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N-4:落ち着いて! 何とかしてみせる。
しおりを挟むリコテと一緒に、僕はリュックの置いてある場所に戻ると、荷物を確認し、チェーンで繋がれたフライパンと鍋をチェーンから外して、石を探す。
『マルは何してるの?』
僕の石を探す行動が不思議に思えたようで。
「ん? んー、なんていうのかな、火をおこすための場所を作るんだ」
『マルは火を使えるの?』
「うん、使えるよ」
何だろう、すごい驚いた顔で僕を見ているけど……。
そこら辺に転がる大小様々な石を僕は拾い集めて、座れる広さの石の上に腰を落とし、小さな円になるように石を並べていく。
後は、鍋が安定するようにっと。
リコテの不思議そうに見つめる眼差しは反れる事もなく、僕の手元を見続けていた――。
近くには今までいなかったミラが立っており、ミラから発せられる雰囲気は何か嫌な予感を感じさせるほどに重く、辺りの空気を圧迫させる。
表情を見ると絶望の淵に立つ、今にも身投げをする人間の描写に似ている。
「リコテ、帰ってきた仲間がいるのなら、髪を洗ってあげてみるといいかも。石鹸もタオルも渡すから」
『うん、そうする』
頷くリコテに石鹸と新しいタオルを渡すと、リコテは重苦しい空気が沈殿する場所から離れていった。
さてと……大体の想像はつく。だけど、どうやって切り出したらいいだろう?
「……マル、どうしよう……」
ん、ミラから話しかけてくれる。これなら理由を訊くことが出来そうだ。だけど……なんて表情をしてるんだ……こっちにまで伝わって胸が刺されたように痛む。
「どうしたの?」
「食べ物をもらえなかったって……」
なるほど、他の子は食べ物を貰いにどこかへ行っていたわけか。という事は、食料をくれる場所がある――いや、あったと言うべきか。
「それで、そんなに……えっと、あー……うん、食べ物がないと」
僕を見つめるミラの顔は歪み、心の中で何かを爆発させたのか、涙腺を崩壊させて涙が溢れだす。
両目から大粒の涙が頬を伝って地面に幾つもの涙で湿る痕跡を残す。
何とかしないと絶望に心が呑み込まれてしまう。
「うん、決まりだ」
「?」
財布をポケットに忍ばせて、僕が立ち上がる姿を見るとミラは首を傾げる。
「……どうしたの?」
「食べ物を探しに行くんだ」
「探すって! 無理よ!」
「どうして無理なの?」
「だって……お金もないし……それに……」
とはいっても食べ物がなければ、飢えてしまう。それにミラもそうだけど、リコテ含めると、あまりにも痩せすぎている。何かを食べなければ倒れてしまうのは一見しても分かる。
「どうすればお金は手に入るのかな?」
「商人に物を売れば……」
「じゃぁ、お願いがあるんだ。僕をその商人のところへ連れていってほしい」
「そ、そんな!? 私は……私は――!!」
ミラは何かを口にしようと声を張り上げたが、僕はニコリと微笑んで見せる。
「私を売るの?」
突然の返し辛い言葉を口にすると、僕は呆気にとられた。でも、ここは落ち着いて優しく諭すように僕はゆっくりと喋る。
「売らないよ? 僕に考えがあるから」
「……うん、わかった。私はマルを信じてもいいの?」
その言葉に対して、頷いて微笑む。
「それじゃ、行こう!」
「あ、まって」
僕を呼び止めると、ミラは麻の紐を首にクルクルと巻いて、軽く結ぶ。
ふむ……どうやらミラは訳アリのようだ。しかし、今はそれを訊いている時間はない。
そして、僕はミラを先頭に荒地から抜け出ると、暗く湿っぽい細い路地裏を通り、光が差す方向に向かうと、人が往来する道に出る。
ほぉー、人がいっぱいだ。服装はなんだか布を羽織っている人もいるし、上半身が裸の男もいる。
「あの、マル」
「どうしたの?」
「ううん……なんでもない」
「そっか」
あまり突っ込んだ話をすれば藪蛇だ。ここは黙っておこう。それにしても面白い。敷物しいて編んだ籠に野菜とかが入れられてる。あっちは大きな鍋で何かを煮てる。
ほほう、まったく知らない土地だという事は理解できた。
「ミラ」
「え、なに?」
ミラは僕に呼ばれると体をビクッと震わせ、視線を合わそうとはしなかった。
うーん、相当に警戒されてるな。
「いや、この辺は食べ物を売ってるところ?」
「そうね、私達では買う事もできないけど」
「なるほど」
「もう少し先のところに旅商人の集まる場所につくけど……」
「うん、わかったよ」
さてさて、交渉の余地はあるだろうか? なんとしてでも切り抜けたい場面だ。
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