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第一章 魔王と英雄
#002 英雄、ライア=ドレイク その2
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魔力──それは精神のエネルギー。
強い思いや感情が、そのまま敵を打ち倒す力に変わる。
例えば、目の前にいる魔獣を殴り飛ばしたいとマジに思えばどうなるのか?
ドゴンッ!
真上から脳天をぶっ叩かれた魔獣は、地面と熱いキスをかましながら血反吐をぶち撒け息絶えた。
普通なら、銃を持った兵士が十人がかりで勝てるかどうかっていう相手だ。
それを俺が魔力で強化した拳でブン殴っただけで、一撃で絶命させられる。
我ながらとんでもないパワーだ。
この魔力を自在に操る技術を、人は”魔術”と呼ぶ。
魔術を使いこなせば、いずれ人智を越えた奇跡だって自在に扱えるようになれるそうだが、今の俺にそこまでの実力はない。
でも今この状況ならそれで十分だ。
このまま俺が片っ端から魔獣を狩っていけば、大勢の人間が助かる。
俺の後ろで震えてる連中だってそうだ。
普通の母子と銃を持った兵士一人じゃ放って置けないと思い、兵士に声をかける。
「そこのアンタ」
「……は、はい!」
俺が真顔で声をかけると、素っ頓狂な驚き方をする兵士。
どうやら俺が何者かを知っているようで、必要以上に畏まっているようだ。
さっき、俺のことを英雄だのなんだのと言っていたのは全部聴こえていた。
だが俺は別に功績や名声が欲しくて戦っていたわけじゃない。
今度は下手に警戒されないよう、なるべく優しい笑顔で言ってみる。
「ともかく、そっちの二人を連れて避難所に向かってください。大丈夫、避難所は俺の仲間が守ってるんで安全です」
「わ、分かりました……ライアさんも、お気をつけて」
俺の言葉を聞いて、すぐに母子を抱き上げてその場を立ち去る兵士。
よかった、このまま無事見送ることができれば……
なんて考えもしたが、そんなことは意にも返さない残りの魔獣どもが、間髪入れず俺に向かって一斉に襲いかかってくる。
「たく、少しは大人しくしとけよ……犬っころ」
吐き捨てるように言って、まずは最初に突っ込んできた一匹目の顔面を蹴り上げる。
続けて二匹三匹と、魔力を込めた打撃で確実に仕留めていく。
目に見える範囲の魔獣を全部片付けるのに、そう時間はかからなかった。
そこまで疲れていないが、キリがいいし体を伸ばして休んでいると、
「ほう。人間如き下等種族の街一つ、簡単に墜とすことができると思っていたが……」
明らかに雰囲気の違う敵が姿を現した。
蜘蛛のような顔と、八本の手足を持った二足歩行の化け物。
「”魔獣人”だな」
俺はそう判断し、目の前の相手に問いかける。
「その通りだ」
答えを聞いて、俺は気合を入れ直すように構えを取る。
魔獣人は魔族の中の上位種、魔獣の何倍も厄介な相手だ。
魔術を扱うのは当然として、魔獣人は魔獣と違って高い知能を備えている。
先程の魔獣たちの指揮を取っていたのがこの魔獣人だ。
「貴様、我が魔獣人だと理解しておきながら立ち向かってくるのか?」
言いながら、魔獣人が俺に向かって特大の殺気を飛ばしてくる。
殺気も精神の一部、つまり純粋な魔力の塊だ。
「へぇ、強そうだなアンタ」
「言っておくが、人間如きに勝ち目はないぞ?」
既に勝ち誇ったような態度で、腕を組みながら上から目線で物を言う魔獣人。
腕組みを解いた次の瞬間、一瞬で魔獣人が俺の目の前まで距離を詰める。
……早い。
魔術で脚力を強化したことによる、圧倒的スピードに反応が遅れてしまった。
その隙をついて、魔獣人渾身の魔力を込めた圧倒的破壊力のパンチが、俺の顔面に向かって放たれる。
グシャア!
魔獣人の攻撃が俺の顔面にクリーンヒット。
溢れ出す血、血、血。
「バ、バカな!?」
骨が粉々に粉砕され、血が溢れ出す自分の腕を押さえながら、困惑した表情で驚きの声をぶちまける魔獣人
ダメージを受けたのは魔獣人の方で、俺は無傷。
毛ほどのダメージもなくピンピンしてる。
どうしてこうなったのか仕組みは簡単だ。
敵が拳に込めた魔力量より多くの魔力を纏って、顔の防御力を釣り上げた。
魔獣人が俺の顔面を殴った結果、普通の人間が素手で鋼鉄をぶん殴った時のように、反動で拳がぶっ壊れたわけだ。
今度は俺が勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべると、魔獣人が俺の顔を睨みつけてくる。
「何故だ何故だ何故だ何故だァァァ! このちっぽけな人間の小僧が! 何故、魔族の我より優れた魔術を扱えるのだァァァ! 認めん! 我は認めんぞォォォ!!!」
「うるせーなぁ。じゃ、実際に食らって確かめてみろよ」
言って、今度は俺が自分の拳に全魔力を纏わせる。
俺が全力で魔力を込めるだけで、辺りの空気が一気にピリつくのを感じた。
先程、魔獣人が放った殺気とは比べ物にならないエネルギー量だ。
それをモロに食らって、魔獣人は今にも小便チビりそうな絶望の表情でビビり散らしてやがる。
「や、辞めろ! 分かった! 我と貴様の実力差は良く分かった! 負けを認める! だから、命だけは勘弁してくれ!」
「心配すんな、殺しはしねぇよ。聞きたいことがあるんでな」
命乞いを半分無視して、魔獣人の顔面を殴り飛ばそうと拳を振り上げた瞬間、
「女、情報でもなんでも吐いてやる! 俺は”魔王様”に認められた男だ! どんな情報だって俺なら教えてやれるぞ!」
「”魔王様”、だぁ……?」
刹那、魔獣人の言動にブチギレた俺の全力パンチが、ドストレートで魔獣人の顔面に炸裂する。
「”アリシア”が、テメェみたいなクソを認めるわけがないだろうがッッッ!!!」
ボチュンッッッ!!!
圧倒的破壊力を誇る俺の全力パンチが魔獣人に命中すると、血溜まりだけを残して体はその場から跡形もなく消え去った。
「あ、ヤベ!? 聞きたいことがあったのに殺しちまった!」
魔力とは精神のエネルギー。
怒りのように純粋な感情は、魔力出力を大きく引き上げる要因となる。
「ああ、マズい……このままじゃ……」
俺は”ご主人様”の言いつけを守れなかったことに対する申し訳なさと、溢れ出る”興奮”で赤面しながら、ニヤリとした表情で頭を抱える。
「アリシア様に叱られてしまう……ッ!」
強い思いや感情が、そのまま敵を打ち倒す力に変わる。
例えば、目の前にいる魔獣を殴り飛ばしたいとマジに思えばどうなるのか?
ドゴンッ!
真上から脳天をぶっ叩かれた魔獣は、地面と熱いキスをかましながら血反吐をぶち撒け息絶えた。
普通なら、銃を持った兵士が十人がかりで勝てるかどうかっていう相手だ。
それを俺が魔力で強化した拳でブン殴っただけで、一撃で絶命させられる。
我ながらとんでもないパワーだ。
この魔力を自在に操る技術を、人は”魔術”と呼ぶ。
魔術を使いこなせば、いずれ人智を越えた奇跡だって自在に扱えるようになれるそうだが、今の俺にそこまでの実力はない。
でも今この状況ならそれで十分だ。
このまま俺が片っ端から魔獣を狩っていけば、大勢の人間が助かる。
俺の後ろで震えてる連中だってそうだ。
普通の母子と銃を持った兵士一人じゃ放って置けないと思い、兵士に声をかける。
「そこのアンタ」
「……は、はい!」
俺が真顔で声をかけると、素っ頓狂な驚き方をする兵士。
どうやら俺が何者かを知っているようで、必要以上に畏まっているようだ。
さっき、俺のことを英雄だのなんだのと言っていたのは全部聴こえていた。
だが俺は別に功績や名声が欲しくて戦っていたわけじゃない。
今度は下手に警戒されないよう、なるべく優しい笑顔で言ってみる。
「ともかく、そっちの二人を連れて避難所に向かってください。大丈夫、避難所は俺の仲間が守ってるんで安全です」
「わ、分かりました……ライアさんも、お気をつけて」
俺の言葉を聞いて、すぐに母子を抱き上げてその場を立ち去る兵士。
よかった、このまま無事見送ることができれば……
なんて考えもしたが、そんなことは意にも返さない残りの魔獣どもが、間髪入れず俺に向かって一斉に襲いかかってくる。
