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2章 スティルド王国編
第117話 王女への警戒
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「あのお相手は同郷の方ですか?」
「同郷ですか……?」
「はい。お相手の方と顔立ちが似ているようにみえたので、そうではないかなと思ったのですが」
日本人の顔立ちはこの世界では珍しい部類で目立つ。
クレイシアは榊原の顔が見えるほどの視力まで強化できるということだ。
「私の同郷かはわかりませんが、黒髪の男でしたね」
琉海ははぐらかすことにした。
その後は、当たり障りのない会話が続いた。
若干、踏み込んだ話は、琉海の出身を聞かれたことだが、日本というわけもいかず、琉海は明言せずに孤児だったからわからないと言って誤魔化した。
そうこうしていると、部屋がノックされるが、室内から返事を待たず、ガチャっと扉が開かれた。
エアリスと遅れて静華も入室した。
「採寸は終わったわよ」
エアリスは琉海にそう言ってから、クレイシアに視線を向けた。
「だれ?」
エアリスが首を傾げる。
「これは申し遅れました。私はクレイシア・スティルドと申します」
綺麗な所作でお辞儀をするクレイシア。
静華は若干気圧されたように見えたが、エアリスにはどこ吹く風だった。
「そう。よろしくね」
エアリスはそう言って、クレイシアに手を出した。
「ええ、宜しくお願いしますわ」
クレイシアはエアリスの手を握り、握手を交わした。
「それでは、私はそろそろお暇させていただきますわ。お邪魔しました」
クレイシアは扉の前で琉海たちにお辞儀をして部屋から退出した。
「あの人間、だれ?」
エアリスはクレイシアが出ていった扉を見つめていた。
「たしか、この王国の女王様じゃなかったかしら」
静華が顎に指を当て、思い出す仕種をする。
「そうです。彼女はクレイシア王女殿下です。で、それがどうかしたのか?」
静華に頷き、訝しむように扉を見ているエアリスに問う。
「なんか……なんか変な感じがしたのよね」
「変な感じ?」
「わからないけど、握手したときに変な感じがしたのよ」
エアリスはそう言って自分の手を開いたり閉じたりする。
変な感じがどんな感じなのかわからないが、あまりいいものではなさそうだ。
うーん、と悩んでいたが、それも数瞬――
「まあ、いいわ。ルイは気を付けるのよ」
「いや、何に気を付ければいいんだよ」
エアリスのアバウトな忠告に琉海が聞き返す。
「わからないけど、気を付けるのよ。あの女は警戒したほうがいいわ」
「まあ、別の意味で気を付けたほうがいいかもしれないな」
琉海は真兼な顔で答えた。
「どういうこと?」
琉海の雰囲気から静華は心配そうに聞いてくる。
「ドラゴンとの戦闘と塀の外での戦いを見られていたみたいなんです」
「え? そんなことができるの?」
「彼女もトランサーのようです」
「能力は?」
「遠くを見ることができるみたいですね。それも榊原先輩が俺たちと似た顔立ちだとわかるぐらいはっきりと見えていたようです」
どこまで見渡すことができるのかわからないが、あまりこの辺りで派手に何かをやると、見られることは間違いないだろう。
「厄介ね」
静華もそこまで把握できたみたいだ。
「今後は周りの目を気にしながら動いたほうがいいわね」
「はい。そのほうがいいかもしれません」
「トランサーなのも厄介だけど、それだけじゃないわよ。あの女は私たちとは相性が悪いわ」
エアリスは、クレイシアを過剰に警戒する。
「根拠はあるのか?」
「ないわ」
「おい」
きっぱり言うエアリスに琉海がツッコミを入れるとエアリスは「何よ」って表情をする。
そして――
「長年生きてきた精霊の勘よ。信じて損はないわ」
胸を張って言うエアリスに琉海はため息を漏れそうになった。
まあ、あの王女は色々と警戒する必要があることは、琉海も理解している。
必要以上に警戒する必要はないが、まだ何かを隠している可能性もあるうちは、過剰な警戒も必要なのかもしれない。
