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08_姉上の婚約者は心配性
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トール様のエスコートを待たずにさっさと馬車から降りて見上げるほどに高く聳え立つ城門に駆け寄ったら当たり前だけど門番に止められてしまった。
まぁ、当然か。
そんな僕に呆れながらゆったりと馬車を降りたトール様が門番に懐から何かを取り出して見せればあっさりと城門を開けて貰える。
たぶん王族である証明のなにかなんだろうけど。
「わざわざ門を開けなくても通用口とかからでもいいのに、王族は大変ですね」
と思ったことをそのまま言葉にしたらまたトール様が吹き出して肩を震わせて笑っている。
「守るものが多いからね。守られる不自由さもそれなりにあるのさ。それは君も同じだろう?」
「…さぁ、うちは割と姉様があんな感じなので必要最低限こなしていれば自由がきくので」
「君の必要最低限の定義は他の人が求める必要最低限より果てしなく高い気がするんだけど…」
「領地運営に貴族として作法と教養、多少の護衛術が使えるくらいの武芸、あとは芸術を楽しめる審美眼くらいは侯爵家としては普通かと」
「…君の場合は王太子妃レベルまでその年で達してるってことを柱脚を付けないといけないほど何だけどねぇ。どうしてこうも自己評価が低いんだか」
何かをトール様が呟いていたけど、そんな事は気にしていられない。
干潮のこの時間帯にしか確かめられない事があるから。
王都を囲うように川が流れているため、王都をぐるりと囲んだ外壁の向こう側には5つの渡橋があり、その数だけ外門が設置されている。
僕はアカデミーに近い東南の門に掛かった石橋の淵に手を着いて、干潮の間だけ見える地層を確認する。
あぁ、やっぱり。一番上の地層は埋立の時に砂利や砂で固めた後があるけど、そのすぐ下の地層だけ薄茶色で湿気を多く含んでいるようにも見える。
後は王都の南側は海になっているのだけれど、その反対は北側は山岳地帯が広がり、北から南にかけてなだらかな下り坂になっている。
だから、アカデミーの北西にある橋との高低差は結構なものである。
石橋の手摺りに前のめりになって上を見たり下を眺めたりしていると、ふわりと後ろから腰を抱き止められてしまった。
「夢中になるのはいい事だけど、ここの手摺りは低いから危ないよ」
「…トール様、心配しなくても大丈夫ですよ。僕、泳げますし」
「そのワンピースで?」
「……たしかに」
「でしょ?」
「それはそうと、まだ用事が済んでないので離して貰えます?」
「…考えが纏ったらちゃんと説明してくれると約束するなら」
「もちろんです!それにトール様あっての計画ですもん」
にかっ、と笑みを向ければあっさりと手を離してくれたので門の詰め所まで小走りに駆けていく。
もう少し上の方まで見回るためには馬を借りなくちゃ。
詰め所にいた人のうち身なりの良さそうな人に姉様の名を名乗り、馬を借りれないか交渉してみれば
最も簡単に承諾して貰えた。
さすが姉様!
それから門番の人が蔵から馬を出してくれて、その手綱を受け取った。
そんな僕の様子を伺うトール様に視線をおくれば何かを察して急足でこちらに向かってきてくれる。
トール様のこういうフットワークの軽いところというか、変に気を遣わなくていいところは一緒に過ごしててホント楽なんだよなぁ。
…本来は敬うべき相手なんだけども。
「上の方の地層も確認したいので、ちょっと馬で周囲を見てきますね」
なので、少し待っていて欲しいと伝えるつもりが、馬の手綱をいつの間にか奪われ、僕が唖然としてる間にトール様は僕が連れてきた馬に乗馬するとぬいぐるみでも抱き上げるくらいに安易と僕を抱き上げ、僕を後ろから抱きしめるようにして馬に乗せてしまった。
「それで?どこから見ようか?」
「…………えっ?!僕ひとりでいくつもりだったんですけど?!」
「俺を置いていっちゃうの?…泣いちゃうなぁ」
「泣かないでしょ」
「リューに置いてかれたらさすがに泣く。帰ってくるまでずっと泣く」
「国中がドン引きです。やめて下さい」
「だったら、1人でどっかに行ってしまわないでね。絶対に」
腰を支える手がぎゅっとなって、肩口に頭が埋められる。
ふわふわで柔らかいグレーの髪が首元に当たって少しくすぐったい。
だけど
僕と同じように姉様がいなくなって、トール様も寂しかったんだろうか。
あんな思い、もうしたくないと思えるほどに苦しいと感じることもあったのだろうか。
そう思ったら、僕も切なくなって肩に乗っかったグレーのふわふわな髪をぐしゃぐしゃと撫でて
「僕はここにいます。いなくなったりしませんから」
それから、手綱を握る殿下の手に手を添えて
「心配なら一緒についてきて下さい。でもあんまりボヤボヤしてると置いていきますんで」
代わりに手綱を握って軽く引く。
馬にわかるよう、腹のあたりを軽くポンと足で小突いて進ませる。
動き出した馬にハッとなってやっとトール様は前を向いてくれた。
「…置いていかれないようにしっかり捕まえて置かないとね」
「捕まえなくても見守るだけでもいいんですけど?」
「それだと心配なんだよ」
【連絡事項】
明日2/23は更新をお休みさせて頂きます。
まぁ、当然か。
そんな僕に呆れながらゆったりと馬車を降りたトール様が門番に懐から何かを取り出して見せればあっさりと城門を開けて貰える。
たぶん王族である証明のなにかなんだろうけど。
「わざわざ門を開けなくても通用口とかからでもいいのに、王族は大変ですね」
と思ったことをそのまま言葉にしたらまたトール様が吹き出して肩を震わせて笑っている。
「守るものが多いからね。守られる不自由さもそれなりにあるのさ。それは君も同じだろう?」
「…さぁ、うちは割と姉様があんな感じなので必要最低限こなしていれば自由がきくので」
「君の必要最低限の定義は他の人が求める必要最低限より果てしなく高い気がするんだけど…」
「領地運営に貴族として作法と教養、多少の護衛術が使えるくらいの武芸、あとは芸術を楽しめる審美眼くらいは侯爵家としては普通かと」
「…君の場合は王太子妃レベルまでその年で達してるってことを柱脚を付けないといけないほど何だけどねぇ。どうしてこうも自己評価が低いんだか」
何かをトール様が呟いていたけど、そんな事は気にしていられない。
干潮のこの時間帯にしか確かめられない事があるから。
王都を囲うように川が流れているため、王都をぐるりと囲んだ外壁の向こう側には5つの渡橋があり、その数だけ外門が設置されている。
僕はアカデミーに近い東南の門に掛かった石橋の淵に手を着いて、干潮の間だけ見える地層を確認する。
あぁ、やっぱり。一番上の地層は埋立の時に砂利や砂で固めた後があるけど、そのすぐ下の地層だけ薄茶色で湿気を多く含んでいるようにも見える。
後は王都の南側は海になっているのだけれど、その反対は北側は山岳地帯が広がり、北から南にかけてなだらかな下り坂になっている。
だから、アカデミーの北西にある橋との高低差は結構なものである。
石橋の手摺りに前のめりになって上を見たり下を眺めたりしていると、ふわりと後ろから腰を抱き止められてしまった。
「夢中になるのはいい事だけど、ここの手摺りは低いから危ないよ」
「…トール様、心配しなくても大丈夫ですよ。僕、泳げますし」
「そのワンピースで?」
「……たしかに」
「でしょ?」
「それはそうと、まだ用事が済んでないので離して貰えます?」
「…考えが纏ったらちゃんと説明してくれると約束するなら」
「もちろんです!それにトール様あっての計画ですもん」
にかっ、と笑みを向ければあっさりと手を離してくれたので門の詰め所まで小走りに駆けていく。
もう少し上の方まで見回るためには馬を借りなくちゃ。
詰め所にいた人のうち身なりの良さそうな人に姉様の名を名乗り、馬を借りれないか交渉してみれば
最も簡単に承諾して貰えた。
さすが姉様!
それから門番の人が蔵から馬を出してくれて、その手綱を受け取った。
そんな僕の様子を伺うトール様に視線をおくれば何かを察して急足でこちらに向かってきてくれる。
トール様のこういうフットワークの軽いところというか、変に気を遣わなくていいところは一緒に過ごしててホント楽なんだよなぁ。
…本来は敬うべき相手なんだけども。
「上の方の地層も確認したいので、ちょっと馬で周囲を見てきますね」
なので、少し待っていて欲しいと伝えるつもりが、馬の手綱をいつの間にか奪われ、僕が唖然としてる間にトール様は僕が連れてきた馬に乗馬するとぬいぐるみでも抱き上げるくらいに安易と僕を抱き上げ、僕を後ろから抱きしめるようにして馬に乗せてしまった。
「それで?どこから見ようか?」
「…………えっ?!僕ひとりでいくつもりだったんですけど?!」
「俺を置いていっちゃうの?…泣いちゃうなぁ」
「泣かないでしょ」
「リューに置いてかれたらさすがに泣く。帰ってくるまでずっと泣く」
「国中がドン引きです。やめて下さい」
「だったら、1人でどっかに行ってしまわないでね。絶対に」
腰を支える手がぎゅっとなって、肩口に頭が埋められる。
ふわふわで柔らかいグレーの髪が首元に当たって少しくすぐったい。
だけど
僕と同じように姉様がいなくなって、トール様も寂しかったんだろうか。
あんな思い、もうしたくないと思えるほどに苦しいと感じることもあったのだろうか。
そう思ったら、僕も切なくなって肩に乗っかったグレーのふわふわな髪をぐしゃぐしゃと撫でて
「僕はここにいます。いなくなったりしませんから」
それから、手綱を握る殿下の手に手を添えて
「心配なら一緒についてきて下さい。でもあんまりボヤボヤしてると置いていきますんで」
代わりに手綱を握って軽く引く。
馬にわかるよう、腹のあたりを軽くポンと足で小突いて進ませる。
動き出した馬にハッとなってやっとトール様は前を向いてくれた。
「…置いていかれないようにしっかり捕まえて置かないとね」
「捕まえなくても見守るだけでもいいんですけど?」
「それだと心配なんだよ」
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明日2/23は更新をお休みさせて頂きます。
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