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ハーマ

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Ω隊補佐官とかつての英雄

英雄と補佐官の出会い

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煌(こう)視点

煌「総員敬礼!」


αによる試験中での乱入によってΩ隊は3人もの死者を出され、負傷者も全員軍には残れない傷を負い、その日は死者の葬儀の日だった


Ω隊員「…………」

煌「…………」

β隊隊長「………申し訳ない  既に颯斗様が………」


煌達は葬儀の後にβ隊の隊長が煌達を呼び出し、試験中に乱入したα達が颯斗に粛清されたと伝えられる


煌「………葬儀が始まったのは2時間前  その時はまだαは捕まっていなかった  捕まったとしても1時間前だ  どうやって粛清を?」


煌は側近のみを連れて食堂に来て、その場にいた彪斗(あやと)にそう聞く


彪斗「颯斗なら捕まえる時間を含めても40分で可能だ」

煌「………何故αである「英雄」がαを粛清する?」

彪斗「悪いが俺の口からは言えんぞ補佐官」

流石に直属の部下では無理か


颯斗の部下の内5人はΩで煌の部隊に配属になっている


颯葉(そうは)「颯斗も今日は調子が良くない  Ω隊も今日から暫く休むよう言われているだろ  休め」

煌「だそうだ  お前達は部屋で休め  俺はやることがある」

銀糸(ぎんじ)「補佐官」

煌「やりたいことがある」


煌はそう言って銀糸の制止も聞かずに歩いていく


煌「…………」

もう何年前になるかな………お前が死んだのは


煌が向かったのは軍から近い墓場だった………最愛の弟の眠る墓の前で煌は途中で買った花束を置いて、静かに膝をつき手を合わせる


煌「今日は隊員の葬式だったんだ  3人も死者が出た………負傷者も全員軍には残れない重傷を負った  αの乱入は前にもあったがその時は誰も死ななかった………補佐官になってからだいぶ時間が経ったが………お前が死んだ日のことは今でもはっきり覚えてる」

俺が来た時にはもうお前はお前ではなくなっていた………酷い有様だった………寧ろあの時呼吸をしていた方が奇跡だった………


煌の弟  煌雅(こうが)は煌が補佐官の称号を得る前日に死んだ……αである煌雅はαによって兄の晴れ舞台を見ることなく………命を落とした………その次の日に煌は補佐官の称号を得たが………煌の顔は死んでおり笑顔はなかった………そしてその日を境に煌は笑わなくなった


琴華(ことは)「補佐官?」


ふと聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、そこには同じΩ部隊で颯斗の部下である琴華が立っていた


煌「琴華  墓参りか?」

琴華「うん  今日両親の命日」

煌「そうか」

琴華は確か一人息子だったんだっけ………

琴華「弟さんの墓参り?」

煌「ああ  今日なんだ」

琴華「(あの日を境に煌は一切笑みを見せなくなった………弟想いだったから余計に弟の死を今でも受け入れられてない)」


琴華は煌と同期で煌飲みに何が起きたのかも知っている


煌「それじゃあ俺はもう行くから  ちゃんと休めよ」

琴華「煌はそれ人のこと言えないだろ………」

煌「そうかもな」


琴華の言葉に短い一言で返した煌は瞬間移動で消える


煌「…………」

最高司令官「………君はいつも無表情だな」

煌「理由はご存知かと」

最高司令官「即答………」


煌は郡に戻って直ぐに最高司令官に呼び出され、応接室に来ていた


煌「ところで私を呼んだ理由をお聞きしたいのですが」

最高司令官「颯斗は分かるかい?」

煌「第8時世界大戦時の英雄  ですよね?」

最高司令官「彼はαでありながらαを嫌っている  その理由は閣下なら知っているが………私達は知らないんだ」

それを言われてどうしろと………

最高司令官「明日の午前8時にトレーニングルームに来るように」


意味不明な事を言われた上にそれを言われて煌も呆れたが、何かしらの意図があると察して返事をして退室


琴華「煌」


応接室を出て食堂を通りオフィスに行く途中で、煌は焦り模様の琴華に声をかけられる


煌「琴華  どうした?」

琴華「颯葉知らないか?」

煌「食堂にいたぞ  もし居なかったら部屋じゃないか?」

琴華「ありがとう」


たまたま食堂を通った時に颯葉を目撃していた


龍「補佐官」

煌「…………」

龍「少し時間あるか?」

煌「ありますけど………」

珍しいな………「英雄」の部下でも1番期間の長い龍さんから声掛けてくるの


実は煌は「補佐官」と言う役職の為にαとも面識があり、颯斗の部下とも面識がある


龍「これ  お前にやるよ」

煌「これは?」

龍「α狩りのブラックリストの入ってるUSBだ  古い仲間に無理を言って1つ貰った  過去のヤツも今のヤツの経歴も見れる」

えっ?

煌「何故これを俺に?」

龍「………お前  煌雅の兄なんだろ?」

煌「そう………ですけど………」

龍「煌雅とはパートナーだった  随分と昔だが………あいつには借りがある」

煌「…………」

煌雅が言ってた「昔のパートナー」って龍さん………?

龍也「龍  大事な話の所悪い  颯斗から今から来いと命令だ」

煌「…………」

何か嫌な予感がする


突然現れた凄い複雑な表情をしている龍也の言葉に龍は、顔面蒼白になり何やら渡されたUSBがヤバいやつだと知る


龍也「何やったんだよお前  颯斗キレてたぞ」

龍「後で話す  それじゃあ煌  次の作戦の時頼む」


龍はそう言って駆け足で去っていき龍也もため息


龍也「そのUSB  絶対になくしたり落とすなよ」


そして龍也もそう言って駆け足で去っていく


煌「…………」

かなり危険なモノを渡されたってことか………そもそもこれ誰かの所有物だったんじゃ………


第一に何故龍はα狩りのブラックリストを持っている者を、知っていてそれを貰えるのか………


煌「…………」

考えてもしょうがないか………貰っちゃったんだし


貰ってしまったものは返す気にもならずオフィスに向かう


~その頃  龍~

颯斗「…………」

龍「っ………!!!!!」


煌がオフィスに戻った頃  龍は颯斗に今も殺されそうになっていた


琴華「ヤバくない?アレ………」

零「極秘情報だからな………」

龍也「…………」


「ギチギチギチ」と音が聞こえるぐらい腕で首を絞められ、必死に顔の真横のナイフをせき止めている龍に、双子である龍也は静かに先を見据える


颯斗「情報漏洩だって分かってんのか」


殺気全開で言う颯斗の言葉に途切れ途切れで龍は答える


龍「わか………てる………」

颯斗「誰に渡した」

龍「補佐………」

颯斗「補佐?Ω隊の補佐官のことか?」


「補佐」と聞いた瞬間颯斗の力が緩み、一気に酸素が肺に行った龍はむせこみながらも頷く


颯斗「補佐官………補佐官ねぇ………」

龍「ゲホッゲホゲホ!!ゲホゲホゲホゲホゲホゲホ!!」

颯斗「1ヶ月自宅謹慎にその間給料なしで零の接触も禁ずる  今回の件は大目に見てやる」


颯斗は最後に龍の頬に少し深い切り傷を作る形で、「ガァン!」と言う物凄い音を響かせて、持っていたナイフを壁に突き刺す


颯斗「次やったら命はないと思えよ  龍」

龍「………分かった」


勿論そんなことが起きていたのは煌が知るはずもない


~煌~

煌「結構ブラックリスト入りしてるやつ多いな………」

その中でも写真がないやつはもう死んでるのか………

煌「………この名前………」

なんで「英雄」の名前が………

煌「…………」

もう1世紀も前にブラックリストからは削除されてるのか………でもなんで「英雄」の名前があったんだ………?


オフィスのパソコンでブラックリストを見ている最中、リストの中に颯斗の名前があって驚いたが、既に1世紀も前にブラックリストからは削除されていた


煌「…………」

英雄がブラックリスト入りするって何をやったんだ………


煌は颯斗のことをよく知らないのて「英雄」と言っているが、龍や琴華には「名前呼びの方がいい」と言われている


煌「………頭痛いな………」

そろそろ本格的に休みを取らないと駄目だな………ココ最近働きずくめだったし………


煌は頭痛持ちで疲れやストレスで頭痛を起こすので、パソコンを見るのをやめてUSBを抜き自室へ戻る


『護りたいのなら力をつけろ  そして俺のようにはなるな  お前らしい力を得ろ』

昔誰かに言われた言葉………αに狙われて逃げていた最中に助けられて………シルバーの輝く髪に琥珀色の綺麗な瞳を持つ人………

『俺は壊していくだけだ  人生そのものを  お前は護る為に力が欲しいなら軍を紹介してやる』

そう言われて紹介されたのが今の軍だけど………誰だったんだろう………


実は煌  現在所属している軍は自分を助けてくれた人からの紹介


煌「…………」

そう言えば琴華が言ってたけど「英雄」は、本来の姿を失っていて今は「暴走状態」なんだっけ


つまり本来の姿は今はなく別の姿になっているということ


煌「………寝よ………」

風呂に入ったし………飯はいいや


風呂上がりにちゃんと髪を乾かして、いつでも動ける服装をしてからベッドに潜る


煌「明日って朝と夜どっちだ…………?」


トレーニングルームに来る時間が朝なのか夜なのか、それを聞くのを忘れたのを思い出しながらも目を閉じた………


~翌日~

煌「…………」

一応来たけど………嫌な予感がする………


朝  一応朝から来た煌は嫌な予感を感じながらも、トレーニングルームの中に入る………すると嫌な予感が的中し中はαしかいない


煌「…………」

一度入ると暗号でロックされるから出られないんだよな………少なくとも8時間は出られないしどうしよう………


周りからジロジロ見られている中、煌は人目につかなそうな場所で座る



颯斗「お前暇か?」

煌「え?あっはい」

あれ?この人って………

颯斗「相手がいなくて困っていたんだ  相手を頼む」

煌「俺なんかで良ければ………」

この人って「英雄」だよな………


時間の間違えによって入ってしまったトレーニングルームで、煌と颯斗は出会い、たまたま暇をしていた颯斗の相手を煌がすることになった………











颯斗が昔自分を助けてくれた人だとは知らずに………そして颯斗も昔助けたΩの少年が煌であると知らずに………
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