「たく、少しは大人しくしとけよ……犬っころ」
吐き捨てるように言って、まずは最初に突っ込んできた一匹目の顔面を蹴り上げる。
続けて二匹三匹と、魔力を込めた打撃で確実に仕留めていく。
目に見える範囲の魔獣を全部片付けるのに、そう時間はかからなかった。
そこまで疲れていないが、キリがいいし体を伸ばして休んでいると、
「ほう。人間如き下等種族の街一つ、簡単に墜とすことができると思っていたが……」
明らかに雰囲気の違う敵が姿を現した。
蜘蛛のような顔と、八本の手足を持った二足歩行の化け物。
「”魔獣人”だな」
俺はそう判断し、目の前の相手に問いかける。
「その通りだ」
答えを聞いて、俺は気合を入れ直すように構えを取る。
魔獣人は魔族の中の上位種、魔獣の何倍も厄介な相手だ。
魔術を扱うのは当然として、魔獣人は魔獣と違って高い知能を備えている。
先程の魔獣たちの指揮を取っていたのがこの魔獣人だ。
「貴様、我が魔獣人だと理解しておきながら立ち向かってくるのか?」
言いながら、魔獣人が俺に向かって特大の殺気を飛ばしてくる。
殺気も精神の一部、つまり純粋な魔力の塊だ。
「へぇ、強そうだなアンタ」
「言っておくが、人間如きに勝ち目はないぞ?」
既に勝ち誇ったような態度で、腕を組みながら上から目線で物を言う魔獣人。
腕組みを解いた次の瞬間、一瞬で魔獣人が俺の目の前まで距離を詰める。
……早い。
魔術で脚力を強化したことによる、圧倒的スピードに反応が遅れてしまった。
その隙をついて、魔獣人渾身の魔力を込めた圧倒的破壊力のパンチが、俺の顔面に向かって放たれる。
グシャア!
魔獣人の攻撃が俺の顔面にクリーンヒット。
溢れ出す血、血、血。
「バ、バカな!?」
骨が粉々に粉砕され、血が溢れ出す自分の腕を押さえながら、困惑した表情で驚きの声をぶちまける魔獣人
ダメージを受けたのは魔獣人の方で、俺は無傷。
毛ほどのダメージもなくピンピンしてる。
どうしてこうなったのか仕組みは簡単だ。
敵が拳に込めた魔力量より多くの魔力を纏って、顔の防御力を釣り上げた。
魔獣人が俺の顔面を殴った結果、普通の人間が素手で鋼鉄をぶん殴った時のように、反動で拳がぶっ壊れたわけだ。
今度は俺が勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべると、魔獣人が俺の顔を睨みつけてくる。
「何故だ何故だ何故だ何故だァァァ! このちっぽけな人間の小僧が! 何故、魔族の我より優れた魔術を扱えるのだァァァ! 認めん! 我は認めんぞォォォ!!!」
「うるせーなぁ。じゃ、実際に食らって確かめてみろよ」
言って、今度は俺が自分の拳に全魔力を纏わせる。
俺が全力で魔力を込めるだけで、辺りの空気が一気にピリつくのを感じた。
先程、魔獣人が放った殺気とは比べ物にならないエネルギー量だ。
それをモロに食らって、魔獣人は今にも小便チビりそうな絶望の表情でビビり散らしてやがる。
「や、辞めろ! 分かった! 我と貴様の実力差は良く分かった! 負けを認める! だから、命だけは勘弁してくれ!」
「心配すんな、殺しはしねぇよ。聞きたいことがあるんでな」
命乞いを半分無視して、魔獣人の顔面を殴り飛ばそうと拳を振り上げた瞬間、
「女、情報でもなんでも吐いてやる! 俺は”魔王様”に認められた男だ! どんな情報だって俺なら教えてやれるぞ!」
「”魔王様”、だぁ……?」
刹那、魔獣人の言動にブチギレた俺の全力パンチが、ドストレートで魔獣人の顔面に炸裂する。
「”アリシア”が、テメェみたいなクソを認めるわけがないだろうがッッッ!!!」
ボチュンッッッ!!!
圧倒的破壊力を誇る俺の全力パンチが魔獣人に命中すると、血溜まりだけを残して体はその場から跡形もなく消え去った。
「あ、ヤベ!? 聞きたいことがあったのに殺しちまった!」
魔力とは精神のエネルギー。
怒りのように純粋な感情は、魔力出力を大きく引き上げる要因となる。
「ああ、マズい……このままじゃ……」
俺は”ご主人様”の言いつけを守れなかったことに対する申し訳なさと、溢れ出る”興奮”で赤面しながら、ニヤリとした表情で頭を抱える。
「アリシア様に叱られてしまう……ッ!」
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