魔王、育てます! 〜俺のことが大好きな超絶可愛いロリっ子魔王様と一緒に世界征服イチャラブライフ!〜

イルティ=ノア

文字の大きさ
8 / 11
第一章 魔王と英雄

#007 夢の中で君を抱きしめる

しおりを挟む

 民衆も満足げな顔で、カレーライスを次々と平らげている。
 そして、グロリアさんの料理の凄いところはここからだ。

「むにゃむにゃ……ライア、余はなんだか眠くなってきたぞ」

 アリシアが突然ウトウトし始めたかと思えば、
 俺の膝上に頭を置いてすぐに寝むってしまった。

 辺りを見渡すと、料理を平げた人が次々とその場に倒れていく。
 これは決して危険な状態、というわけではない。

 グロリアさんの料理には、人体へ十分に栄養を摂取させ、
 後はゆっくり眠るだけで凄まじい回復力を発揮させる効力があるのだ。

 それこそ瀕死の重傷を負った怪我人が沢山いるこの避難所において、
 目覚めた頃には皆、一人残らず完治していることだろう。

「お疲れ様です。やっぱり凄いですね、グロリアさんの魔術は……」

 皆が寝静まった後、調理を終えたグロリアさんに声をかける。

「いえいえ、何度も言ってるでしょう? ライアさん、貴方が魔戦術を扱えるようになればきっと、私なんかよりもよっぽど強い能力が発現するはずです」

 微塵の疲れも見せずに答えるグロリアさん。

「だって、貴方はアリシア様の一番の下僕なのですから」

 そう、グロリアさんと俺が話していると、

「うぅ……ライア、どこだ……早く、きてくれ……余は、ここに……」

 アリシアが辛そうな顔で寝言を呟いた。

「おっと、ごめんなさいグロリアさん」
「ええ。私が見張りをしておくので、ライアさんは、ライアさんにしかできないことをお願いします」

 言って、笑顔でその場を離れるグロリアさん。
 調理を終わらせたばかりなのに、またすぐ見張りまで、か。
 
「まったくあの人には敵わないな……っと、先にアリシアを……」

 アリシアの体を優しく支えながら、その横で寝そべる俺。

 俺とアリシアは魂でリンクしている。
 だからアリシアがうなされてる悪夢の中に入ることができるのだ。
 
 グロリアさんのおかげで、目を閉じればすぐに眠れてしまう。
 ゆっくりと意識を闇の中へと沈めていき……

 ……少しずつ聞こえてくる、アリシアの声。
 視界の先に、ただひたすらに大粒の涙を流すアリシアが見えてきた。

 これが嘘偽りのない、アリシアの本心。

「どうして、どうしてみんな余を置いていく……」

 年相応の子供のように泣きじゃくるアリシア。

「ライアも、グロリアも……”父上”も……」
「……」

 アリシアの父親、先代魔王様は既に亡くなっている。
 母親はアリシアが顔すら見る前にいなくなってしまったそうだ。

 そんなもん、泣きたくなるに決まってる。
 アリシアは魔王である以前に、ただの女の子なんだ。
 
「もう、どうすればいいか分かんねぇよな」
 
 俺だって実の父親に裏切られて、むごたらしく殺されてるんだ。
 腹は立つし、悲しいし、憎しみに押しつぶされそうになった。

 ずっと心がモヤモヤしていた。
 いつまで経っても、それを晴らす方法が見つからないでいる。

 アリシアだってそうだ。
 何をどうすれば分からないから泣いているんだ。
 
「今は泣いていい、それでいいんだ」

 言って、アリシアを優しく抱きしめる。

 俺にできること、それはアリシアの側にいること。
 というか、俺にはこんなことしかできないんだ。

「俺もお前と一緒になって笑ってやる、泣いてもやる。俺はずっと、お前の側から離れないから……」

 ふと、アリシアに抱きしめ返されるのを感じる。
 震えた手で、しかしどこか力強く俺の体に縋りつくアリシア。

「ありがとう、ライア……」

 俺は目覚めた後も記憶がハッキリしているが、アリシアがここで起こった出来事を覚えているかは分からない。

 普段のアリシアは絶対に弱音を吐かないからだ。
 本心ではこんなに怯えているのに、態度には毛ほども表さない。

 それがアリシアの強いところであり、脆いところでもある。
 俺にはただ、この脆さがどうしようもなく綺麗に見えた。

 同情、とは少し違うかも知れない。
 俺はただ、全てを知った上でアリシアを愛しているのだ。

 だから俺はアリシアのために何でもする。
 アリシアが涙を流さなくて良い世界を作る、ってのが俺の目標かな。

「大好きだ、アリシア」

 ともかく今は君を抱きしめよう。
 それが一時の夢に過ぎなくても。
 
 君の隣で笑い続けよう。
 ずっと君の笑顔を見続けていたいから。

 …………。
 ………………。

 気がつくと、俺はいつの間にから眠りから覚めていた。
 どうやら辺りを見渡しても、目を開けているのは俺だけのようだ。

「あんまり疲れてなかったからかな……グロリアさんの料理の効果は出ているみたいだし、一安心……っと」
 
 すぐ横で眠っているアリシアを確認する。
 
「むにゃむにゃ……ライア、余は嬉しいぞ……もっと褒めるが良い」

 気持ち良さそうなトロケ顔ですやすや眠るアリシア。
 
「良かった、アリシア様も落ち着いたみたいですね」
 
 そこへ現れるグロリアさん。
 アリシアの寝顔を優しく撫で、安心したように続ける。

「ずっと寝る時は辛そうだったのに……こんなに穏やかな顔でアリシア様が眠るようになったのは、ライアさんと出会ってからなんですよ?」

 そう語るグロリアさんの表情も、実に晴れ晴れとした良い笑顔だった。

「そう、ですね……」

 俺はこの人たちの笑顔を守りたい。
 改めて、強くそう思った。

 たとえ世界が君を悪と呼ぼうと。
 俺だけは必ず、君の隣に立ち続ける。

 
 *


 死傷者こそ少なかったものの、甚大な被害を受けた街。
 ほとんどの建物は倒壊し、インフラは破壊された。

 復興にはかなりの時間を要することだろう。
 しかし、この街を襲う悲劇はこれだけでは済まなかった。

 積み上がった瓦礫の上。
 二人の男が崩壊した街の有様を見下しながら、嘲笑う。

「いいねこのザマ、笑えるだろ?」
 
 その内の一人、渋い顔でサングラスをかけた男が言う。

「あの魔獣人ども、人間の街一つ潰せず犬死にたぁ情けねぇこった」
「で……でもよ、感じるんだ……」

 もう一方の、ボロ布を全身に覆った小男が掠れた声を出す。

「いる、この街に……魔王様、が……」
「マジかよ、ドンマイ! 贄の第一号おめでとさん!」

 小男の背中をバシバシと叩きながら男が言う。

「だが、お前が”魔王の座”を奪い取れば話は別だ。つーか、お前が生きるにはそうするしかねぇんだろ?」
「……ああ、やるよ。やってやる……」

 気合を入れたように瓦礫の山から飛び降りる小男。

「気をつけて行けよー!」

 それを見送るサングラスの男。

「魔獣でも人間でもいい、死肉を貪り魂を喰らえ! そうして我らが王様の”黒き魂は”……より深く、輝きを増していく」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...