4 / 13
第一章 ルシュディーと俺
雨乞いの儀式
しおりを挟む
翌日、現実逃避をしまくった末、俺はてるてる坊主を作ることにした。
それは晴れを願うものだろう!と俺も考えたのだが、てるてる坊主をひっくり返したら雨が降る、というおまじないを思い出した。
小さい頃に、同じ施設に居たお兄さんから教わった話だ。小学生のお兄さんが、年下の俺に自慢げに話していた。小さい頃の大切な思い出。
俺はフリューリくんに買ってきて貰った雑貨達の中から、必要な材料を選んで机に並べる。質の良い白い布とつるりとした碧石。そして細く切り揃えられた革紐。
俺は白い布を手に取り、中に丸く加工された碧い石を入れて被せる。布で優しく包んだあと、革紐で結ぶ。
コレで完成。
もちろん顔も描いた。
ニコニコ笑顔で、雨を降らすような表情ではないが泣き顔よりは良いだろう。
たった一つで雨が降るとは思わないので、あと二つほど作っておく。あとはこれを逆さに吊るすだけだ。
俺が雨を司る神に好かれていると言うなら、可愛いこのあめあめ坊主たちをプレゼントする。だから、代わりに雨を降らせてほしい。
そんな想いを抱えつつ、いよいよ雨乞いの儀式を始めなければ。
神官長が言っていた通りに、俺の部屋には誰も寄りつかない。
今日ばかりはフリューリくんも雨乞いの儀式の途中、違う部屋にて待機している。
俺は昼食を摂ったあと、自分の部屋に閉じこもる。
「降ってくれるかなぁ。でも一応、心を込めて作ったから!」
俺はよしっ!と呟き、窓際にあめあめ坊主を飾った。
そして手を合わせて、全力で神頼みである。
神様、仏様、お稲荷様……って多神教にも程があるか、後半2つは神仏の類いだけどこの国の神様じゃないし。
雨を司る神様でも浮気は許してくれなさそうなので、ふざけそうになる脳内を粛清して、真面目に願い奉る。
……五分ほど願い続けたが、流石になんの変化もない。
俺の兄は一晩中踊り続けて、やっと雨が降り出すらしいのだ。そりゃ、こんな簡単な方法で雨は降ってくれないだろう。
「うーん、神頼みだから対価の供物とか必要な感じ? 供物って言っても……あ、これ使えないかな」
俺は昨日作った巾着を窓の縁に置いた。
メインカラーの白に青と黄緑を差し色に入れたものだ。フリューリくんの為に作ったものだが、神とこの国の民の為に背に腹は変えられない。
すまん、フリューリくん!
後でもっと丈夫な巾着をプレゼントさせてくれ!
俺は窓際へ更に身体を寄せて、再び全力でお祈りを始める。今度は、日本にいた頃に台風が来た時の様な暴雨を思い浮かべる。あれほど強くなくていいけど、降水量的な意味ではあれくらいは必要だろう。
「──雨よ降れ、作物がよく育つ恵みの雨よ。命の息吹が永遠に続く、神の恵みを」
気がつけば、そんな言葉を発していた。
この体の持ち主が、儀式の際に何度も唱えていた言葉なのか、それとも雨を司る神とやらが、俺に言わせた言葉なのか。
ただただ、何かと溶け合うような感覚に包まれる。誰かが必死に乞い願う声が、意識の遠くに響いていていた。
ふと、目を開ける。
目を閉じる前よりも随分と暗い。
それもそのはずだ。大きな音を立てて雨が降っているのだから。
雨雲が太陽の光を遮り、ところどころに差し込む光が雨を煌めかせている。
「すげぇ……本当に降った!!」
雨を降らせる対価として、あめあめ坊主と巾着袋は跡形もなく回収されていた。
この感じ、神様はあめあめ坊主をお気に召したのだろうか……?
それとも仕方なく対価として、もらってくれたのか?
「神子様!! 雨が降りましたぞ!!」
バンッ!とドアを開けて、俺に飛びかかるように入ってきた神官長。相変わらず暑苦しくて、情熱的である。
なお、その情熱のほとんどは俺ではなく、神に向いている模様。
この人、もしかして俺の部屋の前で待機していたんじゃないだろうな?
「ごめん神官長、悪いけど少し寝たいんだ。なんだか酷く疲れた……」
気のせいかと思っていたが、雨音を聞いた所で一気に倦怠感に襲われた。もしかしたら、供物では足りなかった対価を、俺の体力で補ったのだろうか。
ベッドに座っているのだが、体を起こしている事すらキツいと感じる。
「そうですか! それは失礼しました!! 雨乞いの儀式はきっと負担も大きいでしょう。前回の雨乞いの儀式は一晩続いておりましたが、今回は数時間で雨を降らせるとは!!! 神子様、素晴らしいですぞ!!」
キラーンと白い歯を輝かせながら、大音声で言う。
しかし、『それにしても!』と話が続きそうになり、全力疾走で駆けつけてきた侍従長に引っ張られ、神官長はズルズルと連行されて行った。
侍従長がやけに慣れた様子だったのは、雨乞いの儀式がある度にああなのか……。
「神子様、お加減はどうですか?」
フリューリくんが軽食を持って心配そうに話しかけてくれた。筋肉神官長の大音量の声の後に聞くフリューリくんの声は一層穏やかに感じられる。
俺は軽食を食べることすら出来ずに、ベッドの上で転がっている。雨の音が聞こえてくる中でぼんやりしていた。
「うーん、動けない。でも、大丈夫だと思うよ」
「……さようでございますか、何かありましたら直ぐにお申し付けください」
「ありがとね」
心地よい雨音を聞きながら、俺の意識は眠りの中へ落ちていった。
それは晴れを願うものだろう!と俺も考えたのだが、てるてる坊主をひっくり返したら雨が降る、というおまじないを思い出した。
小さい頃に、同じ施設に居たお兄さんから教わった話だ。小学生のお兄さんが、年下の俺に自慢げに話していた。小さい頃の大切な思い出。
俺はフリューリくんに買ってきて貰った雑貨達の中から、必要な材料を選んで机に並べる。質の良い白い布とつるりとした碧石。そして細く切り揃えられた革紐。
俺は白い布を手に取り、中に丸く加工された碧い石を入れて被せる。布で優しく包んだあと、革紐で結ぶ。
コレで完成。
もちろん顔も描いた。
ニコニコ笑顔で、雨を降らすような表情ではないが泣き顔よりは良いだろう。
たった一つで雨が降るとは思わないので、あと二つほど作っておく。あとはこれを逆さに吊るすだけだ。
俺が雨を司る神に好かれていると言うなら、可愛いこのあめあめ坊主たちをプレゼントする。だから、代わりに雨を降らせてほしい。
そんな想いを抱えつつ、いよいよ雨乞いの儀式を始めなければ。
神官長が言っていた通りに、俺の部屋には誰も寄りつかない。
今日ばかりはフリューリくんも雨乞いの儀式の途中、違う部屋にて待機している。
俺は昼食を摂ったあと、自分の部屋に閉じこもる。
「降ってくれるかなぁ。でも一応、心を込めて作ったから!」
俺はよしっ!と呟き、窓際にあめあめ坊主を飾った。
そして手を合わせて、全力で神頼みである。
神様、仏様、お稲荷様……って多神教にも程があるか、後半2つは神仏の類いだけどこの国の神様じゃないし。
雨を司る神様でも浮気は許してくれなさそうなので、ふざけそうになる脳内を粛清して、真面目に願い奉る。
……五分ほど願い続けたが、流石になんの変化もない。
俺の兄は一晩中踊り続けて、やっと雨が降り出すらしいのだ。そりゃ、こんな簡単な方法で雨は降ってくれないだろう。
「うーん、神頼みだから対価の供物とか必要な感じ? 供物って言っても……あ、これ使えないかな」
俺は昨日作った巾着を窓の縁に置いた。
メインカラーの白に青と黄緑を差し色に入れたものだ。フリューリくんの為に作ったものだが、神とこの国の民の為に背に腹は変えられない。
すまん、フリューリくん!
後でもっと丈夫な巾着をプレゼントさせてくれ!
俺は窓際へ更に身体を寄せて、再び全力でお祈りを始める。今度は、日本にいた頃に台風が来た時の様な暴雨を思い浮かべる。あれほど強くなくていいけど、降水量的な意味ではあれくらいは必要だろう。
「──雨よ降れ、作物がよく育つ恵みの雨よ。命の息吹が永遠に続く、神の恵みを」
気がつけば、そんな言葉を発していた。
この体の持ち主が、儀式の際に何度も唱えていた言葉なのか、それとも雨を司る神とやらが、俺に言わせた言葉なのか。
ただただ、何かと溶け合うような感覚に包まれる。誰かが必死に乞い願う声が、意識の遠くに響いていていた。
ふと、目を開ける。
目を閉じる前よりも随分と暗い。
それもそのはずだ。大きな音を立てて雨が降っているのだから。
雨雲が太陽の光を遮り、ところどころに差し込む光が雨を煌めかせている。
「すげぇ……本当に降った!!」
雨を降らせる対価として、あめあめ坊主と巾着袋は跡形もなく回収されていた。
この感じ、神様はあめあめ坊主をお気に召したのだろうか……?
それとも仕方なく対価として、もらってくれたのか?
「神子様!! 雨が降りましたぞ!!」
バンッ!とドアを開けて、俺に飛びかかるように入ってきた神官長。相変わらず暑苦しくて、情熱的である。
なお、その情熱のほとんどは俺ではなく、神に向いている模様。
この人、もしかして俺の部屋の前で待機していたんじゃないだろうな?
「ごめん神官長、悪いけど少し寝たいんだ。なんだか酷く疲れた……」
気のせいかと思っていたが、雨音を聞いた所で一気に倦怠感に襲われた。もしかしたら、供物では足りなかった対価を、俺の体力で補ったのだろうか。
ベッドに座っているのだが、体を起こしている事すらキツいと感じる。
「そうですか! それは失礼しました!! 雨乞いの儀式はきっと負担も大きいでしょう。前回の雨乞いの儀式は一晩続いておりましたが、今回は数時間で雨を降らせるとは!!! 神子様、素晴らしいですぞ!!」
キラーンと白い歯を輝かせながら、大音声で言う。
しかし、『それにしても!』と話が続きそうになり、全力疾走で駆けつけてきた侍従長に引っ張られ、神官長はズルズルと連行されて行った。
侍従長がやけに慣れた様子だったのは、雨乞いの儀式がある度にああなのか……。
「神子様、お加減はどうですか?」
フリューリくんが軽食を持って心配そうに話しかけてくれた。筋肉神官長の大音量の声の後に聞くフリューリくんの声は一層穏やかに感じられる。
俺は軽食を食べることすら出来ずに、ベッドの上で転がっている。雨の音が聞こえてくる中でぼんやりしていた。
「うーん、動けない。でも、大丈夫だと思うよ」
「……さようでございますか、何かありましたら直ぐにお申し付けください」
「ありがとね」
心地よい雨音を聞きながら、俺の意識は眠りの中へ落ちていった。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる