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第一章 魔王と英雄
#006 従者、グロリア その2
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「ともかく、街を守ってくださりありがとうございます」
兵士の男が俺たち三人に向かって頭を下げる。
「他の兵士は残った魔獣の対処に出払っていますので、代表して私に礼を言わせてください」
「あらあら、そんなに畏まらなくても平気ですよ」
笑顔で応対するグロリアさん。
「大したことはやっておりませんので」
「あの量の魔族を倒して、大したこと……ない?」
目を丸くして驚いた表情で兵士が続ける。
「いやはや、お強い。それにしても皆様、いったいどのようなご関係で?」
俺に向かって尋ねる兵士。
「あなたは正真正銘本物のライア=ドレイク様、ですよね?」
「様付けなんてよしてください。俺はもう軍を辞めた身、ただの旅人です」
「……そうだったのですか」
納得した様子で首を縦にふる兵士。
「でしたら、そちらのお二人は? グロリアさんと、ツノの生えた可愛い女の子……ん、ツノ?」
兵士が疑問を持った瞬間、アリシアが即座にシュッとツノを消す。
「ああこれ、オシャレのアクセサリーなんですよ」
などと半笑いで苦しい言い訳をする俺。
「危ねぇ、うっかり魔術でツノ消すの忘れてたな……」
「余たちが魔族だとバレると、色々と面倒だからな……」
こっそり小声でアリシアとやりとりする。
魔族の王様がこんなところにいると知れたら、とんでもない騒ぎになる。
今そうなってしまったら非常に困るのだ。
「さて、そんなことより皆様お疲れでしょう?」
グロリアさんが声を出して、皆の視線を自分に集中させる。
ナイス援護です、ありがとうございますグロリアさん。
心の中で感謝しながら、アリシアに尻尾までしまってもらった。
自動で出し入れ可能と初めて知った時には、それはもう驚いたものである。
「ささやかではありますが、ここで私が料理を振る舞わせていただきます」
「それはありがたい。でしたら、我々もお手伝いを……」
民衆の一人がそう言うと、
「いえ、私一人で構いませんので。皆さんは休まれていてください」
そう断り、グロリアさんが魔術を発動した。
周囲が淡い光に包まれる。
その中で魔力によって物資が構築され、姿を現した。
「”魔戦術、女心は小宇宙”」
魔力とは精神のエネルギー。
そして魔術とは、その精神を具現化する技術のことをいう。
簡単に言えば、魔術とは願いを叶える能力なのだ。
だから魔術をある程度極めた使い手には、独自の能力が発現する。
それが”魔戦術”。
そしてグロリアさんの魔戦術は、グロリアさんが望む機能を内包した空間を具現化することができる能力。
しばらく待って光が完全に晴れると、何もなかったはずのその場所には、キッチンに必要なひとしきりの道具や機械類が揃っていた。
「さてと、あと必要なのはメインの食材です。ライアさん、魔獣の死体を持ってきてください」
「はーい」
「余もいくぞ!」
俺とアリシアが死体集めに出かけると、
「え、魔獣の死体を食べるんですか?」
驚く民衆たち。
確かに普通、人間が魔獣を食べる文化はない。
捕獲がすこぶる難しい上に、味も不味いからだ。
だが、その問題を解決するのがグロリアさんの魔戦術。
そしてグロリアさんの料理の腕。
グロリアさんの手にかかれば、魔獣も美味しく調理してくれると断言できる。
俺たちは安心して死体をかき集め、グロリアさんへ食材の山を提供した。
「ありがとうございます。これだけあれば、空間内に備蓄した他の食材と合わせて……」
すかさず調理を開始するグロリアさん。
手際良く肉の下処理を終え、別の具材と
しかも、空間内の物質はグロリアさんの意思で動かすことができるので、一人で同時に何十人前って分の調理を作り出していった。
たった数分で完了する調理。
出来上がった料理を皿へ盛り、民衆への供給が始まった。
「魔獣のお肉たっぷりカレーライスの完成です!」
巨大な鍋いっぱいに入ったカレーの香りが避難所内に満たされる。
スパイシーな香りの中に酸味を感じる、食欲をそそられる良い匂いだ。
その匂いの凄さたるや、匂いに釣られてさっきまで寝たきりだった重傷者も起き上がり、揃って供給の列に並ばせるほどだった。
「アリシア様とライアさんもどうぞ」
「ありがとうございます、グロリアさん」
「カレーだやったー! グロリア、ありがとうだぞ!」
お先にグロリアさんからカレーとライスの入った皿をもらった俺たちは、地べたに座り、手を合わせてから食事を始める。
「いただきます」
「いただきます!」
ルーとライスを少し混ぜてから、スプーンに乗せてパクッと一口。
「うめぇ!」
一口食べれば口いっぱいに広がる、スパイシーなルーの味と野菜の甘味、そして魔獣の肉とは思えない旨味だらけの油の味。
本来、魔獣の肉は硬い上にエグ味が強く、油なんて臭すぎて食べられたもんじゃない。
しかしグロリアさんの能力で長時間の調理を短時間で仕上げることによって、十分すぎるほど野菜から抽出された甘味が油の臭みを中和している。
スパイスも魔獣の肉に合ったものを選び、灰汁の処理も完璧。
おかげで魔獣の肉を噛むたび旨味が飛び出してくる。
しかも中にゴロゴロと肉の塊が入ってることで、たった一杯で感じる凄まじい満足感。
