追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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エスカ様ですか…?1

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 ライは患者さん達が歩けるようになるまでエタセルに滞在してくれることになり、そのあいだに私達が逃走中の動物を捜索。
 騎士団や村人達との山狩りをした結果、エタセルでは東大陸固有動物を数匹保護して無事送り届けることに成功した。

 お兄様が他国と共に調査したのだが、どうやら密猟グループの馬車が事故にあい脱走した動物だったようだ。


 ライはファルマから医療チームを派遣してくれ、彼らとバトンタッチをするような形で、ライ達はファルマへ帰国することになった。
 エタセル城の前にはライ達の荷物を乗せた馬車が停車していて、その前には私を始めとした彼らを見送る人達の姿が。
 お父様とレイガルド様はエルド様と一緒にお話をしている。


「ライ、色々ありがとう!」
 私は目の前に立っているライへとお礼を伝えた。


「医者として当然のことをしたまでだよ。気にしないでくれ」
「ライもお医者さんなんだなぁって思ったよ。かっこよかった」
「かっこよかった……?」
 ライは一瞬目を大きく見開くと、顔を緩ませ腕を伸ばして私を抱きしめる。
 急に抱きしめられたため、「うわっ」という間の抜けた声が広がった。


「ねぇ、ティア。このまま一緒にファルマに行こう。ティアが王妃になってくれるなら、大歓迎なんだけどなぁ。ティアが持っている王妃運、ファルマの王妃に使わない?」
「そ、それは……」
 私は村でライに告白されたことや彼に抱きしめられている今の状況などによって、お風呂にでも入っているかのような状態に。

 体温がどんどん上がっていく。
 鏡を見ていないからわからないけれども、きっと私は顔が真っ赤だろう。

 全く想像もしていなかったライの告白だったため、私は少し考える時間が欲しかったのでまだ返事をしていない。
 ライのことは好きだけれども、今までの生活では恋愛よりもエタセル! って生活だったため、恋愛は全く考えてもいなかったから。

 予想もしていなかったライのアピールに免疫がなかった私は、鼓動ってこんなに早くなるんだっけ? と戸惑うくらいのスピードになっている。


「真っ赤になったティアも可愛いな。新鮮で」
「なっ……」
 なにを急に!? と声を出そうとすれば腰に誰かの腕が伸び、そのままグッと引っ張られてしまう。


 背中に当たる堅い感触。
 腰に回されて腕は太くてたくましい。
 顔を上げて誰だろうと確認すれば、険しい顔をしたレイの姿が。

 どうやら私はレイに後ろから引っ張られるようにして、引き離されてしまったようだ。

 ライとレイはお互い瞳同士を交わらせているんだけど、かなり場が張りつめているというか、真冬かな? と震えそうなくらいに寒い。

 ――前にもパーティーでこんな雰囲気になったことがあったような。

 どちらかが視線を外すまでこのままの状態なのだろうかと思いかけたが、エルド様の声によってライが視線を外して終止符が打たれた。


「残念ながらそろそろお時間です。ライナス様」
「……そうか。名残り惜しいな」
「またパーティーで会えますよ。ティアナ様に会えるのを楽しみにしつつ、山積みの執務に励みましょう」
「山積み」
 ライは苦笑いを浮かべている。


「レイもいつまでそうしているんだ。そいつをリストに返せ」
「うわっ」
 コルタの声とともに私の腕が捕まれ、お兄様へと押しつけられた。
 気のせいだろうか。コルタの機嫌が悪いような気がするのは。
 コルタはちらりとメディを一瞥する。

「ライナス殿、この度はご尽力頂きありがとうございました」
 レイが深々と頭を下げるとライが首を左右に振った。


「いや、人命第一ですので」
「メディも手を貸してくれて助かったよ」
 レイがメディの方を見れば、彼女は慌てて俯く。
 ぎゅっと添えていた両手を握りしめ、身を縮ませている。


「メディ、またな」
 ライはメディの元へと向かうと、彼女を抱き締めた。


「お兄様、道中お気をつけて」
「あぁ」
 メディは腕を伸ばすとライの背に回す。
 麗しの兄妹愛だ。








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