#.『古代』の異世界生活

鉄仮面

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N-5:商人との取引。 緊張と恐怖で怖い。(書き直し)

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  ミラの後をつけて、僕は旅商人の集まる場所に到着する。

  ここだけ、あきらかに空気が違う。路面にしきもの物をしいて、座って雑貨を売っている。

  「着いたのだけど」
  「ありがとう! ミラはここで待っててね」
 「……う、うん」

  ミラの表情は暗い。それは当然なのかもしれない。ミラは自分が売られるのではないかと心配で気が気でないはずだ。

  それにしても、先ほどの表通おもてどおりりとは違って、ここは薄暗うすぐらく、太陽が真上を過ぎて、午後の時間をしめしているのに日陰ひかげかげりに開かれた闇市のようだ。

  空気もジメジメとしている。辺りにはハイエナが獲物のおこぼれに有り付くすきを覗ってるような視線が色んな場所から突き刺さる。

  なんとか今の手持ちのお金で何とかしなければならない……どうする……。

  この場所で手持ちの硬貨が使えれば、この先をしのぐことも可能だ。だけど……いや、失敗する事を考えるな。ここは、僕が何とかしないといけない。

  僕は周りを見渡し、首を回転させながら、取引の相手になってくれる商人はいないものかと、探していた。

  すると、僕の挙動きょどうに何かを感じ取ったのか、座りながら手招きをする商人が一人。

  ゴクリと喉を鳴らし、一筋の汗が僕の頬を伝う。

  足取りは重く、緊張で顔の表情すら作れないまま、僕は商人の前に立ち、しゃがみ込んだ。

  「あ、あの……僕を呼びましたか?」

  商人はうなずくと、右手を伸ばして、何かを催促さいそくする様子で手を広げて、見せてみろ言わんばかりの姿勢だ。

  緊張して手が震える……だけど、ここで怖気付おじけづくわけにはいかない。

  正直、商人を相手するのは怖い。彼の目の奥に光る、暗くよどんだ泥水に近い殺意のにじむものは、僕にとっては命の駆け引きをする檻に閉じ込められ、獰猛どうもうな生き物と対峙させられている気分だからだ。

  財布から五百円玉を取り出して、商人の手の上に乗せると、商人はニタリと不気味な笑顔を見せてくる。

  「不用心だな。俺がこのまま手を握れば、返す保証はないぞ?」
  「僕はあなたを信用してそれを渡した……あなたがそのまま返さないのであれば方法は他にあります」

  『引くわけにはいかない』と何度も自分に言い聞かせて自身を鼓舞こぶをする。

  商人は手の平に置かれた五百円玉を観ると、目を大きくして、思わず口からよだれをこぼす。

  よだれをすすり、五百円玉をながめる商人の瞳は、先ほどのモノとは違い、まるで少年が珍しいものを見つけて興奮し、目を輝かせるように商人の瞳に映る五百円玉は商人の心を魅了するには十分過ぎるほど美しかった。

  「こいつをどこで?」

  嬉しそうに話す商人。だが、ここでそれが貨幣と説明しても納得はしないかもしれない。どう説明する……なんて言えばいい。

  「そ、それは……」

  僕は商人が納得する事の出来る言葉を口には出せなかった。

  だけど、商人は『くっくっく』と笑い、商人は僕に理由を尋ねるわけでもなく、独り言を話す。

  「貴族がこんなのを持ってた気がするな、姿からして、それだけ肉が付いている奴はそうはいねぇ」
  「食べすぎですよね」

  苦笑いで誤魔化ごまかす事しかできなかった。でも、商人はこちらに顔をむけると尋ねてくる。

  「どこぞの貴族の息子が家を飛び出した時に、路銀ろぎんとしてくすねてきたんだろう。なぁそうだろ? この植物の彫り物は家紋に違いない」

  「ば、ばれてるようで……」

  話にのるしか方法はない。足元を見られても仕方がない。今は商人からの審判を待つだけだ。

  「そうだなぁ……貴族の物なら貴重品だ。それに綺麗でこんなに繊細な細工がほどこされている物は珍しい」

  商人は硬貨を地面に置いて、両手を僕に突き出した。そこには両手の親指を折って『8』の数字を表すように、8本の指を立てる。

  「こいつでどうだ?」
  「8ですか……」
  「8タルクもあれば路銀には困る事はねぇ」
  この『8』という数字は何を表している? 八百円? それに『タルク』とは何だろうか?
  「もう一枚あるとしたら?」
  「それなら同じ8で買い取ってやるよ」
  「で、ではそれでお願いします」

  そう言って僕はもう一枚五百円玉を取り出し、商人の前に置く。

  「そ、そのお礼と言いますか、これもどうぞ」
  「あん?」

  商人はゴソゴソと袋を取り出し、ジャラジャラと金属がぶつかり合う音が鳴る袋を二つ僕の目の前に置き、僕はお礼として百円玉を一枚渡すと、商人は驚く。

  「こいつは……!? いいのか?」
  「僕を相手してくださったお礼です」
  「話の分かる貴族様でよかったぜ……取引は成立だ。また何かあれば贔屓ひいきにしてくれよ」
  「はい、ありがとうございます」

  僕は大きな袋を両手に抱えて、立ち去るけど、商人の目には僕が貴族に映っていたようだ。珍しい物を持っていた事と、この太った体格が助けになったのかもしれない。

  それでも緊張の張り詰めた形相は変わらず、ミラの待つ場所に戻る。

  「マル!」

  ミラは心配した様子で僕に声を掛けてくれる。力なく笑う僕に、少し落ち込んだ表情を見せる。けれど、ミラが目線を下に向けようとした時に目に入った大きな袋が二つ。

  「こ、これ……もしかして?」
  「うん、なんとか買い取ってくれたみたい」

  袋の大きさにぎょっと驚くも、僕とミラは肩の力が抜けたのか、一瞬だけ足をよろめかせ、ぶつかる寸前だった。

  「ミラ、これでご飯が買えるかな?」

  僕の心配事はそこだった。このお金がどのくらいの価値があるのかを知らなかった事から来たもので、心配事の種はつきない。

  「何言ってるのよ! 大金よ!?」
  「大金……?」
  「色んなものが買えるわ!」

  その一言が僕を救ってくれる。今はあの商人には感謝をしたい。たとえ、足元を見られていたとしても、取引に応じてくれたのだから。

  「ところで8タルクの袋が二つなんだけど」
  「何を売ったらそんなお金になるのよ!?」

  ミラの驚いてる表情にはどんな理由があるのだろう?
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