47 / 338
1章 異世界突入編
第47話 実体化できる理由
しおりを挟む
静華をもう少し休ませるため、琉海たちは部屋を出た。
「なあ、俺以外に見えるようにできること、なんで村のときに教えなかったんだ?」
村が襲撃されたときにエアリスがいれば、結果は違っていたかもしれない。
「あのときは、無理だったのよ。まず、ルイはマナを生成できなかったでしょ」
「じゃあ、この町に来てからできるようになったのか?」
そう。琉海はこの町に来るときには、マナを作り出せた。
「ええ、できたでしょうけど、私をこの状態にさせたまま、戦うとなると、魔力を馬鹿みたいに消費することになるの。魔力切れになられたら困るから、私は言わなかったのよ」
筋は通っているように聞こえるが、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。
「でも、取り越し苦労だったみたいね。琉海の魔力は底が見えないぐらい多いわ。安心してこの状態でいられるわね」
エアリスはウインクをし、スタスタと一階に下りて行ってしまった。
琉海は自分の手を見て、魔力を放出してみる。
「そんなに魔力があるのか。実感はないんだけどな」
琉海もそう呟いて、エアリスの後を追った。
***
朝食を食べようと一階下りた琉海は、エアリスとミリアが対面している所に居合わせた。
「綺麗な人……」
ミリアが小さく呟いた。
エプロンを着けて、お盆を持っているのを見るに、もう宿の手伝いをしているようだ。
「もう、体のほうは平気?」
琉海はミリアに話しかけた。
昨日、攫われたことは、意識を失っていて覚えていないだろう。
女将さんにも心配させないように、誘拐されていたことは教えていなかった。
道に倒れていたのを助けたことにしている。
「お母さんには、休むように言われたんだけど、別に疲れているわけでもないから、無理を言って手伝ってるの」
「大丈夫そうで良かったよ」
「助けてくれたみたいで、ありがとうございます」
ミリアは頭を下げた。
「たまたま通りかかっただけだから」
「そうよ。ルイはたまたま気分が良くて、探していたら運よく見つけただけだから、気にしなくていいのよ」
「いや、そこまでは言ってないけど……」
琉海とミリアの会話にエアリスが割り込んできた。
琉海にとってはいつものことだが、それは琉海にしか見えないときのことだ。
今は、はっきりとミリアにも見えていた。
「えっと……こちらの綺麗な方はどちら様でしょうか?」
ミリアの質問にエアリスは口元に人差し指を添え、考える素振りをした。
「うーん……苦楽を共にするルイの愛人かしらね」
「あ、愛人ですかッ!?」
一瞬、ミリアが琉海に視線を向けてきた。
「いや、本気にしないで。 嘘だから。エアリス、誤解を生むようなことを言うなよ」
「別に誤解ではないでしょ? 私たちは一緒にいないと存在していられないんだから」
くすくすと、笑うエアリス。
他の人間と会話できるのが嬉しいのか、エアリスは楽しそうだった。
「あ、でも大丈夫よ。正妻はまだ決まってないみたいだから」
「え、正妻ですか……?」
「ええ、私は愛人だもの」
ミリアは神妙に考えはじめる。
「なに吹き込んでんだよ」
「恋する乙女に助言をしてあげたのよ」
エアリスはそう言って空いている席のあるテーブルへ行ってしまった。
「恋する乙女って……」
琉海は自然とミリアに視線を向けた。
そのタイミングでミリアも顔を上げ、琉海と視線が交わる。
ミリアは徐々に顔を赤くさせ、
「な、なんのことでしょう。……えっと、朝食をお持ちしますね。席で待っていてください!」
ミリアは逃げるように厨房へ駆けて行った。
琉海は先に席に座っていたエアリスの向かい側に腰を下ろす。
「なにがしたかったんだよ」
「ふふ、ちょっと楽しくなっちゃって。ルイとの会話も面白いんだけど、他の人間と
も話せるのはやっぱりいいものね」
その物憂げな顔を見て、琉海は口を開く。
「マナならいくらでも作れるから、今後は好きなときに出てくればいいだろ」
別に今回だけしかできないことじゃないと伝えたかった琉海。
その心を察したのかエアリスは笑顔で頷いた。
「ええ、そうするわ」
今日の朝食は夕食に引き続きいつもより多かった。
サービスでエアリスの分も用意してもらい、朝食を食べることになった。
「なあ、俺以外に見えるようにできること、なんで村のときに教えなかったんだ?」
村が襲撃されたときにエアリスがいれば、結果は違っていたかもしれない。
「あのときは、無理だったのよ。まず、ルイはマナを生成できなかったでしょ」
「じゃあ、この町に来てからできるようになったのか?」
そう。琉海はこの町に来るときには、マナを作り出せた。
「ええ、できたでしょうけど、私をこの状態にさせたまま、戦うとなると、魔力を馬鹿みたいに消費することになるの。魔力切れになられたら困るから、私は言わなかったのよ」
筋は通っているように聞こえるが、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。
「でも、取り越し苦労だったみたいね。琉海の魔力は底が見えないぐらい多いわ。安心してこの状態でいられるわね」
エアリスはウインクをし、スタスタと一階に下りて行ってしまった。
琉海は自分の手を見て、魔力を放出してみる。
「そんなに魔力があるのか。実感はないんだけどな」
琉海もそう呟いて、エアリスの後を追った。
***
朝食を食べようと一階下りた琉海は、エアリスとミリアが対面している所に居合わせた。
「綺麗な人……」
ミリアが小さく呟いた。
エプロンを着けて、お盆を持っているのを見るに、もう宿の手伝いをしているようだ。
「もう、体のほうは平気?」
琉海はミリアに話しかけた。
昨日、攫われたことは、意識を失っていて覚えていないだろう。
女将さんにも心配させないように、誘拐されていたことは教えていなかった。
道に倒れていたのを助けたことにしている。
「お母さんには、休むように言われたんだけど、別に疲れているわけでもないから、無理を言って手伝ってるの」
「大丈夫そうで良かったよ」
「助けてくれたみたいで、ありがとうございます」
ミリアは頭を下げた。
「たまたま通りかかっただけだから」
「そうよ。ルイはたまたま気分が良くて、探していたら運よく見つけただけだから、気にしなくていいのよ」
「いや、そこまでは言ってないけど……」
琉海とミリアの会話にエアリスが割り込んできた。
琉海にとってはいつものことだが、それは琉海にしか見えないときのことだ。
今は、はっきりとミリアにも見えていた。
「えっと……こちらの綺麗な方はどちら様でしょうか?」
ミリアの質問にエアリスは口元に人差し指を添え、考える素振りをした。
「うーん……苦楽を共にするルイの愛人かしらね」
「あ、愛人ですかッ!?」
一瞬、ミリアが琉海に視線を向けてきた。
「いや、本気にしないで。 嘘だから。エアリス、誤解を生むようなことを言うなよ」
「別に誤解ではないでしょ? 私たちは一緒にいないと存在していられないんだから」
くすくすと、笑うエアリス。
他の人間と会話できるのが嬉しいのか、エアリスは楽しそうだった。
「あ、でも大丈夫よ。正妻はまだ決まってないみたいだから」
「え、正妻ですか……?」
「ええ、私は愛人だもの」
ミリアは神妙に考えはじめる。
「なに吹き込んでんだよ」
「恋する乙女に助言をしてあげたのよ」
エアリスはそう言って空いている席のあるテーブルへ行ってしまった。
「恋する乙女って……」
琉海は自然とミリアに視線を向けた。
そのタイミングでミリアも顔を上げ、琉海と視線が交わる。
ミリアは徐々に顔を赤くさせ、
「な、なんのことでしょう。……えっと、朝食をお持ちしますね。席で待っていてください!」
ミリアは逃げるように厨房へ駆けて行った。
琉海は先に席に座っていたエアリスの向かい側に腰を下ろす。
「なにがしたかったんだよ」
「ふふ、ちょっと楽しくなっちゃって。ルイとの会話も面白いんだけど、他の人間と
も話せるのはやっぱりいいものね」
その物憂げな顔を見て、琉海は口を開く。
「マナならいくらでも作れるから、今後は好きなときに出てくればいいだろ」
別に今回だけしかできないことじゃないと伝えたかった琉海。
その心を察したのかエアリスは笑顔で頷いた。
「ええ、そうするわ」
今日の朝食は夕食に引き続きいつもより多かった。
サービスでエアリスの分も用意してもらい、朝食を食べることになった。
71
あなたにおすすめの小説
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
スキル生成で異世界ハーレム冒険
仙道
ファンタジー
行宗 冬夜(ゆきむね とうや)は、異世界に転移した。そして気付いた。
「スキル生成……?」
村娘、女剣士とハーレムを作りながら、このスキルを使って冒険を楽しむことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる