修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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3章 ルダマン帝国編

第289話 拘束する鎖

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 琉海の頭の中に死が過る。

 壁に磔にされた琉海に向かって邪精霊が突進してきた。

 トドメを刺しに来ているのだろう。

 意識が朦朧として何もできないでいる琉海。

 そんな琉海の眼前に突然、複数枚の魔法陣が浮かび上がる。

 その魔法陣を起点に結界が張られていく。

 進行を邪魔する結界を邪精霊は拳で破壊するが、破壊された傍から魔法陣が再構築する。

「ルイ! 時間は稼ぐから、あれを何とかできないのか!」

 レオンスがこの魔法の発動者のようだ。

(魔法を使えたのか……)

 琉海は頭を振り、朦朧としていた意識を戻す。

「あいつの動きを止めないと話しにならない。それと倒すならひとつ残らず消滅させるほどの威力が必要だ。だけど、ここだとその威力は出せない」

「わかった。周囲の防御はこっちで何とかする。後はあいつの動きを止められればいいんだな」

「ああ、だが、どうやってやるんだ」

「一応、拘束用の魔法があるから、試してみる。その間に準備をしろ。拘束できてもどのぐらい持つかはわからないからな」

 レオンスはそう言って腕を振った。

 すると、床に現れた幾何学模様の魔法陣が輝き、邪精霊の周囲を囲むように光の鎖が放たれる。

 邪精霊はすぐに鎖に気づき、回避行動を取るが、鎖はその後を追う。

 どうやら、鎖は自動追尾機能を持っているようだ。

 邪精霊は嫌って鎖をかぎ爪で切り裂くが、切り裂かれてもお構いなしで伸び続ける。

 四方八方すべてが鎖で覆われ、邪精霊は身動きが取れなくなる。

 そのまま縛るかのように、光の鎖は一気に邪精霊の全身に巻き付いた。

 邪精霊は巻き付かれても力尽くで光の鎖を破壊するが、鎖は壊れた分を補充するかのように幾重にも巻き付いていく。

「これでいいか! 長くは持たないぞ!」

「動きを止めただけじゃ意味がない!」

 琉海は自然力をどんどん体内に入れながら、叫ぶ。

「わかってる! もう準備は終わってる!」

 レオンスがそう言うと、さっき琉海を守った魔法陣と同じものが琉海と邪精霊の周りに無数に展開される。

(これだけの量の魔法まで使えたのか……)

 その光景は圧巻だった。

「これならいけそうか」

 琉海は集めていた自然力をマナに変換していく。

 収容所で限界までマナを溜め込んだ経験があったおかげか、その時よりも多くのマナを体に溜め込める。

 だが――

『ルイ! これ以上、マナを溜め込むと体の調整が崩れるわよ』

「もう少しだけ頼む」

『無茶言わないで!』

「マナ経路が問題なければ、他はとりあえず不調でも問題ない」

『本当にそれで大丈夫なの?』

「ああ、それで頼む。一発で終わらせるつもりだから」

『わかったわ。他を視なくていいなら、マナを溜め込んでも大丈夫よ』

「それじゃ、頼む」

 琉海は自然力をさらに取り込んでマナに変換する。

 体の動きに少し違和感を覚えるが、許容範囲だ。
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