修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第287話 見えない相手の攻略

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「ぐふっ……なぜ……」

 邪精霊は腹部を斜めに斬られ、血を流した姿を露わにした。

 エアリスの言う通り、邪精霊は受肉していたようだ。

「お前の能力は足元がお留守すぎんだよ」

 琉海は地面を指差す。

 辺りの地面には浅く砂が積もっており、その上には足跡が残っている。

「この辺まで誤魔化せれるほどの精度じゃなかったみたいだな」

 琉海は事前に砂を《創造》して、ばら撒きながら邪精霊に接近していた。

 その結果、邪精霊の姿が消えても、琉海は足跡を辿ることで隠れ場所を暴いた。

「なるほどですね。ごふっ……」

 邪精霊は吐血する。

 邪精霊の体も限界のようだ。

「私もここまでですか。はあ、後は頼みましたよ」

 邪精霊はそう呟いて、右手に握っていた自分の腕を地面に落とす。

 腕が地面に接触した瞬間、爆発した。

(これはマナ爆発か!?)

 邪精霊は自分の千切れた腕にマナを溜め込み、爆弾の器として活用したようだ。

 琉海は爆風から顔を庇うも、すぐに邪精霊の居場所を確認する。

 爆風と琉海のばら撒いた砂で視界は悪いが、精霊の目のおかげで邪精霊の居場所がはっきりと見える。

 邪精霊は爆発させた場所から動きがない。

 さっきまでと同じ場所だ。

 琉海は邪精霊が逃げないように警戒していると、邪精霊の気配が一気に変わった。

 精霊の目で見えている邪精霊の輪郭がどんどん変わってくる。

 バキバキと骨の軋む異音も聞こえてくる。

 人の輪郭から様変わりして、羽のようなモノも背中から生えていた。

「このままはまずそうだ」

 琉海は変形し始めている邪精霊の息の根を止めるため、駆け出す。

 実際に邪精霊の姿を目にした。

 ローブはすでに着ていない。

 体躯は倍となり、背中からはドラゴンの翼が生えていた。

「グウウウウウウウゥゥゥぅ」

 声もすでに人間のものではなくなっている。

 精霊の目で見ているとどんどん強くなっていっているのがはっきりとわかる。

「あれは……ッ!?」

 琉海は邪精霊の足元に視線を向ける。

 空瓶が転がっていた。

 それも3個。

 あの中身がすべて魔薬だとするとどんなバケモノになるかわからない。

 変異途中の今がチャンスだ。

 琉海は剣を横薙ぎに振った。

 邪精霊の胴体を両断する。

 幻覚で躱されることもなかった。

 その代わり、傷は一瞬で癒えた。

 見覚えのある光景。

「やっぱりか……」

 想像した通り、邪精霊は魔薬を服用しているようだ。

 それもこれまで相対してきた敵よりも多くの魔薬を使っている。

 何度か剣で斬るが、傷はすぐに回復する。

 首を斬っても斬った側から一瞬で治る。

 これだけ攻撃しても邪精霊は微動だにしなかった。

 邪精霊は頭を抱えて唸っているだけ。

 痛覚を失っているのか、琉海に見向きもしない。

「これは想定外だな」

 周りに人がいるとなると威力の大きいのは使えない。

 そんなことを考えていると――

「おい、やっぱりルイだったか。無事だったんだな」

 レオンスが駆け寄ってきた。

「レオンスか。あんたがなんでここにいるんだ?」

「それは色々あってな」

「そうか」

 琉海は深掘りしない。いまはそれどころではなかった。
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