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勝手に召喚っ!?1
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突然響き渡って来た声は、私が聞いた事がない声だった。
反射的に振り返れば、そこには見ず知らずの青年の姿が。
私やお兄様のようなベージュ色系統の髪を持ち、切れ長の持つ彼は容姿端麗過ぎるため隙がなく人工的な雰囲気がする。
紫色の唇で弧を描くと目じりを下げた。
「ティア! やっと呼んでくれたね」
「……どちら様でしょうか?」
最初は知り合いなのかなと思ったが、頭に引っかかる人物が全くいないため、知り合いではない確率の方が高い。
「僕だよ、僕。君の先祖のフーザー」
「はいっ!?」
フーザーとは精霊王の守護師に数えられている私の祖先。
西大陸の伯爵家エントランスには肖像画が飾られているため、数回見たことがあるがおぼろげ。その上、あまりにも古すぎる系統のため、まさか会えるとは思わず全く名前が出て来なかった。
「神官に聞いてない? 僕、軽く説明したんだけど。ま、いいや。やっと僕を頼ってくれたね。ティアとリストが生まれた時にこっそり見に行ったから一度会っているんだよ。二人共可愛かったなぁ。生誕を祝して加護を与えたんだ」
「初耳な話ばかりなんですが……」
「僕の子孫達は、皆なんでも自分達でやっちゃうんだもん。僕のことを頼らずにさ。絶対、僕のこと絶対に忘れているよね」
頬を膨らませるフーザー様を見て、私は心臓がどきっとしてしまう。
『正解』だ。
私達はフーザー様の子孫というのを他人に言われて、「あぁ、そういえば」と思い出すくらい。
そもそも、私は東大陸出身なので精霊信仰が薄いのもある。
「さぁ、ティアは困っているから僕を呼んだんだよね? 何を解決して欲しいの? なんでも叶えてあげる」
「えっと……料理を……」
私はキッチン台の方へと視線を向ける。
「わー、美味しそうな焼き魚だね。ポテトも付いているじゃん。ポテトおいしそう」
「スープと焼き魚って別々食べるのか、それとも、これから一緒に調理するのかがわからないんです。どちらですかね?」
「え、知らない。僕、そもそも料理しないもん。精霊界では料理長や使用人にまかせっきりだし」
「……」
精霊と人間の違いではなく、料理をするかしないかの根本的な問題だった。
「安心して! 解決してあげるよ。ティアがせっかく僕を頼ってくれたんだ。作らせれば良い」
フーザー様はそういうと、詠唱を奏で始める。
深い深緑を思わせる発光体が床へと現れ、光をあちらこちらへと拡散させたため、私は眩しくて瞳を閉じた。
やがて瞼の裏で点滅が収まりかけたのでゆっくりと瞳を開けて、私はそこに立っていた人物を見て目を極限まで見開いてしまう。
「「は?」」
視線が交わった相手も同じ反応をした。
私の前に立っているのは、ライ。
しかも、彼は上半身裸のため鍛え上げられた肉体を晒している。下半身にはバスタオルを巻いているため完全に全裸ではない。
髪は濡れているため、湯上りなのかも。
「ち、ちょっと待って。なんでティアがいるんだ!?」
「ごめんっ」
私はライの姿を見ないようにすぐさま彼に背を向けた。
「あのさ、君。料理出来るよね。キッチン台のってそのまま食べていいの? それともスープにするの?」
「は? スープって……あぁ、これか。グラザというアクオ地方の郷土料理だな。魚や野菜などを焼いて香ばしくしたものをスープに入れて味を調えるんだ」
「じゃあ、やって。ティアが作り方わからなくて困っているの」
「ティアのためにやるのは一向に構わないけど、まず貴方は誰でしょうか?」
「僕? 僕はティアが生まれた時からずっと見守っている男かな」
「わっ」
急に抱き付かれたため、私はびっくりしてしまって声が上がってしまう。
すると、ライから不機嫌そうな声が届く。
反射的に振り返れば、そこには見ず知らずの青年の姿が。
私やお兄様のようなベージュ色系統の髪を持ち、切れ長の持つ彼は容姿端麗過ぎるため隙がなく人工的な雰囲気がする。
紫色の唇で弧を描くと目じりを下げた。
「ティア! やっと呼んでくれたね」
「……どちら様でしょうか?」
最初は知り合いなのかなと思ったが、頭に引っかかる人物が全くいないため、知り合いではない確率の方が高い。
「僕だよ、僕。君の先祖のフーザー」
「はいっ!?」
フーザーとは精霊王の守護師に数えられている私の祖先。
西大陸の伯爵家エントランスには肖像画が飾られているため、数回見たことがあるがおぼろげ。その上、あまりにも古すぎる系統のため、まさか会えるとは思わず全く名前が出て来なかった。
「神官に聞いてない? 僕、軽く説明したんだけど。ま、いいや。やっと僕を頼ってくれたね。ティアとリストが生まれた時にこっそり見に行ったから一度会っているんだよ。二人共可愛かったなぁ。生誕を祝して加護を与えたんだ」
「初耳な話ばかりなんですが……」
「僕の子孫達は、皆なんでも自分達でやっちゃうんだもん。僕のことを頼らずにさ。絶対、僕のこと絶対に忘れているよね」
頬を膨らませるフーザー様を見て、私は心臓がどきっとしてしまう。
『正解』だ。
私達はフーザー様の子孫というのを他人に言われて、「あぁ、そういえば」と思い出すくらい。
そもそも、私は東大陸出身なので精霊信仰が薄いのもある。
「さぁ、ティアは困っているから僕を呼んだんだよね? 何を解決して欲しいの? なんでも叶えてあげる」
「えっと……料理を……」
私はキッチン台の方へと視線を向ける。
「わー、美味しそうな焼き魚だね。ポテトも付いているじゃん。ポテトおいしそう」
「スープと焼き魚って別々食べるのか、それとも、これから一緒に調理するのかがわからないんです。どちらですかね?」
「え、知らない。僕、そもそも料理しないもん。精霊界では料理長や使用人にまかせっきりだし」
「……」
精霊と人間の違いではなく、料理をするかしないかの根本的な問題だった。
「安心して! 解決してあげるよ。ティアがせっかく僕を頼ってくれたんだ。作らせれば良い」
フーザー様はそういうと、詠唱を奏で始める。
深い深緑を思わせる発光体が床へと現れ、光をあちらこちらへと拡散させたため、私は眩しくて瞳を閉じた。
やがて瞼の裏で点滅が収まりかけたのでゆっくりと瞳を開けて、私はそこに立っていた人物を見て目を極限まで見開いてしまう。
「「は?」」
視線が交わった相手も同じ反応をした。
私の前に立っているのは、ライ。
しかも、彼は上半身裸のため鍛え上げられた肉体を晒している。下半身にはバスタオルを巻いているため完全に全裸ではない。
髪は濡れているため、湯上りなのかも。
「ち、ちょっと待って。なんでティアがいるんだ!?」
「ごめんっ」
私はライの姿を見ないようにすぐさま彼に背を向けた。
「あのさ、君。料理出来るよね。キッチン台のってそのまま食べていいの? それともスープにするの?」
「は? スープって……あぁ、これか。グラザというアクオ地方の郷土料理だな。魚や野菜などを焼いて香ばしくしたものをスープに入れて味を調えるんだ」
「じゃあ、やって。ティアが作り方わからなくて困っているの」
「ティアのためにやるのは一向に構わないけど、まず貴方は誰でしょうか?」
「僕? 僕はティアが生まれた時からずっと見守っている男かな」
「わっ」
急に抱き付かれたため、私はびっくりしてしまって声が上がってしまう。
すると、ライから不機嫌そうな声が届く。
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