1 / 13
第一章 ルシュディーと俺
だ、誰!!
しおりを挟む
『愛しています、――――様。貴方の為ならば、命すら――――ましょう。この身を――、貴方と貴方の――この国を――――へと――』
ふわふわとした意識の中、何処からか真剣な声が響いている。縋るように必死で、振り払うように壮絶に。
愛されているという万能感を覚えながらも、心が張り裂けそうな程の恋心を抱いているような。
秋頃に散り行く夏の花のように、次の季節の肥やしとなる小さな絶望。
でも、どこか他人とは思えなくて、だからといって自分の事とも思えない。
そんな不明瞭な中でプツリと意識が途絶える。
…………
………
……
…
…
……
………
…………
「ん、」
心地の良い微睡みからゆっくりと目を開けようと試みた。
窓から太陽の光でも差しているのか、目を閉じているというのに眩しくて仕方ない。
布団を首元まで引き寄せたい衝動に駆られるが、俺は仕方なく瞼を上げた。寝起きの回らない頭で辺りを見回す。
「白い??」
そう。真っ白いのだ。家具や壁の色が、見覚えのあるものとは全く違う。
畳の部屋で煎餅布団を敷いて、年季の入ったタンスを目の前にして寝ている、そんないつもの寝室とは似ても似つかない。
白いローテーブルに、1人がけのソファ。
サラサラと手触りの良い薄手のシーツに包まれて、着用している服でさえ覚えのないものだ。俺の重たい掛け布団と安物のスウェットはどこだ……。
混乱しながら身体を起こす。なにかのドッキリだろうかと思考を巡らせてみても、25歳で早々に隠居生活を送っていた俺にそんな相手はいない。
なら、ここはどこだろうか。
ベッド脇にある窓からは、宮殿みたいな建物が見えている。アラビアンな感じの、球体が三角屋根の変わりの顔をして付いてる建物だ。ネットとかでしか見た事がない。
「……誘拐とかされた??」
思わず独り言を呟いてしまう。頬を引っ張ったり、叩いてみたりしたが、しっかり痛かった。
俺がパニックになっていると、部屋の扉からノックがされた。そして声がかかる。
「神子様、朝になりました」
「み、神子様……??」
神子様とは俺に言っているのだろうか。
俺は訳が分からず、慌てるままにベットの上で姿勢を正した。
声変わり前の少年の様な声の主が、困惑する俺をおいて扉を開けた。
入ってきたのは、線が細く美麗な見た目の少年だ。とても目を引く容姿だが、なによりも褐色の肌が俺の目を引く。そして、いかにも外国人という風貌から、流暢な日本語が飛び出るのだから、より違和感があった。
彼は俺に黙礼すると、手に持った服を広げて待ち構える。
大きな姿見が壁に立て掛けられている為、着替えさせてくれるという事だろうか……。
明らかに年下の子に?
だけど、今着ている服からも想像がつく通り、見た事がない作りの服。自力で着ろと言われても、絶対に着れる気がしない。
俺は少し考え、意を決して少年の元へ向かった。
少年は慣れた様子で夜着を脱がせ、肌触りも豪華さも丁度良い服へと着替えさせてゆく。
その手際の良さに鏡越しに見とれていたら、とんでもない事に気が付いてしまった。
「だ、誰……!!!!」
今、目の前の鏡に映る自分の顔と、昨日までの自分の顔が違っていたのだ。
黒目黒髪の筈のそれは、銀髪碧眼に変化していた。顔の系統もフツメンからイケメンにジョブチェンジしてるし、身長も違う。自認と現実がかけ離れすぎて、驚愕の表情から動けないでいた。
「神子様、どうされましたか。今日のお召し物はお気に召さないでしょうか」
少年は顔を青褪めさせて問うてくる。しかし、そんな事に構っていられる俺ではない。
自分の置かれた状況に大混乱なのだ。
それでも俺は聞かねばならない。
「い、いや、あの……すんません、俺の名前はなんでしょうか、あとここはどこですか?」
俺のもっともな疑問に、少年は固まってしまった。
互いに見つめ合い、猫と猫の喧嘩前のような状況になってしまう。
しばらくして、少年は再起動すると『侍従長を呼んで参りますので、お待ちください』とどこかへ行ってしまった。
