龍の末裔

祖父からの強制命令！

　私は夢の中で亡くなった祖父に言われたのだ。
「お前の兄の九条緋勇（くじょうひゆう）と他の公爵の貴族との仲を取り持て。そうしなければ、お前は今後悲惨な目にあい、死ぬときも見られたものではない。特に、仲を取り持ってほしいのは、一条家の人間とだ。大丈夫、人間死ぬ気ですれば出来ない事はない！」
　そう言われて、祖父に手を伸ばすが届かなかった。そして、私はそのままベッドの上で目を覚ましたのだった。
「夢だった？」
　そしたら、なんてリアルな夢だろうか。内容も忘れていないし、祖父が使っていた葉巻の匂いもしていた。祖父とは川沿いに居て川をわたろうと入った川も冷たかった。祖父には「まだお前には此方は早い」とかなんとか言われた。
　私は九条玲（くじょうれい）九条家の長女で、兄が一人いる。今年で１６歳になり、高校に入学している。私が通っている高校は貴族が多く通っているエリート校だ。実力がないとすぐに退学になる。今年も早々に5人の退学者が出ている。厳しすぎませんかと思う。
「お嬢様、朝食の準備が出来ています」
　私は鏡を見ながら学校に行く準備もしている。長い黒い髪を赤い紐で縛り、瞳は黄金色をしていて肌は白いほうだと思う。制服の上着を着て、ダイニングに向かう。
「おはようございます！」
　父と母と兄に挨拶したが、皆の対応はさまざまだった。
「玲、なんだ。また、その恰好なのか？」
　父親は米神を押さえて、机の上で唸っている。
そんなに男装が駄目かな？　結構、カッコいい男になっていると思うけど。
「あらあら、カッコいいわね。旦那様の小さい頃に本当にそっくりね！」
　母親は頬を染めている。父との昔の出会いでも思い出しているのだろう。
「俺よりも女性にモテるのが腹立つわ」
　兄は美人な顔を般若の様な顔で私を見てくる。兄は母親似なので、美人という言葉がしっくりくる。
「いやー、女の子から呼びだしがこんなに来るなんてね」
　私は昨日届いた手紙を鞄から出して、兄にみせた。
「俺も女性にモテたい！」
「いやいや、自分よりも綺麗な人の恋人ってハードル高くない？」
「お前の外見と俺の外見を入れ替えたら、きっと違ったのに」
「まぁまぁ、兄さんも恋文きているでしょ？」
「男から手紙を貰って、嬉しがる趣味は俺はない」
「あははは……」
　兄は男性から、私は女性から人気があった。兄は姫の様に美しく男達は「守りたい！」と思うらしい。私は普通の女性よりも背が高く、美形の父に似た外見でモテた。女性限定で。
　さて、さっきの夢の話は本当か信憑性が無いが、一条家とか他の貴族とも仲良くするなんて無理ゲーに近いですよ、お爺ちゃんよ！

　この国では一番は王様、二番目は王妃様、三番目は王子様＆姫君と言った通りに、上位の順番がある。そして、貴族の公爵に我が九条家も入っている。だが、他にも九つの貴族が公爵の爵位を受けている。これは、昔からの決まりで一条家、二条家、三条家、四条家、五条家、六条家、七条家、八条家、十条家が我が九条家と肩を並べる事を許されている貴族だ。他の家に公爵を以上の爵位は授ける事は出来なくなっている。
我々は古来にこの国の王様が召喚した頭が１０個ある龍の末裔なのだ。そして、その龍のおかげで国は栄え発展した。龍が寿命で死ぬときに言ったのだ。
【必ず貴方の元に帰ってきます】と、龍はそのまま息をひきとった。
　その後、龍が持っていた玉の中にあった印が赤ちゃんに浮かび上がっていた。これを龍の子の証だとして、１０人の赤ん坊が印持ちで産まれた。そして、それから名を改名して、数字と条令にもとついた名前に変わった。
　だが、もともと龍の子だ。気性が激しい人間ばかりだった。
　その中でもっとも常識人だと言われているのが、九条家だ。皆、王様に気に入られたくて仕方がないのだ。何故か、九条家はその気持ちが薄い。


「では、行ってきます！」
　私は挨拶をして、玄関から外に歩いている。皆、顔を赤くしてこちらを見てくる。
「今日もカッコいい！」
「あれで女性だなんて、なんの詐欺なの！」
「あぁ、今日は良い事ありそう！」
　女性達の声と男達の声が歓喜していた。

　さて、どうしたものか。一番は一条家と仲をなんとかしたいと思う。
　だが、アチラは何故かこちらを一番毛嫌いしている様に感じるのだ。
「「「「「きゃぁあああああああああああああ！」」」」」
　後ろから女性の悲鳴が聞こえてきた。私はもう門を通り過ぎて、下駄箱まで来ていたが此処まで聞こえてくるなんて、声のする方を見ると、黒塗りベンツから男が一人降りて、スラリと無駄に長い脚、顔は小顔で美形の部類に入る整った顔、銀髪の髪はサラサラと風に流れ、宝石の様な赤い瞳はルビーの様だ。流石は一条家の三男の一条蓮（いちじょうれん）だ。同じ学校なのが嫌だなと思うが仕方ない。他の公爵の貴族も通っているからだ。
　どうして、このタイミングなんだか。私は急いで、靴を入れて学校内に入ろうとしたが、後ろから肩をガッと捕まれる。私はゆっくり、後ろを振り向いた。
「おはよう。そんなに、急いで行かなくてもいいじゃないか」
「それは失礼しました。おはよう、一条」
　私は肩から手を振り払って、一条に向き合う。
「折角、会えたんだ。一緒に教室に向かおう」
「分かった」
　私はため息をつきながら一条と並ぶ。
　そうすると、廊下の生徒がざわつく。
「イケメンのツートップが一緒に登校！」
「もう、この学校に受かってよかった！」
「お二人とも、なんて美しいのかしら！」

　いやいや、美形度は一条の方が上だと思う。
　それに、偽物の騎士ではないのだから。一条の方がやはり上だ。