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第1章 キライ

12 手の温もり

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side天羽萬里あもうばんり

久しぶりに嫌な夢は見なかった。

あれだけガンガンした頭も、痛みは嘘のように治まり、俺は温かい手のぬくもりを感じながら熟睡した。

目が覚めた時、夢だと思った俺の手は確かに誰かに握られていた。
そして、それはベッドにもたれかかって眠る琴宮の手だった。

なぜか、一筋の涙が出た。
俺は具合が悪い時でも、手を握ってもらった事なんて、両親にも、もちろん、コンシェルジュにも無かった。

初めての看病をしてくれたのは、俺の嫌いな嫌いなコンシェルジュの鏡みたいな、琴宮だった。

琴宮が俺の幼い頃のコンシェルジュだったなら、俺はこんなに苦しい思いはしなかったのだろうか…?

その手のぬくもりは、俺をそう悩ませた。

馬鹿な…
一度手を握られたくらいで…

女と手を握った事など…

ん?
あったっけ?

そう言えばSEXの経験は多いが、手を握った事はほとんど無かった。

「琴宮、おい、琴宮…
起きろ…」

俺は彼女を揺り起こそうとする。

と、

「ん…
た…けと…
もう少し…」

彼女は確かにそう言った。

"たけと"、と。

その瞬間、俺は何故か頭に血が昇った。

琴宮をベッドに引き上げ、上に覆い被さった。

無茶苦茶してやる…!

そう思った。

その時、彼女は目を覚ました。

「あも…う…オーナー…?
あれ、わた…し…」

「よくも俺を騙してくれたな、この売女ばいた…!」

「騙し…?
え、何のこと…?」

そう言う彼女の唇を奪った。

「んん!
やめっ…!」

そして、相変わらず俺は琴宮に平手打ちされた。
いつものパターンだ。

「お前が…
悪いんだ…っ…」

しかし、俺は彼女の唇にもう一度貪りむさぼりついた。
自分を止められなかった。
彼女の舌は滑らかで柔らかく、甘い味がした。

「いやぁ!」

彼女は泣きながら、オープンロイヤルスイートから出て行った。
彼女の泣き顔を見たのは、それが初めてだった。

なんで、俺じゃ無いんだよ!
"たけと"って誰だよ!

許さない…
こんなにコケにされたのは生まれて初めてだった…

その手の温もりに、ほんの少し心を開きかけていた。
だから、余計にイラついた。

俺は久しぶりにリビングルームに出た。
汗をぐっしょりかいていたので、シャワーに入った。

頭痛が無いという事がどれだけ幸せな事か、そう思った。
だけど、他の男の名を呼んだ琴宮を許せなかった。

コンシェルジュに冷たくされ始めた頃から、俺は片頭痛を起こすようになった。
酷い時には、何度も嘔吐した。

それさえ、冷たい目で見られた。

くそっ、琴宮を見ると、あの頃から成長してないみたいに弱くなる…!
俺はもう、誰よりも強いはずなのに…!

「こと…みや…か…」

俺はそう呟いた。
徹底的に堕としてやると…









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