「旨い! やっぱりグロリアの料理は最高だぞ!」
俺もアリシアも大満足な、最高のカレーライスが完成した。
兵士の男が俺たち三人に向かって頭を下げる。
「他の兵士は残った魔獣の対処に出払っていますので、代表して私に礼を言わせてください」
「あらあら、そんなに畏まらなくても平気ですよ」
笑顔で応対するグロリアさん。
「大したことはやっておりませんので」
「あの量の魔族を倒して、大したこと……ない?」
目を丸くして驚いた表情で兵士が続ける。
「いやはや、お強い。それにしても皆様、いったいどのようなご関係で?」
俺に向かって尋ねる兵士。
「あなたは正真正銘本物のライア=ドレイク様、ですよね?」
「様付けなんてよしてください。俺はもう軍を辞めた身、ただの旅人です」
「……そうだったのですか」
納得した様子で首を縦にふる兵士。
「でしたら、そちらのお二人は? グロリアさんと、ツノの生えた可愛い女の子……ん、ツノ?」
兵士が疑問を持った瞬間、アリシアが即座にシュッとツノを消す。
「ああこれ、オシャレのアクセサリーなんですよ」
などと半笑いで苦しい言い訳をする俺。
「危ねぇ、うっかり魔術でツノ消すの忘れてたな……」
「余たちが魔族だとバレると、色々と面倒だからな……」
こっそり小声でアリシアとやりとりする。
魔族の王様がこんなところにいると知れたら、とんでもない騒ぎになる。
今そうなってしまったら非常に困るのだ。
「さて、そんなことより皆様お疲れでしょう?」
グロリアさんが声を出して、皆の視線を自分に集中させる。
ナイス援護です、ありがとうございますグロリアさん。
心の中で感謝しながら、アリシアに尻尾までしまってもらった。
自動で出し入れ可能と初めて知った時には、それはもう驚いたものである。
「ささやかではありますが、ここで私が料理を振る舞わせていただきます」
「それはありがたい。でしたら、我々もお手伝いを……」
民衆の一人がそう言うと、
「いえ、私一人で構いませんので。皆さんは休まれていてください」
そう断り、グロリアさんが魔術を発動した。
周囲が淡い光に包まれる。
その中で魔力によって物資が構築され、姿を現した。
「”魔戦術、女心は小宇宙”」
魔力とは精神のエネルギー。
そして魔術とは、その精神を具現化する技術のことをいう。
簡単に言えば、魔術とは願いを叶える能力なのだ。
だから魔術をある程度極めた使い手には、独自の能力が発現する。
それが”魔戦術”。
そしてグロリアさんの魔戦術は、グロリアさんが望む機能を内包した空間を具現化することができる能力。
しばらく待って光が完全に晴れると、何もなかったはずのその場所には、キッチンに必要なひとしきりの道具や機械類が揃っていた。
「さてと、あと必要なのはメインの食材です。ライアさん、魔獣の死体を持ってきてください」
「はーい」
「余もいくぞ!」
俺とアリシアが死体集めに出かけると、
「え、魔獣の死体を食べるんですか?」
驚く民衆たち。
確かに普通、人間が魔獣を食べる文化はない。
捕獲がすこぶる難しい上に、味も不味いからだ。
だが、その問題を解決するのがグロリアさんの魔戦術。
そしてグロリアさんの料理の腕。
グロリアさんの手にかかれば、魔獣も美味しく調理してくれると断言できる。
俺たちは安心して死体をかき集め、グロリアさんへ食材の山を提供した。
「ありがとうございます。これだけあれば、空間内に備蓄した他の食材と合わせて……」
すかさず調理を開始するグロリアさん。
手際良く肉の下処理を終え、別の具材と
しかも、空間内の物質はグロリアさんの意思で動かすことができるので、一人で同時に何十人前って分の調理を作り出していった。
たった数分で完了する調理。
出来上がった料理を皿へ盛り、民衆への供給が始まった。
「魔獣のお肉たっぷりカレーライスの完成です!」
巨大な鍋いっぱいに入ったカレーの香りが避難所内に満たされる。
スパイシーな香りの中に酸味を感じる、食欲をそそられる良い匂いだ。
その匂いの凄さたるや、匂いに釣られてさっきまで寝たきりだった重傷者も起き上がり、揃って供給の列に並ばせるほどだった。
「アリシア様とライアさんもどうぞ」
「ありがとうございます、グロリアさん」
「カレーだやったー! グロリア、ありがとうだぞ!」
お先にグロリアさんからカレーとライスの入った皿をもらった俺たちは、地べたに座り、手を合わせてから食事を始める。
「いただきます」
「いただきます!」
ルーとライスを少し混ぜてから、スプーンに乗せてパクッと一口。
「うめぇ!」
一口食べれば口いっぱいに広がる、スパイシーなルーの味と野菜の甘味、そして魔獣の肉とは思えない旨味だらけの油の味。
本来、魔獣の肉は硬い上にエグ味が強く、油なんて臭すぎて食べられたもんじゃない。
しかしグロリアさんの能力で長時間の調理を短時間で仕上げることによって、十分すぎるほど野菜から抽出された甘味が油の臭みを中和している。
スパイスも魔獣の肉に合ったものを選び、灰汁の処理も完璧。
おかげで魔獣の肉を噛むたび旨味が飛び出してくる。
しかも中にゴロゴロと肉の塊が入ってることで、たった一杯で感じる凄まじい満足感。
「旨い! やっぱりグロリアの料理は最高だぞ!」
俺もアリシアも大満足な、最高のカレーライスが完成した。
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