修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第236話 酒場の情報

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「少しは成長したみたいだけど、まだまだね」

 イローナは気を失っているエリを担ぎ、エリが乗っていた馬に近づく。

 イローナが接近してもエリの愛馬はジッとしていた。

 それもそのはず――

「あなたも元気そうで良かったわ」

 イローナはエリの馬の毛並みを撫でる。

 エリが乗っていた馬はイローナが〝剣帝〟だったときに乗っていた愛馬だった。

 相手がイローナであることを理解しているのか、目を細めて気持ち良さそうにしている。

「さて、懐かしんでもいられないのよね。久しぶりの再会で少し遊び過ぎてしまったけど」

 イローナは元愛馬の背にエリを乗せ、ルデアがある方に視線を向ける。

 そのさらに奥には帝都がある。

「私たちも向かいましょうか」

 イローナは愛馬に跨った。

 久しぶりにイローナが乗ることに元愛馬も嬉しいのか、「ブルルル」と鳴き、尻尾を大きく振る。

「行きましょうか。あっちも上手くいっているといいのだけれど」

 イローナを乗せた元愛馬と共にルデアに馬足を進めた。

   ***

 日が沈み、夜になるころ。
 
 反乱軍のリーダーであるレオンスは帝都にいた。

 目的の時間まで酒場で暇を潰す。

 暇を潰すとは言っても、これも情報収集の一環だ。

 ちびちびと酒を口元に運びながら、周りの会話に耳を傾ける。

 酒場では、ルデア奪還の話題が飛び交っている。

 街中でも頻繁に話されていた話題だ。

 商人が流布しているのか、帝都の住民たちがルデアの重要性に気づいてきたのだろう。

 そのほかにも近況の会話をする者たちがいた。

 その中でレオンスが気になる話題があった。

「おい! 知ってるか。昨夜の帝都での大火事」

「知らないやつはいないだろ。あれだけ街中で炎が噴火してたんだから」

 会話をしているのは二人の若者だ。

「あの現象の原因を知ってるか?」

「さあ? どこかのバカが火遊びでもしていたんじゃないか?」

「そんなことであんなに火柱が町の至る所で起きたりしねえだろ」

 片方の男が呆れたように首を振る。

「まあ、確かにな。じゃあ、お前は何か知っているのかよ」

「ふふん、それがよ。なんでも、昨日の夜に貧民街付近の宿の周辺が立入禁止になったみたいなんだよ」

「ああ、それは知っているぞ」

「その立入禁止にしている部隊がどこか知っているか?」

「ん? そんなの町の警備隊だろ?」

「それが違うんだよ。立入禁止場所を調べてたのはあの〝弓帝〟の部隊なんだよ。しかも、昨夜にその近くで〝弓帝〟の姿を見た奴もいるって話だ。そして、極めつけはこれだ。火柱を放って逃げる少年を見かけたってやつもいた。それも、矢が地面に突き刺さっているのも目撃されてるんだとよ」

「何が言いたいんだ?」

「はあ、ここまで話してわからないのかよ」

 仕方ないとでも言うかのようにため息を吐いて説明する若者。

「事故か事件のあった場所を封鎖するだけなら警備隊がやればいいんだよ。それをわざわざ〝弓帝〟の部隊がやっているんだ。明らかに何かあったとしか思えない。しかも、矢が地面に刺さっていることと火柱を放って逃げる少年――ここまで言えばわかるだろ」

「おいおい、まさかあの〝弓帝〟から逃げた奴がいるって言いたいのか?」

「ああ、そうとしか思えないだろ」

「ははは、お前も冗談は休み休み言えよ。そんなわけないだろ。〝弓帝〟に目を付けられて逃げられた奴はいないんだぞ」

「その神話が壊されたってことだろ」

 真剣に話しているようだが、話し相手にはその真剣さが伝わっていないのか、笑われてしまっている。

 その会話を近くで聞いていたレオンスは少年が誰か想像していた。

(まさか、ルイなのだろうか……)

「まさかな」と思いつつも〝帝天十傑〟のひとりから逃げられるような者がそこら中にいないのも知っている。

 ルイたちの作戦は隠密性が重視される。

 〝弓帝〟に見つかって大立ち回りをすれば、そこから狙いが漏れる可能性もある。

 先ほどの会話からだと〝弓帝〟に追われていた少年は逃げ切ったとのことだった。

 情報は漏れていないだろうか。

 気になりつつも、懐から懐中時計を取り出し、時間を確認する。

「そろそろ時間か……」

 レオンスは立ち上がり、酒場の亭主に金を払って酒場を出た。
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