ふわふわとした意識の中、何処からか真剣な声が響いている。縋るように必死で、振り払うように壮絶に。
愛されているという万能感を覚えながらも、心が張り裂けそうな程の恋心を抱いているような。
秋頃に散り行く夏の花のように、次の季節の肥やしとなる小さな絶望。
でも、どこか他人とは思えなくて、だからといって自分の事とも思えない。
そんな不明瞭な中でプツリと意識が途絶える。
…………
………
……
…
…
……
………
…………
「ん、」
心地の良い微睡みからゆっくりと目を開けようと試みた。
窓から太陽の光でも差しているのか、目を閉じているというのに眩しくて仕方ない。
布団を首元まで引き寄せたい衝動に駆られるが、俺は仕方なく瞼を上げた。寝起きの回らない頭で辺りを見回す。
「白い??」
そう。真っ白いのだ。家具や壁の色が、見覚えのあるものとは全く違う。
畳の部屋で煎餅布団を敷いて、年季の入ったタンスを目の前にして寝ている、そんないつもの寝室とは似ても似つかない。
白いローテーブルに、1人がけのソファ。
サラサラと手触りの良い薄手のシーツに包まれて、着用している服でさえ覚えのないものだ。俺の重たい掛け布団と安物のスウェットはどこだ……。
混乱しながら身体を起こす。なにかのドッキリだろうかと思考を巡らせてみても、25歳で早々に隠居生活を送っていた俺にそんな相手はいない。
なら、ここはどこだろうか。
ベッド脇にある窓からは、宮殿みたいな建物が見えている。アラビアンな感じの、球体が三角屋根の変わりの顔をして付いてる建物だ。ネットとかでしか見た事がない。
「……誘拐とかされた??」
思わず独り言を呟いてしまう。頬を引っ張ったり、叩いてみたりしたが、しっかり痛かった。
俺がパニックになっていると、部屋の扉からノックがされた。そして声がかかる。
「神子様、朝になりました」
「み、神子様……??」
神子様とは俺に言っているのだろうか。
俺は訳が分からず、慌てるままにベットの上で姿勢を正した。
声変わり前の少年の様な声の主が、困惑する俺をおいて扉を開けた。
入ってきたのは、線が細く美麗な見た目の少年だ。とても目を引く容姿だが、なによりも褐色の肌が俺の目を引く。そして、いかにも外国人という風貌から、流暢な日本語が飛び出るのだから、より違和感があった。
彼は俺に黙礼すると、手に持った服を広げて待ち構える。
大きな姿見が壁に立て掛けられている為、着替えさせてくれるという事だろうか……。
明らかに年下の子に?
だけど、今着ている服からも想像がつく通り、見た事がない作りの服。自力で着ろと言われても、絶対に着れる気がしない。
俺は少し考え、意を決して少年の元へ向かった。
少年は慣れた様子で夜着を脱がせ、肌触りも豪華さも丁度良い服へと着替えさせてゆく。
その手際の良さに鏡越しに見とれていたら、とんでもない事に気が付いてしまった。
「だ、誰……!!!!」
今、目の前の鏡に映る自分の顔と、昨日までの自分の顔が違っていたのだ。
黒目黒髪の筈のそれは、銀髪碧眼に変化していた。顔の系統もフツメンからイケメンにジョブチェンジしてるし、身長も違う。自認と現実がかけ離れすぎて、驚愕の表情から動けないでいた。
「神子様、どうされましたか。今日のお召し物はお気に召さないでしょうか」
少年は顔を青褪めさせて問うてくる。しかし、そんな事に構っていられる俺ではない。
自分の置かれた状況に大混乱なのだ。
それでも俺は聞かねばならない。
「い、いや、あの……すんません、俺の名前はなんでしょうか、あとここはどこですか?」
俺のもっともな疑問に、少年は固まってしまった。
互いに見つめ合い、猫と猫の喧嘩前のような状況になってしまう。
しばらくして、少年は再起動すると『侍従長を呼んで参りますので、お待ちください』とどこかへ行ってしまった。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる