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第1章 キライ

4 どうぞ、どうぞ

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良いコンシェルジュだった?
どの口が言うのよっ!
あの変態、ドスケベ、下半身男め!

「青葉チーフっ!」

私はすごい顔で青葉チーフを引き止める。

「なんだ?
随分気合いが入ってるな。

あぁ、そうだ!」

青葉チーフは思い出したように言う。

「え?
何ですか?」

「他のスイートルームの担当からは外せ、という天羽オーナーの辞令が下りたぞ。
琴宮、お前はオープンロイヤルスイートルームの天羽オーナーの担当に全力を尽くしてくれ。
いやぁ、やっぱり琴宮に任せておくと安心だな!
チーフとしては鼻が高いよ!

じゃ、頑張ってくれ!」

そう言って青葉チーフは行ってしまった。

言えない…
天羽オーナーにセクハラされました、なんて…

すると、コンシェルジュルームの電話が鳴った。

表示はオープンロイヤルスイートからだ。

居留守する私。

いや、そんな事したって根本の解決にはならないんだけど…!
でも、出たくない!

「あれれー?
琴宮せんぱーい!
電話鳴ってますよ?」

後輩のコンシェルジュ来栖由奈くるすゆながやって来た。

「あ、あぁ、ちょっと今忙しくって…」

私は急いでファイルをめくった。

「はぁ…?」

来栖は不思議そうな顔をした。
それはそうだ。
コンシェルジュはどんな時もお客様のご要望最優先。
忙しいから電話に出ないなど、きっと意味不明だろう。

「せんぱぁい!
聞きましたよぉ!
ロイヤル担当になったんでしょー?
良いなぁ。
由奈もイケメン天羽オーナーの担当したーい!」

どうぞ、どうぞ、いつでも譲りますよ?

心の中でそう思うが、そう言う訳にはいかないので…

「来栖、今日のお客様のスケジュール確認したの?
今のうちにやっておかないと間に合わないわよ?
さぁ、仕事仕事!」

そう言って自分にも言い聞かせる。

「はぁーい。」

来栖が席に着くのを確認して、私は再度天羽オーナーについての個人情報が載ったファイルをめくった。

天羽萬里あもうばんり、ホテル王として世界に名を轟かせ始めた、若きホープ。
33歳独身。
天羽財閥に生まれ、帝王学や経営学を学び、語学も堪能で英語に始まり6か国語を操る。
今はホテル経営だけに留まらず、英語教育や企業のグローバル化にも力を入れている。

1ページ目にはそう書いてあったし、後のページを見ても履歴書のような経歴や持っている資格など、はっきり言ってどうでも良い情報だけだった。

やはり、彼の性癖や女癖の悪さなどは載っていない…か…
まぁ、そんなのは噂でしか回って来ないだろう。

そう思っていると、同期の久遠武人くおんたけとがコンシェルジュルームに戻って来た。

彼は同期ではあるものの、既に何度かのロイヤルスイートの担当コンシェルジュを経験している。

「琴宮…
天羽オーナーの担当になったって本当か…?」







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