修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第252話 収容所の歪さ

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 結界が崩れたことで内壁の門も開くことができるようになった。

 琉海は門を開き、中に入ろうとするが、エアリスとリーリアが付いてこないことに気づく。

「二人ともどうした?」

「わかったわ。ここの違和感……」

「ええ、ここまではっきりだと私にもわかるわ」

 エアリスとリーリアにはさっきまでの歪さが分かったようだ。

 スミリアに視線を向けると首を横に振った。

 琉海とスミリアは相変わらず何も感じない。

「何があるってんだ?」

「結界がなくなったことで魔力が溢れているのがわかるわ」

「ん? それだけか?」

「それだけじゃないわ。自然力を混ぜてマナを生成しているみたい」

 エアリスとリーリアがそう言う。

 二人がそういうものだから、琉海も自然力を視た。

 すると、収容所の建物に自然力の渦ができているのが視えた。

 それもとてつもない量だ。

「これは何が起きているんだ?」

「わからないけど、龍脈の泉があるみたい?」

 リーリアが首をひねりながらそう答えた。

「なんで疑問形なんだ?」

「だって、森にあった龍脈に比べて気配がだいぶ薄いんだもの。うーん、なんていうか。赤ちゃんって感じなのよね」

「龍脈の赤ちゃん?」

「そう。生まれたての龍脈の源泉みたいなの」

 琉海はリーリアが言わんとしていることを咀嚼して考える。

「つまり、ここにある龍脈はできたばかりの源泉ってことか?」

「うーん、どうだろう」

「まだ、なんか気になることでもあるのか?」

「龍脈の源泉はそんな簡単にできるものじゃないのよ。長い年月をかけて、形成されるものなのよ。しかも、そのほとんどの龍脈の源泉は火山や森や湖や海といった自然が豊富な場所にあるものなの」

 リーリアの言う火山や森や湖や海はこの収容所の近くにはない。

 まあ、強いて言うなら、琉海たちが日没まで隠れていた近くの雑木林だろうか。

 リーリアに確認してみたら、あの雑木林では龍脈の源泉はできないようだ。

 圧倒的に自然力の密度が足りないとのことだった。

「なるほど、その理屈が通るなら、ここに源泉があるのはおかしいのか。まあ、それも入ってみればわかるか」

 琉海はそう言って、内壁の中に入った。

 中には石材でできた建物が見える。

 高さは4メールぐらいだろうか。

 現代の建物の2、3階までの高さだ。

「この建物に収容されているのね」

「たぶんな」

 建物の大きさからして、エルフ村の住民が全員収容されるには狭いように思う。

 そうなると地下があるのかもしれない。

 そして、建物の近くには誰の姿もなかった。

「見張りもなしか……」

 結界は中から素通りのものだった。

 だから、見張りぐらいは配置しているのかと思ったがそれもいないようだ。

 琉海の頭の中では最悪のパターンが濃厚になってくる。

 この収容所から生かして出す気はないのかもしれない。

 捕虜はひとりもいないのかもしれない。

 琉海たちは警戒しつつ、収容所の扉を開いた。

 建物の中は簡素だった。

 装飾品もないガランとした石床と石壁。

 部屋に繋がる扉は何個か見えるが、人の気配はない。

「近くの扉から確認していくか」

 リーリアとスミリアは頷く。

 離れすぎないように気を付けながら各扉を開けていく。

 部屋内には簡素な机とベッドが置かれているが、生活感はなかった。

 特に何か手がかりになるようなモノが置いてあるわけでもない。

 他の部屋も同じだった。

 1階だけではなく、2、3階も全部の部屋を見たが、代わり映えしなかった。

「何もないわね」

「そんなはずは……」

 スミリアは収容所にエルフ村の住民と、冒険者夫婦が囚われていると信じていたのだ。

「エアリス、何か気づいたことはあるか?」

「うーん……」

 エアリスは床を見ていた。
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