社会人２●年 アラフォーの対処法

①寝坊の遅刻の対処法

　始業のチャイムが鳴る数分前。
　朝のチームミーティングに備えて今日の予定を確認していると、外線の電話を受けていた事務の人が、やや硬い顔で話しかけてきた。
　「藍川（仮名）さん、ちょっといいですか？」
　「どーしました？」
　「実はクマモトさん（仮名　新入社員）と電話がつながってて、『今起きたんですけど、どうしたらいいですかっ』ていうんですが……」
　二人で見合わせる顔。
　その目と目が語り合っていた。

　メンンドクセーっ　（心の声なので、口調の悪さはご勘弁）

〔状況まとめ〕
　・繰り返すと、始業まであと三分。どんな奇跡が起こってもクマモトさん（仮名）は遅刻。
　・部長は取引先に直行で不在。
　・課長は部長の代わりに、朝の管理職会議に出席してて『今は』不在。
　・クマモトさん（仮名）と同じチームのコが、『あれ？来るの遅いな？』と周りを見渡し始めている。

　さっと見回して、周囲に人がいないことを確認して、私と事務の人とで小声会議。
　私：どーして素直に『寝坊』っていっちゃうんですかねぇ。
　事務の人（以下事）：そうなんですよー。そういわれちゃうとこっちも困るし。
　私：ですよねー。でも、きっと、『体調悪くて起き上がれなかった』んだと私は思うんですけど。
　事：ですよねー。どうしてそういってくれないんですかねー。

　この時点で私たち二人の選択肢。
　その①　新入社員としての素直さのまま、正直に『寝坊した』と会議から戻ってくる課長に報告。
　その②　『体調悪いんだよね？　ね？』と社会人としての処世術を、電話越しに強めに教える。

　その①の場合、クマモトさん（仮名）をかばいきれない自分（たち）年長者社会人としての、なにかがちょっと申し訳ない気持ちになる。しかし『会社人』としてはまっとうな選択。
　その②の場合、クマモトさん（仮名）と３人が共犯者になる。この優しいウソを守り続けられるほどの絆が私たち三人にあるだろうかー－－ない。

　と、いうことで、
　その③　面倒なことは上司に丸投げ。
　全く正しい社会人の在り方を実践することになった。　

　事務の人が会議から戻ってきた課長に電話を取り次いだ。
　気持ち的にはマギー審司（知らない若人は検索検索！）並みに耳朶を大きくして聞いていると、
「ごまかさないで、正直ベースでいこう。俺もやったことあるし」
　という課長の言葉が聞こえた。
　ー－－クマモトさん（仮名）の運命が決まった。

　結果としては、波風立たずに事は収まった。
　課長は正しい『会社人』として、不在の部長のさらに上の統括の部長に状況を報告しに行った。
　（いわなきゃ気づかないだろうに）
　統括の部長は課長を連れて、さらに上司のフロア担当部長に状況を報告しに行った。
　（さらにこっちも、いわなきゃ気づかなかったろうに）
　新人クマモトさん（仮名）も午前中に出社し、営業部署のためフレックス扱い。
　課長の指示で統括部長、フロア部長に謝りに行って、出先から戻ってきた部長にも報告。
　どの部長も『しょうがないなぁ』と笑っていたけれど、油断してはいけないよ、クマモトさん（仮）。
　上司というものは、こっちが忘れたころ、半期ごとの評価の時に思い出すからね。

　周囲で聞き耳を立てている、新人以外の人々（特に若手）よ。
　君たちが同じ状況になったとき、同じことをしても笑って許されるなんてないことはわかっているね。
　『無礼講』なんて、徳川幕府の埋蔵金（知らない若人は検索検索！）並みのファンタジーなんだから。　

　そしてもちろん、社会人２●年の私が始業時間に間に合わないときは、
『スミマセン。朝起きたら体調が悪くて……』
　の一択である。