Last Life*youth

かりんとう

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メイドNo.1098 佐藤 和

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「新成人の皆様。おめでとう、よくぞここまで育ってくれた。心より祝福を送ろう。
君たちは本日より二十歳となる。
この世に生を受けて二十年たったわけだ。
これからの人生、きつい事も 逃げ出したい事も山の様にあるだろう。逃げ出したいなら 逃げ出して良い。泣きたいなら泣けばいい。
しかし、生きる事を止めてはいけない。


何故か。君達はあと五年の命だからだ。
尊き命。消える必要の無い命。それは
あと五年で途絶える。今この場に居る者全て一人残さず さっぱりと居なくなるのだ。
生きろ。諦めてはいけない。生きるんだ。


…………。少し熱くなってしまったかな。
申し訳ない。 では 最後に。


改めて おめでとう。君達は本日より
"Last Life youth"として生まれ変わる。残りの時を有意義に。 幸せである事を祈る。」

              パチパチパチ

あれだけの熱説に無気力な拍手が鳴った。
少しくらい 感動があってもよいのだろうが、
数年も変わらないままの 模範通りの言葉では
しょうが無い話だ。

「はぁ、やっと終わったぜ、悠哉お前よく寝なかったな。」

「お前が早すぎるんだよ。開始1分もってなかったよね?」

「おっ、まじか。高校以来の記録更新だわ。」

僕は壬生 悠哉(ミブユウヤ) 二年前に高校を卒業。
やりたいことも特に無くて 流れるまま 微妙な大学に入って明日卒業する。 数百年前までは、四年生の大学があったらしいけど、今は二年生の大学しか存在しない。
"Last Life youth"になれば、学歴など必要ないのだ。 あとは ただ死ぬ日を待つだけ。

「悠哉?なに そんな今にも死にそうな顔しちゃって」
 
城戸原 滝(ジョウドハラ  タキ) 中学からの腐れ縁。毎日気だるそうで呆けているのに、顔だけは随分と整っているもんだから よくモテていた。
僕からこいつの横にいた訳じゃないのにいつも寄ってきて、一緒に過ごしてた。お陰様で大体の人からの僕の認識は『滝くんの横にいる人』だったっけ。

「あぁ、いや別に。やることも何も無いし、残された五年をどうしようかなって思ったさ。女性はいいなぁ、これからまだ長い未来が待ってる…。」

「悠哉……。 そんな事言うなよ!俺達には今日から最高の御褒美あるだろ!?」

「御褒美?]

「はぁ!?お前楽しみじゃねぇのかよ。今日から自分専用の『メイド』が配属されんじゃん!」

「あ…忘れてた。」

「まじかよ。お前、本当に夢のひとつもないやつだな。」

『メイド』ー "Last Life youth"なった日、男子にそれぞれ1人配属される。不自由なく最期の生を過ごせるように配属されることが決まっており、国が定めた法律である。どのような子なのかは、配属された日にしか分からないが、有難いことに必ず美しい子であるらしい。

「楽しみだよな、俺は綺麗な子よりも可愛い子がいいな。あ、そーだ。この後暇だろ、奏多先輩に連絡して酒でも飲もうぜ。」
「奏多先輩か。久しぶりだね、うん。いいよ」
「よし、じゃあ電話してみるわ。」
                
       プルルルルル プルルル…

      『おかけになった電話番号は現在使われておりません。繰り返します………』

「あれ、携帯番号変えたのかな。繋がらない。しょうがない。悠哉と二人で飲んでやるか。」
  
なぜこの男は上から言うのか。気の置けない仲であるから、気にしないが突っ込みたいところだった。
「携帯番号を変えたなら、連絡があってもおかしくないけれどね。僕も久しぶりに奏多先輩に会いたかったのにな。」

「まぁまぁ、イケメンの俺が側にいてやるから許せよ、な?」

「うっぜぇぇ、やっぱり僕は家に帰ってメイドさんが来るのでも待っておこうかな。」

「おっと、うそうそ!ごめんて。はぶてないでくれよ悠哉くーん。 」

「うるさいよ、クズメン。」

「クズっ!?おいおい、悠哉ったら酷いなぁ。……でもやっぱり、男の俺なんかより可愛いメイドさんの方が悠哉は、いいよな。」

「それはそうでしょ。……ん?何。滝お前落ち込んでたりしてる?」
                      
「…いや。悠哉、あのさ。伝えるつもりなかっけど、俺、実は昔からお前のことが、すっ………」


                 ドサッ。

「…………滝?」

僕より高いはずの目線が突然消え、雲一つない青空には随分と不似合いな 真っ赤な血が宙を舞った。

「え、は……?滝?」

滝が倒れたアスファルトには止まることなく血が広がり、白かったはずの滝のカッターシャツは赤黒く染まっていった。

どうしたい訳でもなくて滝に触れるとヌルりとした嫌な触感がして、僕の手さえも容易に赤色に変わった。

「な、なぁ。滝。おい、返事しろよ!」

『嘘だろ。いつもの冗談なんだろ、これは随分とタチが悪いぞ。』
その言葉が、声として出なかったのは"滝は死んだ"と本当は分かっていたからだろうか。

不意に顔を上げると、女が立っていた。
腰まで届いている黒い髪。体は黒いマントで覆われていて、厚底のブーツが足先だけ見える。ツバ付きの帽子のせいで顔は見えない。足元に赤く染まりあげた使用済みのナイフが落ちており、右手には鋭く光るまだ綺麗なままのナイフを持っていた。