「わかったよ。肝に銘じておくよ」
「わかればいいのよ。そのほうがいいわ」
エアリスは満足そうに頷いた。
「同郷ですか……?」
「はい。お相手の方と顔立ちが似ているようにみえたので、そうではないかなと思ったのですが」
日本人の顔立ちはこの世界では珍しい部類で目立つ。
クレイシアは榊原の顔が見えるほどの視力まで強化できるということだ。
「私の同郷かはわかりませんが、黒髪の男でしたね」
琉海ははぐらかすことにした。
その後は、当たり障りのない会話が続いた。
若干、踏み込んだ話は、琉海の出身を聞かれたことだが、日本というわけもいかず、琉海は明言せずに孤児だったからわからないと言って誤魔化した。
そうこうしていると、部屋がノックされるが、室内から返事を待たず、ガチャっと扉が開かれた。
エアリスと遅れて静華も入室した。
「採寸は終わったわよ」
エアリスは琉海にそう言ってから、クレイシアに視線を向けた。
「だれ?」
エアリスが首を傾げる。
「これは申し遅れました。私はクレイシア・スティルドと申します」
綺麗な所作でお辞儀をするクレイシア。
静華は若干気圧されたように見えたが、エアリスにはどこ吹く風だった。
「そう。よろしくね」
エアリスはそう言って、クレイシアに手を出した。
「ええ、宜しくお願いしますわ」
クレイシアはエアリスの手を握り、握手を交わした。
「それでは、私はそろそろお暇させていただきますわ。お邪魔しました」
クレイシアは扉の前で琉海たちにお辞儀をして部屋から退出した。
「あの人間、だれ?」
エアリスはクレイシアが出ていった扉を見つめていた。
「たしか、この王国の女王様じゃなかったかしら」
静華が顎に指を当て、思い出す仕種をする。
「そうです。彼女はクレイシア王女殿下です。で、それがどうかしたのか?」
静華に頷き、訝しむように扉を見ているエアリスに問う。
「なんか……なんか変な感じがしたのよね」
「変な感じ?」
「わからないけど、握手したときに変な感じがしたのよ」
エアリスはそう言って自分の手を開いたり閉じたりする。
変な感じがどんな感じなのかわからないが、あまりいいものではなさそうだ。
うーん、と悩んでいたが、それも数瞬――
「まあ、いいわ。ルイは気を付けるのよ」
「いや、何に気を付ければいいんだよ」
エアリスのアバウトな忠告に琉海が聞き返す。
「わからないけど、気を付けるのよ。あの女は警戒したほうがいいわ」
「まあ、別の意味で気を付けたほうがいいかもしれないな」
琉海は真兼な顔で答えた。
「どういうこと?」
琉海の雰囲気から静華は心配そうに聞いてくる。
「ドラゴンとの戦闘と塀の外での戦いを見られていたみたいなんです」
「え? そんなことができるの?」
「彼女もトランサーのようです」
「能力は?」
「遠くを見ることができるみたいですね。それも榊原先輩が俺たちと似た顔立ちだとわかるぐらいはっきりと見えていたようです」
どこまで見渡すことができるのかわからないが、あまりこの辺りで派手に何かをやると、見られることは間違いないだろう。
「厄介ね」
静華もそこまで把握できたみたいだ。
「今後は周りの目を気にしながら動いたほうがいいわね」
「はい。そのほうがいいかもしれません」
「トランサーなのも厄介だけど、それだけじゃないわよ。あの女は私たちとは相性が悪いわ」
エアリスは、クレイシアを過剰に警戒する。
「根拠はあるのか?」
「ないわ」
「おい」
きっぱり言うエアリスに琉海がツッコミを入れるとエアリスは「何よ」って表情をする。
そして――
「長年生きてきた精霊の勘よ。信じて損はないわ」
胸を張って言うエアリスに琉海はため息を漏れそうになった。
まあ、あの王女は色々と警戒する必要があることは、琉海も理解している。
必要以上に警戒する必要はないが、まだ何かを隠している可能性もあるうちは、過剰な警戒も必要なのかもしれない。
「わかったよ。肝に銘じておくよ」
「わかればいいのよ。そのほうがいいわ」
エアリスは満足そうに頷いた。
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