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3章 ルダマン帝国編
第290話 疲労困憊
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マナを限界まで生成し琉海は火の精霊術で火の玉を生み出した。
琉海の手元にあるのは、野球ボールほどの大きさだったが、琉海は全力でマナを注ぐ。
圧縮に圧縮を重ねる。
これも収容所で覚えたコツだ。
極限まで圧縮し、空いたスペースにマナを再び注いでいく。
同時並行で圧縮と火のイメージを送っているせいか、頭が焼き切れそうになる。
「これ以上は無理か」
(これで邪精霊が殺せなかったら、もうどうすることもできないな)
琉海の手元には膨大なマナ量で出来上がった火球が煌々と燃えていた。
琉海はその火球を邪精霊に向かって放つ。
邪精霊に着弾した瞬間――
目を焦がすような光が視界を覆う。
それと同時にガラスが割れるような音が無数に響いた。
レオンスが展開した魔法陣の結界が割れているのだろう。
琉海は自分の周りを水の精霊術で防御壁を構成する。
しばらくすると結界が割れる音が止んだ。
琉海の放った火球の爆炎が収まったようだ。
視界が爆煙で遮られていたが、次第に爆煙も無くなると視界が広がる。
邪精霊のいた場所には、もう邪精霊の姿はなかった。
もちろん光の鎖も無くなっている。
跡形もなく消し飛んだのだろう。
レオンスの魔法は琉海の精霊術を凌いだようで、建物は健在だった。
「何もないな……」
琉海は辺りを見るが、邪精霊の体の一部すら残っていなかった。
(まあ、そうしないと倒せないと思って使ったんだから、結果としては上々なんだけど……)
何も残っていないと本当に倒せたのか不安になる。
少しでも確証に繋がるものがあればと思ったのだが、物的証拠はなさそうだ。
こうなると頼れるのは精霊の感知能力ぐらいだろうか。
「エアリスは何か感じるか?」
『うーん、何も感じないわね』
エアリスの探知にも引っ掛からないとなると、本当に倒せたと思っていいのかもしれない。
「なら、倒すことができたってことか」
『そうね。あれだけの気配を隠すのは難しいでしょうね』
エアリスの言葉を聞いて、緊張が解ける。
力の抜けた琉海はその場で仰向けに倒れた。
「はあ~、さすがに疲れた~」
アドレナリンが出て痛みに鈍感になっていたようだが、思い出したかのように一気に全身の節々から痛みが走る。
邪精霊にやられた外傷。
膨大なマナの出力。
そして、そのマナの圧縮と具現化。
ただでさえ不調な状態だった体をエアリスが応急処置してなんとか動かせていたのだ。
そこにさらなる無茶をしてしまった。
体も限界を迎えて当然だった。
『無茶をするからよ』
「もう、一歩も動けないな」
『少し休んでいいわよ。後は私がやっとくわ』
「ああ、それじゃ頼む」
琉海は久々に疲れを感じた気がした。
疲れ知らずの体になってから元の世界とは色々と違ったが、倒れるほどの疲れを感じると人間である実感した。
『1週間ぐらいは動けないと思ったほうがいいわよ』
「ああ、わかった」
疲労困憊の琉海は本能に従い、意識を手放した。
琉海の手元にあるのは、野球ボールほどの大きさだったが、琉海は全力でマナを注ぐ。
圧縮に圧縮を重ねる。
これも収容所で覚えたコツだ。
極限まで圧縮し、空いたスペースにマナを再び注いでいく。
同時並行で圧縮と火のイメージを送っているせいか、頭が焼き切れそうになる。
「これ以上は無理か」
(これで邪精霊が殺せなかったら、もうどうすることもできないな)
琉海の手元には膨大なマナ量で出来上がった火球が煌々と燃えていた。
琉海はその火球を邪精霊に向かって放つ。
邪精霊に着弾した瞬間――
目を焦がすような光が視界を覆う。
それと同時にガラスが割れるような音が無数に響いた。
レオンスが展開した魔法陣の結界が割れているのだろう。
琉海は自分の周りを水の精霊術で防御壁を構成する。
しばらくすると結界が割れる音が止んだ。
琉海の放った火球の爆炎が収まったようだ。
視界が爆煙で遮られていたが、次第に爆煙も無くなると視界が広がる。
邪精霊のいた場所には、もう邪精霊の姿はなかった。
もちろん光の鎖も無くなっている。
跡形もなく消し飛んだのだろう。
レオンスの魔法は琉海の精霊術を凌いだようで、建物は健在だった。
「何もないな……」
琉海は辺りを見るが、邪精霊の体の一部すら残っていなかった。
(まあ、そうしないと倒せないと思って使ったんだから、結果としては上々なんだけど……)
何も残っていないと本当に倒せたのか不安になる。
少しでも確証に繋がるものがあればと思ったのだが、物的証拠はなさそうだ。
こうなると頼れるのは精霊の感知能力ぐらいだろうか。
「エアリスは何か感じるか?」
『うーん、何も感じないわね』
エアリスの探知にも引っ掛からないとなると、本当に倒せたと思っていいのかもしれない。
「なら、倒すことができたってことか」
『そうね。あれだけの気配を隠すのは難しいでしょうね』
エアリスの言葉を聞いて、緊張が解ける。
力の抜けた琉海はその場で仰向けに倒れた。
「はあ~、さすがに疲れた~」
アドレナリンが出て痛みに鈍感になっていたようだが、思い出したかのように一気に全身の節々から痛みが走る。
邪精霊にやられた外傷。
膨大なマナの出力。
そして、そのマナの圧縮と具現化。
ただでさえ不調な状態だった体をエアリスが応急処置してなんとか動かせていたのだ。
そこにさらなる無茶をしてしまった。
体も限界を迎えて当然だった。
『無茶をするからよ』
「もう、一歩も動けないな」
『少し休んでいいわよ。後は私がやっとくわ』
「ああ、それじゃ頼む」
琉海は久々に疲れを感じた気がした。
疲れ知らずの体になってから元の世界とは色々と違ったが、倒れるほどの疲れを感じると人間である実感した。
『1週間ぐらいは動けないと思ったほうがいいわよ』
「ああ、わかった」
疲労困憊の琉海は本能に従い、意識を手放した。
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