修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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1章 異世界突入編

第47話 実体化できる理由

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 静華をもう少し休ませるため、琉海たちは部屋を出た。

「なあ、俺以外に見えるようにできること、なんで村のときに教えなかったんだ?」

 村が襲撃されたときにエアリスがいれば、結果は違っていたかもしれない。

「あのときは、無理だったのよ。まず、ルイはマナを生成できなかったでしょ」

「じゃあ、この町に来てからできるようになったのか?」

 そう。琉海はこの町に来るときには、マナを作り出せた。

「ええ、できたでしょうけど、私をこの状態にさせたまま、戦うとなると、魔力を馬鹿みたいに消費することになるの。魔力切れになられたら困るから、私は言わなかったのよ」

 筋は通っているように聞こえるが、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。

「でも、取り越し苦労だったみたいね。琉海の魔力は底が見えないぐらい多いわ。安心してこの状態でいられるわね」

 エアリスはウインクをし、スタスタと一階に下りて行ってしまった。

 琉海は自分の手を見て、魔力を放出してみる。

「そんなに魔力があるのか。実感はないんだけどな」

 琉海もそう呟いて、エアリスの後を追った。

    ***

 朝食を食べようと一階下りた琉海は、エアリスとミリアが対面している所に居合わせた。

「綺麗な人……」

 ミリアが小さく呟いた。

 エプロンを着けて、お盆を持っているのを見るに、もう宿の手伝いをしているようだ。

「もう、体のほうは平気?」

 琉海はミリアに話しかけた。

 昨日、攫われたことは、意識を失っていて覚えていないだろう。

 女将さんにも心配させないように、誘拐されていたことは教えていなかった。

 道に倒れていたのを助けたことにしている。

「お母さんには、休むように言われたんだけど、別に疲れているわけでもないから、無理を言って手伝ってるの」

「大丈夫そうで良かったよ」

「助けてくれたみたいで、ありがとうございます」

 ミリアは頭を下げた。

「たまたま通りかかっただけだから」

「そうよ。ルイはたまたま気分が良くて、探していたら運よく見つけただけだから、気にしなくていいのよ」

「いや、そこまでは言ってないけど……」

 琉海とミリアの会話にエアリスが割り込んできた。

 琉海にとってはいつものことだが、それは琉海にしか見えないときのことだ。

 今は、はっきりとミリアにも見えていた。

「えっと……こちらの綺麗な方はどちら様でしょうか?」

 ミリアの質問にエアリスは口元に人差し指を添え、考える素振りをした。

「うーん……苦楽を共にするルイの愛人かしらね」

「あ、愛人ですかッ!?」

 一瞬、ミリアが琉海に視線を向けてきた。

「いや、本気にしないで。 嘘だから。エアリス、誤解を生むようなことを言うなよ」

「別に誤解ではないでしょ? 私たちは一緒にいないと存在していられないんだから」

 くすくすと、笑うエアリス。

 他の人間と会話できるのが嬉しいのか、エアリスは楽しそうだった。

「あ、でも大丈夫よ。正妻はまだ決まってないみたいだから」

「え、正妻ですか……?」

「ええ、私は愛人だもの」

 ミリアは神妙に考えはじめる。

「なに吹き込んでんだよ」

「恋する乙女に助言をしてあげたのよ」

 エアリスはそう言って空いている席のあるテーブルへ行ってしまった。

「恋する乙女って……」

 琉海は自然とミリアに視線を向けた。

 そのタイミングでミリアも顔を上げ、琉海と視線が交わる。

 ミリアは徐々に顔を赤くさせ、

「な、なんのことでしょう。……えっと、朝食をお持ちしますね。席で待っていてください!」

 ミリアは逃げるように厨房へ駆けて行った。

 琉海は先に席に座っていたエアリスの向かい側に腰を下ろす。

「なにがしたかったんだよ」

「ふふ、ちょっと楽しくなっちゃって。ルイとの会話も面白いんだけど、他の人間と
も話せるのはやっぱりいいものね」

 その物憂げな顔を見て、琉海は口を開く。

「マナならいくらでも作れるから、今後は好きなときに出てくればいいだろ」

 別に今回だけしかできないことじゃないと伝えたかった琉海。

 その心を察したのかエアリスは笑顔で頷いた。

「ええ、そうするわ」

 今日の朝食は夕食に引き続きいつもより多かった。

 サービスでエアリスの分も用意してもらい、朝食を食べることになった。
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