何でも屋

ポテトバサー

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第一章:廃工場の謎

ヘンテコ虫、飛び立つ

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修「問題の部屋は二階なんですよ」

門松「二階の左側からビンビンと……」

修「右だよ! 右奥!」

門松「………はーい」

 一同は階段を無事に上がり終え、二階の右奥の部屋へと入っていった。

修「えーっと、電気電気……」

 修は部屋に入るなり、壁のスイッチを押して明かりをつけた。部屋は白い蛍光灯で無機質に照らしだされ、段ボール箱が二つ三つ置かれただけの空間はどことなく不気味だった。

渡「修の話だと、この部屋の奥にもう一つ部屋があるってことだよね?」

修「そうだけど、この間ここを片付けたときは気になるような所はなかったけどなぁ。なぁ大先生?」

重「うん、特には無かったね」

門松「えっ? 隠し部屋があるの? ここに?」

知哉「敬語やめたんだ?」

門松「あっ………」

 渡は頼りない門松を無視して部屋の奥の壁に近づくと、端のほうからノックをして音を確かめ始めた。

修「あ、なるほどな」

 修もまねして壁をノックして調べ始める。

渡「うーん、どこ叩いても同じ音だし、軽い音もしないねぇ」

修「かといってコンクリの音って感じもしないよな?」

渡「そうだね」

門松「あの壁の上の中央にある輪っかは何でしょうね?」

 門松に言われて四人が壁上部を見てみると、違和感のある小さな輪っかが壁から突き出ていた。

重「本当だ、なんだろう? ちょっと知ちゃん、背が高いんだから近くに行って見てみてよ」

知哉「おう」

 嫌な雰囲気を感じながら知哉は近づいてみた。

知哉「金属で出来てるなぁ。南京錠の輪っかのとこみたいな感じだよ」

修「…………あ、わかった」

 修はそういうと部屋を出て階段を慌ただしく降りて行った。そしてまた慌ただしく階段を上って部屋に戻ってきた。

修「これ使って引っ張ってみようぜ?」

 修が持ってきたのはシャッターを下ろすときに使う棒だった。修はその棒を知哉に渡すと腕を組んだ。

知哉「なんで俺なんだよ?」

修「こういう時にその背の高さを活かさないでいつ活かすんだよ?」

知哉「………じゃあ活かすか」

 知哉はその棒の金具をうまい具合に輪っかに引っ掛けると、少しだけ力を入れて手前に引いてみた。

知哉「おっ?」

 すると金具の付いた壁はギギッと音を立てて少しだけ手前に動いたのだ。互いの顔を見合う一同は壁から距離を置いた。

渡「いま壁の上のほうが動いたよね?」

知哉「おう、でも下のほうは動かなかったってことは、俺たちのほうに倒れるのか?」

修「そうかもな…… よし、それじゃそのまま引っ張ってくれ」

知哉「行くぞ?」

 知哉が棒に力を入れて引っ張ると、渡の予想通り壁が手前に倒れはじめた。壁は思っていたよりも薄くできており、ベニヤ板のような素材に壁紙をつけた簡単なもので、知哉が力を入れた後は床に向かってゆっくりと自然に倒れた。

重「うわ…………」
知哉「うわ…………」

 少しだけ舞い上がったホコリを手で払いながら二人は同時に声を出した。

渡「……修、これはかなりのもんだよ?」

 新たに現れた壁は比較的きれいなものの、壁中央に現れたドアは目を覆いたくなるような酷さだった。それでも確認のために修はドアに近づいた。

修「くぅ、これはスゴイな…… なんだよコレ?」

 全体的に錆付いたドア。ところどころは赤く錆ており、そのザラついた表面には何かわからないものが付着していた。

知哉「どんなふうにしたらこんなになるんだよ?」

 知哉はドアに近づくと手にしていた棒でドアを軽く叩いてみた。すると叩くたびに錆や付着物が棒にこびりついた。

知哉「なぁ修、相当ヤバイぞ?」

修「ここまで来て退くわけにはいかないだろ。いざって時には門松もいるんだから大丈夫だろ、なぁ門松?」

 修が振り返るもそこに門松の姿はなく、代わりに一枚の紙切れが床に置かれていた。その紙には文鎮の代わりに小型の木魚が置かれていた。

修「おいシゲ、なんて書いてあんだ?」

 言われた重は木魚と共に紙切れを拾い上げた。

重「えーっと、『私では手に負えないようです。また何かありましたらご連絡ください』だって……」

修「あの野郎……」

重「追伸、木魚はお貸しいたします」

修「だったら叩く棒も置いてけよバカ坊主! ……ったく、こうなったら俺達だけでやるぞ」

 修はビニール袋をしっかりと持ち、ドアの前に立った。

渡「はーあ、やるか……」

 渡は修の後ろに立った。

知哉「ニンニクが効くといいんだけどな……」

 バケツと柄杓を手に、渡の右隣に並ぶ知哉。

重「まぁ、やるしかないね……」

 小型の木魚を手に、渡の左隣に並ぶ重。

渡「その木魚いる?」

重「ないよりはマシかと思ってね」

修「叩く棒がないのにどうすんだよ?」

重「うーん、まぁ、手でペチペチ叩いてみるよ」

修「………まあいいや、よし、それじゃドア開けるぞ?」

 修は恐る恐るドアノブを回すと、ゆっくりドアを前に押した。

修「あれ? 鍵かかってんのか?」

知哉「蝶番ちょうつがいを見ろよ、引くんだろ多分」

修「あ、そうかも」

 修はそう言って、軽率にドアを手前に引いた。

渡「バカ! ゆっくり開けなさいよ!」

 渡がすぐに言ってくれたおかげで、修はすぐにドアを戻すことができた。

知哉「あぶなっ!」

重「何を考えて‥」

修「わりぃわりぃ、違うんだよ。なんか…… なんかスッて引いちゃったんだよ。もしかしたら誰かに呼ばれてるのかもぉ!」

 空気が和らぐかと思った修の予想はきれいに外れた。

修「はい、それじゃ、ゆっくり開けます……」

 修が慎重に力を入れると、不気味な金属の摩擦音と共にドアはゆっくりと動き始めた。それを確認した修は、さらに力をいれてドアを完全に開いた。

修「……暗いな、やっぱり。しかも何か臭いぞ?」

 部屋に一歩だけ踏み込んだ修は近くの壁の電気スイッチを手探りで見つけた。しかし、何度スイッチを押してみても電気は点かなかった。

渡「蛍光灯が切れてんだね、まあ、使われてないから無理もないけど……」

修「明かりがないんじゃどうしようもないぞ?」

重「それなら大丈夫だよ」

 重は後ろに振り返ると、部屋の隅に置いておいた紙袋のもとに歩み寄った。どうやら木魚の他にも何かを入れておいたようである。

重「これ使って」

 戻ってきた重は大型の懐中電灯を修に手渡した。

修「おっ、準備がいいな。しかもマークライト社のじゃん!」

知哉「おぉ、よく映画とかで見るやつだ」

渡「いいから早く点けなさいよ」

修「わかってるよ」

 修はライトを点けると、真っ暗な部屋の中を照らしてみた。灯りに照らしだされたのは散乱したゴミの数々。どうやら臭いの原因はそれらしかった。
 朽ちた段ボール箱や口が閉じられたビニール袋を足でどかしながら、四人は一歩一歩と奥に進んでいった。

知哉「汚いな……」

 四人は時折身震いをした。部屋が汚いこともあるが、部屋の温度がなぜか異常に低いためでもあった。

渡「うおっ!」

 渡の驚きの声に他の三人が驚いてしまった。

修「なんだよ!?」

渡「今そこの段ボールのとこ、なにか動かなかった?」

 嫌な事を言うなと思いながら、修はその方向へライトを当ててみる。

修「うーわ、何あれ?」

 段ボール箱の上にはコンビニ弁当の空き箱が置いてあり、ひどく腐敗していた。しかし、その弁当箱に対して修は声を出したのではない。

修「ハ、ハエ? じゃないな。な、うーわ何だよあの虫?」

 虫に詳しい修ですら見たことのないヘンテコ虫がそこにはいた。カナブンと同じくらいのサイズで、黒と黄色のストライプ、目は熟れた木苺に似ており、ハエのような羽をしていたがトンボの羽の大きさほどもあった。

修「いいか? 変に刺激を与えるなよ? あんなのがお前、飛んだりしたら……」

 期待に応えるかのようにヘンテコ虫は飛び上がり、修たちの目の高さまで上昇すると、ホバリングをして空中で静止した。

重「うぅっ…… ヤバイんじゃな……」

 重が言い終える前にヘンテコ虫は四人のほうへ勢いよく向かっていった。

四人『うわぁっ!!』

 それはもうパニック発動である。渡は知哉から柄杓を奪い取ると、パニックに身を任せ振り回し始めた。

渡「ひー! 来るな、来るなぁ!」

修「バカ! 振り回すんじゃねぇ! イテッ!」

 柄杓がパコッと修の頭に当たった。

知哉「おい、やめろって!」

重「もうヘンテコ虫いないから、落ち着いてよ!」

渡「来るな! 来るな!」

 修からライトも奪い取った渡は、柄杓とライトの二刀流となった。

修「このバカ! 落ち着けっての!」

 柄杓で強かにやられた修が加わり、ようやく渡はパニックから抜け出した。

修「ったく、落ち着いたのかよ?」

渡「ごめん…… やっぱ虫はダメだ?」

 なぜか渡の口調は尻上がりになった。

知哉「どうしたよ教授さん?」

 奪い取ったライトが当たる部屋の奥を見つめたまま、渡は固まってしまった。残りの三人は嫌な予感しかしなかったが、恐る恐るその方向へと振り返った。

修「んぐっ」

 修はよくわからない声を漏らしたが、それは無理もないことだった。ライトの先にはこちらに背を向けた黒い人影があったのだ。渡同様に三人も固まってしまった。

人影「………………」

 突然、黒い人影はその場でクネクネと動き出したかと思うと、そのままの体勢でスゥーとこちらに移動してきた。内海さんの言う『むーんうぉーく』である。

知哉「うおっ!」

 知哉が絞り出した声をきっかけに、四人は部屋の外に出ようと試みた。恐怖で思うように体が動かなかったが、四人とも何とか部屋の外に出ることができた。がしかし、先頭の重の足がもつれると、四人はだらしなくその場に倒れこんでしまった。

渡「何してんだよ大先生!」

重「ゴメンゴメンゴメン! ハゥッ!」

 重は出てきた扉のほうを指さした。重のせいで倒れてしまった三人がそのままの姿勢でドアのほうに目をやると、黒い人影が部屋の外に出てきていた。四人は声を出せずにいた。

人影「…………………」

 体をくねらせていた人影はピタッと動きを止めると、ゆっくりと焦らすように四人のほうへと振り向き始めた。恐ろしさに支配され身動きの取れない四人は、人影から目をそらすことも出来ないでいた。そして次の瞬間、人影は素早く振り向き、四人に顔を見せた。

四人『ぎゃーーーっ!』

 恐るべき人影の顔。顔面は蒼白、異様に赤くなった唇、目の周りにはおかしな模様が浮き出ており、恨めしそうな表情で四人を見つめる。

四人『ぐわぁーーーっ!』

 それはもう真・パニック発動である。渡は持っていたライトを力いっぱい人影に投げつけた。

人影「イタッ!」

 ライトが顔に命中すると、人影は床にうずくまった。パニック状態ではあったが、こちらの攻撃が当たると知った修はがむしゃらに岩塩を投げつけ始めた。

修「この野郎! この野郎!」

 知哉も渡から柄杓を奪い返すと、フタを開けておろしニンニクを勢いよくかけ始めた。

知哉「くらえ!」

 渡は何とか起き上がると、人影を中心に回りながら、無心で踊り始めた。

渡「ヨーミヨーミミンミンミン、ケールマーニモンペ!!」

 頼りの門松を失ってしまった重は、木魚をペチペチと叩きながら思いつく言葉を叫んでいた。

重「神色自若しんしょくじじゃく! 鬼哭啾啾きこくしゅうしゅう! 周章狼狽しゅうしょうろうばい! 抜本塞源ばっぽんそくげん!」

 四人はそれぞれの方法で人影に立ち向かった。

人影「ちょっと、痛い! やめて! やめてください!」

 近距離で岩塩を投げつけられていた人影の懇願こんがんは無我夢中の修の耳には届かなかった。

人影「痛い! 痛い! ごめんなさい、許し…… ぎゃー! 目がぁ!」

 どうやら知哉の放つおろしニンニクが人影の目を襲ったらしく、悶絶する人影。もうそれは人影ではなく、ただの男だった。そんな男の周りをぐるぐる回りながら踊り続ける渡。さらにその後ろを木魚片手の重が見様見真似で踊りながらついていく。

男「もう許してくださいぃ!」

 とっくに泣きの入ってる男、そして相対する何でも屋達のパニックが頂点に達したその時だった。

おじさん「昨日注意したばっかりだろ!」

四人『ぎゃーーーーっ!』
男「ぎゃーーーーっ!」

 昨日、注意に来たおじさんのとんでもない大声に、パニックの絶頂にいた四人と男は気絶してしまった。おじさんは『また気絶しちゃったよ』とポリポリ頭をかいた。
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