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第3章 ショウブ

34 ただならぬ様子

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その日の朝、ホテルのフロントにただならぬ様子のお客様がお見えになったようだ。
フロントから連絡があり、私、武人、天羽オーナーはそのお客様の待つホテルのラウンジに向かった。

年は30代後半か、40代前半ほどの男性で、仕立ての良いスーツからはかなりのキャリアである事が推測できた。
男性はソワソワしながらラウンジの席に着いていた。

「お客様、コンシェルジュの琴宮、久遠、天羽でございます。
どうされましたか?」

私が自己紹介をしつつそう尋ねると、男性は話し出した。

「それが…
昨日、このホテルの13階の会議室である商談をまとめました。
数十億の商談です。
その時、相手の方は名刺をちょうど切らしており、メモ紙に名前と連絡先を載せて渡してくれました。
私はそのメモ紙をポケットに入れたつもりでした。

しかし…
会社に帰っていくら探してもメモ紙は無いのです。

あぁ、私はどうすれば…!?
このままでは数十億の取引がパァになってしまう!」

お客様はおっしゃった。

「お客様、ご安心ください。
私どもが必ず何とか致しますので。」

私はお客様が安心するようにそう声をかけた。

「本当ですか!?
よろしくお願いします!!!」

こうして、接客対決第1回戦が始まったのである。

「よし!
13階を徹底的に探せ!
ホテル員を総動員しろ!!!」

張り切る天羽オーナー。

「ん?
武人は行かないの?」

武人はお客様にご挨拶して、お話しているようだ。

「あぁ、ちょっとお客様とお話したいから。」

武人はそう言ってラウンジのお客様の前の席に腰掛けて、本格的にお話し始めた。

私はとりあえず、どちらに付く事もできないので、コンシェルジュルームに戻った。

♦︎

夜20時。
武人は早々にホテルから帰っていった。

何か、作戦でもあるのだろうか???

私はふと、天羽オーナーが気になり、13階の会議室に向かった。

「くそっ、ゴミクズか!」

天羽オーナーは懐中電灯を片手に会議室の隅を中腰で探している。

もしかして、ずっと…?

「天羽オーナー…
あの、私もお手伝い…」

「琴宮か…
いや、これは久遠と俺の勝負だ。
お前には手伝って貰うことは出来ない。」

「そんな事言ったって、探してるのは天羽オーナーだけじゃないですか…」

周りを見渡しても、他のホテル員の姿は無い。

酷いものだ、天羽オーナーが探し続けているのに、みんな見限って帰ってしまったのだ。

「俺は勝つ。
必ずな。
だから、お前はもう帰れ。」

そう言われて私は渋々13階を後にした。

そして、私服に着替えて、ホテルから帰った。

時刻は21時を回ろうとしていた。



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