追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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勝手に召喚っ!?2

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「ティアから離れろ」
「どうして? ティアは僕の可愛いティアだもん。それより、料理早くして。なんのために君を呼んだと思っているの?」
「ごめん、ライ。本当にごめん! この方はフーザー様。私のご先祖で精霊」
「先祖って、あの精霊王の守護師か?」
「君でも知っているんだね。そうだよ。僕がフーザー」
「どうして人間界に……」
「さっきも言ったけど、ティアがスープの件で困っていて僕を呼んだの。僕は料理が出来ないから、君を召喚した。というかさ、どうしてタオル一枚姿なんだい? ほぼ全裸じゃないか。露出狂?」
「外出先で雨に降られてずぶ濡れになり、風呂で温まり上がったばかりなんですよ。髪を拭こうと思ったら、急に緑色の光に包まれて気づいたらここにいたんです」
「ごめん、ライ」
 突然勝手に転移魔法で連れて来られたのに、なぜほぼ全裸なんだ。露出狂なのかと言われたら、ライだって迷惑極まりないだろう。

 しかも、命にかかわる緊急事態などではなく、まさかの料理のやり方。

「いや、いいけどさ。出来れば、服を着ている時にして欲しい」
「すぐに戻すよ。調理方法さえ聞け……」
 フーザー様の声がバンと扉を乱暴に開ける音と、「ティア、お水と薬を!」というメディの声で遮られてしまう。


 尋常ではない様子に、私達は三人キッチンから飛び出して玄関の方へ。
 すると、コルタにおんぶをされているお兄様の姿が。


「「え」」
 コルタとメディは私達の方を見て目をまん丸くして口をぽかんと開けている。


「ごめんね、ティア。ちょっとまた胃が痛く……え」
 お兄様も視線を向けて絶句。


「しゅ、修羅場……」
 お兄様はそう弱々しく呟くと、ガクッと気を失ってしまう。


「気絶しちゃった。絶対、リスト僕のことを間男と勘違いしているよ」
「お、おっ、お兄様-っ!」
 私が駆けつければ、「リストをゆっくりソファに」というライの冷静な声が響き渡った。











「……まさか、ご先祖のフーザー様だったとは。知らずに無礼を」
 意識を取り戻したお兄様は、ブランケットに包まれながらハーブティーを飲んでいる。
 ソファの背もたれにはふかふかのクッションが置かれ、お兄様が身を預けていた。


 ハーブティーはさっきメディが作ってくれたもので、胃腸の不調に効果があるとされているペパーミント、オレンジピールなどがブランドされ、お兄様の大好きな蜂蜜と牛乳で作られたミルクティーだ。
 コルタとメディはお兄様の左右に座り、不安そうにお兄様を見ている。


「驚かせてごめんね、リスト。誤解の原因は、ファルマの王が半裸だったせいだよ」
「風呂上りだったもので。出来れば今度転移魔法で召喚する時は、こちらの状況を顧みて頂きたいのですが」
 私の隣に座っているライは、ため息交じりで告げる。
 ちなみにライは再び転移魔法でファルマに戻して貰って着替えを済ませてあり、お兄様の看護をした後に料理も作ってくれた。


「ごめんね、ライ」
「ティアのせいじゃないよ」
「そうだよ、ティアは気にしなくても良いって」
「いや、あの……」
 さすがに勝手に召喚するのは大問題だとは思うのですが。


「ねぇ、リスト。当事者じゃないのに、そんなに気にしたら駄目だよ。胃が持たなくなるし。なんなら、暫く精霊界に来る? 自然豊かなで良い所なんだ。色々連れて行ってあげるよ」
「いえ、仕事がありますので。お気持ちだけ頂きます。ありがとうございます」
「あー、もうどうしよう。僕の子孫が可愛い!」
 目尻を下げてハートマークをまき散らしているフーザー様を目にして、私は伝説では死の精霊と称されていたはずなんだけどなぁと思っていた。
 全くイメージと剥離している。


「あぁ、そうだ。会えたのならば言っておくよ」
 フーザー様はライの方へと顔を向けると、微笑んだ。


「僕の可愛いティアを傷つけるようならば、絶対に許さないから」
「安心して下さい。俺もティアのことは可愛いと思っています。ティアは大切にすると約束しますよ」
「それを聞いて安心したよ。あっ、でも君が選ばれるとは限らないんだよね!」
「そうですね。選ぶのはティアです。俺はティアに選んで貰えるように頑張るだけですから」
 ライはそう言うと、私の方へ腕を伸ばして膝の上に乗せていた手へ触れたため、どきっと鼓動が高く跳ねてしまう。
 私は顔に血液が集中してしまい、俯いてしまった。








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