その姿は『魔女』というに相応し過ぎた。

「おっ、お前誰だよ!!滝を殺したのはお前か!?!」

情けない声で在り来りの台詞を発した。


                          コツン…コツン…

『魔女』の足は間違いなく僕に向かっている。
当たり前だろうが僕も殺されるのだろう。

 「寄るな!おい!来んなよぉ!」

頭が追いつかず、瞬きすら忘れていた僕の目は乾きまくって、視界がぼやけていた。

あぁ、死ぬのか。逃げられるはずはなく、弱々しく後ずさりだけをした。

滝の血で滑り、思い切り倒れた。立ち上がろうにも足が震えて、いうことをきかない。


ケタケタケタと下品な笑い声がする。
『魔女』はもう数十センチ先にいた。

どうしようもない。闘える訳がないし、諦めるしかない。それが妥当な考えだ。
どうせあと五年しか生きられないのだ。
それが今日になっただけの話。そう、ただそれだけの話なのだ。

                         ビュ!!!!!

『魔女』が思い切りアスファルトを蹴り、真っ直ぐこちらにナイフを振り上げた。


  短い人生だったな。まぁ、冴えない僕としては楽しめていたのではないだろうか。友達はいたし、滝もいてくれた。心残りは、彼女が出来なかったことと、最期の滝の言葉を聞けなかったことだろうか。
走馬灯のように過ごした日々が流れる。決心はついた。一思いに殺してくれ。できるなら、痛みは抑えていただきたい。
 

        「風の神よ、我らに御加護を。」


凛とした声が響き、強くも暖かい風が僕を囲んだ。

「お怪我はございませんか、壬生様」

「…………え?あ、はい。」


「あああ!!死んでる!!ちょっとー、リツまだご主人様に挨拶できてないのにぃ~。」

「その様ですね、亡くなっています。可哀想に。残念です。」

「え、別にリツ悲しくないよ?これで2人目だから!あと1人で終われる訳だし。逆にラッキー!」

「…申し訳ございません。勘違いをさせた様で、私は城戸原様の事にお悔やみを申し上げた訳であり、椎名様に対しての言葉ではございません。」

「えええ!!なによ!なごりんのあほ!そんな訂正必要ないから!」

何をやり取りしているのか、理解が出来なかった。とりあえず分かる事といへば、今僕の目の前にるのは きっと多分『メイド』さんだということ。

『なごりん』と呼ばれていた少女は長い髪をポニーテールで綺麗に結び、メイドを象徴する黒のロングスカートを風になびかせている。

もう一人は ツインテールにフリルを沢山にあしらった可愛らしいミニスカートにニーハイ。まさに男のロマンが詰め込まれた『萌メイド』といえよう美少女。  いや待て、アレは何だ。長い鎖状の鞭らしき物を両手に持っている。その鞭の先には、きらりと光る刃が付いている。

訳が分からなかった。僕は一体どういう状況なのだろうか。なんだかラノベの主人公とでも言えそうだ。

「壬生様。」

「……えっ。は、はい…?」

「申し訳ございませんが、もう少々お時間を頂いてよろしいでしょうか。出来るだけ早く終らせますので。」

僕の返事を聞く前に、彼女はぺこりと一礼したあと、『魔女』に向かって言った。

「風の神 アネモイよ。女を束縛して。」

『なごりん』と呼ばれる少女が冷静にそう言うと、『魔女』の手足に僕のとは違う強い竜巻が絡みついた。その風によって魔女の手足が傷付き、血が飛び散る。

「椎名さん、今です。」

「言われなくても わかってるわよ!」

リツという子がすっと息を整えると、目が赤く光った。

「…おイタはそこまでよ、使い魔。私の愛を、全力で受け止めなさい!」


思い切りに振り上げられた1本の鞭が完全に『魔女』の心臓を貫いた。それに続いて突風が吹き『魔女』は空中に打ち上げられた。

「じゃあね。私のご主人様の分、恨みという愛を忘れずに散りなさい。」

  再度貫通した鞭のスパンという気持ち良い音と共に、容赦なく竜巻が『魔女』の体を真っ二つに切り裂いた。

僕は何も出来ないまま、ただ呆然と空中から降る血の雨を眺めていた。

「お待たせ致しました、壬生様。」

「あ…はい。いえ、大丈夫…です。貴女達は一体…」

はっと思い出したかのように彼女は姿勢を正し、スカートの両端を持って言った。

「お初にお目にかかります。壬生 悠哉様…本日より五年間契約で貴方様のメイドに配属させて頂きます。メイドNo.1098佐藤 和(サトウ ナゴミ)です。宜しく御願いいたします。」

壬生 悠哉(20)。"Last Life youth"となり、やりたい事も無く 平凡に過ごすつもりの残り五年の人生が、平凡に終わらないような気がした。
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