか?」
「えぇ、勿論です。今の時代の法律やルールを大切にして下さい」
「はい。あっ! そういえば、神官様のお名前をまだ伺っていませんでしたね」
いつも私は神官様と呼んでいたため、彼に名前を伺っていないことに気づき尋ねてみる。
すると、彼は微笑みながら教えてくれた。
「セスと申します」
「セス様。アルツナ薬学辞典をご存知とおっしゃっていましたよね?」
「知っていますよ。以前にもお伝えしたと思いますが、僕は薬草学を主に扱う神官職だったので」
やっぱり私の聞き間違いではなかったようだ。
きっと代々の神官様から口述などで教えて貰っていたのかもしれない。
――メディが喜ぶわ。
「セス様。実はお願いがあるんです。薬草学がとても大好きな子がいるのですが、アルツナ薬学辞典について教えてあげてくれませんか? メディという子なのですが、最年少で薬草師の最高位であるブレアの称号を持っているだけではなく、治癒魔術師の資格も持っているんです。ちゃんとお礼も致します」
「お礼なんて結構ですよ。僕の持っている知識が現代に役立つならば、本望ですので。僕も薬草学をかじっているので同志ですしね。薬草学の発展に繋がるなら嬉しいです」
「ありがとうございます。人が多い場所ではなく、静かな所で教えて頂きたいのですが……」
「わかりました。では、神殿裏の湖はいかがですか? 静かですし誰も来ませんから」
「ですが、あそこは禁足地では?」
前回は知らずに立ち入ってしまったけど、今回はさすがに知っていて禁足地に入ってしまいましたとはいかない。
ちゃんと敬意を払わねばならないのだ。
「大丈夫ですよ。前にお伝えしたと思いますが、バチなんて当たりません。サズナ神なんていないのですから。むしろ、足を踏み入れないと勿体ないですよ。『温泉』もありますし」
「温泉があるんですか」
「えぇ、昔は神官たち専用の温泉でした。今は誰も使っていません。僕はあまり好みの湯ではなかったんですね。少し口に入るとしょっぱくて」
綺麗な湖もある上に温泉なんてかなりの高ポイントだと頭に過ぎった。
これは後々使えるかもしれない。神殿の裏は禁足地となっているが、是非調べてみたい。
――神官様がバチ当たらないって言っているから大丈夫かな。でも、流石に躊躇っちゃうよね。
「神殿裏は自由に行来しても構いませんが、神殿内部の立ち入りはしないでくださいね。今の時代に伝わっているかもしれませんが、迷って出られなくなってしまいますので」
「聞いたことがあります。道が変わってしまうっていう伝承があるらしいですね。そのため、立ち入り禁止用のロープがはられていますよ」
「道が変わる? 現代にはそういう言い伝えがあるんですね。本当は迷路のように複雑なんです。ですから、慣れている信者以外が立ち入ると、方向感覚を失ってしまうんですよ」
「へー」
「もし、間違えて神殿に入ってしまったら出られなくなります。確実に。ですから、入らないで下さいね。ティアナ様、入りそうだから。ウサギ追いかけて神殿裏まで来てしまいましたし」
セス様は声のトーンを落とすと、真顔で言った。
「もし万が一神殿内に入ってしまったら、『グローリィ、出口を教えて』と大声で助けを求めて下さい。もしかしたら、『彼女』が助けてくれるかもしれません」
彼女という説明から、グローリィというのは女性の名前だと推測できる。
もしかして、妖精や女神の名前なのだろうか。
祖父母が暮らしている東大陸では妖精が信じられているため、似たようなおまじないがあったのを思い出す。
悪い夢を見なくさせてくれる光の妖精・ルミエールとか。
「ありがとうございます。もし神殿に入っちゃったら、そのおまじない試してみますね」
「おまじないですか?」
「えっ? おまじないじゃないんですか」
私が尋ねれば、神官様が曖昧に微笑んだ。
全く予想もしていなかった神官様の申し出に対して、私だけじゃなくて周りの人々も首を傾げてしまう。
神殿に花を飾るなんて神官様でもできそうな気がするのに。
そういえば、さっき神殿には近づけないっておっしゃっていたから、もしかして神官様のランクによって神殿でお参り出来るか出来ないかとかかな?
「本当によろしいのですか」
「僕にはしたくても『出来ない難しいこと』なんです」
「わかりました。では、お花を購入して飾らせて貰いますね。ただ、神殿は国が管理しているため、レイに聞いて可能ならという条件付きですが構いませんか?」
「えぇ、勿論です。今の時代の法律やルールを大切にして下さい」
「はい。あっ! そういえば、神官様のお名前をまだ伺っていませんでしたね」
いつも私は神官様と呼んでいたため、彼に名前を伺っていないことに気づき尋ねてみる。
すると、彼は微笑みながら教えてくれた。
「セスと申します」
「セス様。アルツナ薬学辞典をご存知とおっしゃっていましたよね?」
「知っていますよ。以前にもお伝えしたと思いますが、僕は薬草学を主に扱う神官職だったので」
やっぱり私の聞き間違いではなかったようだ。
きっと代々の神官様から口述などで教えて貰っていたのかもしれない。
――メディが喜ぶわ。
「セス様。実はお願いがあるんです。薬草学がとても大好きな子がいるのですが、アルツナ薬学辞典について教えてあげてくれませんか? メディという子なのですが、最年少で薬草師の最高位であるブレアの称号を持っているだけではなく、治癒魔術師の資格も持っているんです。ちゃんとお礼も致します」
「お礼なんて結構ですよ。僕の持っている知識が現代に役立つならば、本望ですので。僕も薬草学をかじっているので同志ですしね。薬草学の発展に繋がるなら嬉しいです」
「ありがとうございます。人が多い場所ではなく、静かな所で教えて頂きたいのですが……」
「わかりました。では、神殿裏の湖はいかがですか? 静かですし誰も来ませんから」
「ですが、あそこは禁足地では?」
前回は知らずに立ち入ってしまったけど、今回はさすがに知っていて禁足地に入ってしまいましたとはいかない。
ちゃんと敬意を払わねばならないのだ。
「大丈夫ですよ。前にお伝えしたと思いますが、バチなんて当たりません。サズナ神なんていないのですから。むしろ、足を踏み入れないと勿体ないですよ。『温泉』もありますし」
「温泉があるんですか」
「えぇ、昔は神官たち専用の温泉でした。今は誰も使っていません。僕はあまり好みの湯ではなかったんですね。少し口に入るとしょっぱくて」
綺麗な湖もある上に温泉なんてかなりの高ポイントだと頭に過ぎった。
これは後々使えるかもしれない。神殿の裏は禁足地となっているが、是非調べてみたい。
――神官様がバチ当たらないって言っているから大丈夫かな。でも、流石に躊躇っちゃうよね。
「神殿裏は自由に行来しても構いませんが、神殿内部の立ち入りはしないでくださいね。今の時代に伝わっているかもしれませんが、迷って出られなくなってしまいますので」
「聞いたことがあります。道が変わってしまうっていう伝承があるらしいですね。そのため、立ち入り禁止用のロープがはられていますよ」
「道が変わる? 現代にはそういう言い伝えがあるんですね。本当は迷路のように複雑なんです。ですから、慣れている信者以外が立ち入ると、方向感覚を失ってしまうんですよ」
「へー」
「もし、間違えて神殿に入ってしまったら出られなくなります。確実に。ですから、入らないで下さいね。ティアナ様、入りそうだから。ウサギ追いかけて神殿裏まで来てしまいましたし」
セス様は声のトーンを落とすと、真顔で言った。
「もし万が一神殿内に入ってしまったら、『グローリィ、出口を教えて』と大声で助けを求めて下さい。もしかしたら、『彼女』が助けてくれるかもしれません」
彼女という説明から、グローリィというのは女性の名前だと推測できる。
もしかして、妖精や女神の名前なのだろうか。
祖父母が暮らしている東大陸では妖精が信じられているため、似たようなおまじないがあったのを思い出す。
悪い夢を見なくさせてくれる光の妖精・ルミエールとか。
「ありがとうございます。もし神殿に入っちゃったら、そのおまじない試してみますね」
「おまじないですか?」
「えっ? おまじないじゃないんですか」
私が尋ねれば、神官様が曖昧に微笑んだ。
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