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第一章 ルシュディーと俺
押し付け……いや、プレゼント!
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少しだけ俺が不機嫌になったのが分かったのか、気を紛らわせる様にフリューリくんが紅茶を淹れてくれた。従者として本当に最高だよ。
大人なのに自分の機嫌が取れなかった。
すまんすまん!
「まぁ、雨乞いの儀式のやり方は分かったので、今後の心配はしなくて良いですよ。俺の体力が持つ内はやれることですから」
俺自身、もう日本に帰れるとは思っていない。
この身体の持ち主が俺と同化したと思えば、“俺”の名前を忘れていることの理由にもなるだろう。現実逃避としても、心を大事にするのが先だ。
そして身体の持ち主の仕事は俺の仕事でもある。生きていて出来る内は、雨乞いの儀式でもなんでもやってやる覚悟だ。
生きていれば趣味も娯楽も楽しめる地位にいるのだから、それなりに権力やお金を使って楽しく過ごしたい!
そこまで考えて、ふと気がつく。
「あ、そうだ。ダガン卿、良かったらコレを貰ってくれませんか」
俺はポーチに入れていたネックレスを出して、俺の突然の行動に警戒を示すダガン卿に手渡した。ネックレスについた天然石が、キラッと光って美しさをアピールする。
「これは……ネックレス? どうしてまたこれを?」
「作ったんですよ。しかし、貴族達にも使用人にも、あまり好まれないようでして。使用人達に押し付けるのも限界がありますし。そもそも、フリューリくん以外の使用人とはそこまで仲良くないので」
グイグイと押し付けながら、俺はダガン卿に微笑む。
「……だから俺にくれたのですか。ふむ、確かに出来も質もよい。だが、革細工のアクセサリーは今、流行っていないですからね。見慣れぬ意匠ですので、売ればそれなりに価値が付くでしょうが、売らぬのですか?」
「売りたいけど、貴族向けには売れないでしょ?」
「ええ、ですから庶民の贅沢品として販売するのが良いでしょう。職人へ委託されますか?」
委託販売、か。
自分で作るのが楽しいからやってるだけだからなぁ。
それに庶民の贅沢品とか、ターゲット層を絞るつもりはあまりない。いや、娯楽品にお金を使える貴族をメインターゲットにするつもりだったけど。
ハンドメイド作家をしていた時とは違って、同じものを何個も大量生産するつもりもないのだ。気が向くままに作って、それが誰かに気に入って貰えるのが1番嬉しい。
「委託はしないかな。結局、手慰みだからさ」
「……ならば、使用人に市で売らせればいいでしょう」
市とは身分差や大棚、小売と関係なく全ての人が商いを開ける定期的な街のイベントだ。貴族のお下がりのアクセサリーなどが安く手に入ったり、見事な発明品が売られていたりと、この国の人的資源の発掘場所だったりもする。
フリーマーケット的な感じだ。
「ああ、確かに。ダガン卿! その案、採用! フリューリくん、市で売り子をしてくれるメイドを数人集めてくれる? 給金も上乗せしてあげて」
フリューリくんは恭しく頭を下げ、目線で侍女に合図を送る。
俺はというと、また自分の作品を売れる事が嬉しくて、上機嫌だ。
「ふふ、ダガン卿。良い案をありがとう。助かったよ」
「お役に立てたなら良かった。それでは、私はここらで失礼します」
「ああ、そうだ。これを殿下に渡してください」
俺は美しい布で作った袋ごと、それを手渡す。未だに顔を見せない殿下とやらに、俺なりの存在証明だ。
俺はここにいる、雨を降らせる道具ではない、と。
雨を降らす対価として動けなくなった時に、ちょっとだけ腹が立ったのだ。暇を持て余した俺の嫌味みたいなもの。幼稚なのは承知だけど!
「では、これで」
俺はダガン卿の反応を見ないうちに、部屋を後にした。
大人なのに自分の機嫌が取れなかった。
すまんすまん!
「まぁ、雨乞いの儀式のやり方は分かったので、今後の心配はしなくて良いですよ。俺の体力が持つ内はやれることですから」
俺自身、もう日本に帰れるとは思っていない。
この身体の持ち主が俺と同化したと思えば、“俺”の名前を忘れていることの理由にもなるだろう。現実逃避としても、心を大事にするのが先だ。
そして身体の持ち主の仕事は俺の仕事でもある。生きていて出来る内は、雨乞いの儀式でもなんでもやってやる覚悟だ。
生きていれば趣味も娯楽も楽しめる地位にいるのだから、それなりに権力やお金を使って楽しく過ごしたい!
そこまで考えて、ふと気がつく。
「あ、そうだ。ダガン卿、良かったらコレを貰ってくれませんか」
俺はポーチに入れていたネックレスを出して、俺の突然の行動に警戒を示すダガン卿に手渡した。ネックレスについた天然石が、キラッと光って美しさをアピールする。
「これは……ネックレス? どうしてまたこれを?」
「作ったんですよ。しかし、貴族達にも使用人にも、あまり好まれないようでして。使用人達に押し付けるのも限界がありますし。そもそも、フリューリくん以外の使用人とはそこまで仲良くないので」
グイグイと押し付けながら、俺はダガン卿に微笑む。
「……だから俺にくれたのですか。ふむ、確かに出来も質もよい。だが、革細工のアクセサリーは今、流行っていないですからね。見慣れぬ意匠ですので、売ればそれなりに価値が付くでしょうが、売らぬのですか?」
「売りたいけど、貴族向けには売れないでしょ?」
「ええ、ですから庶民の贅沢品として販売するのが良いでしょう。職人へ委託されますか?」
委託販売、か。
自分で作るのが楽しいからやってるだけだからなぁ。
それに庶民の贅沢品とか、ターゲット層を絞るつもりはあまりない。いや、娯楽品にお金を使える貴族をメインターゲットにするつもりだったけど。
ハンドメイド作家をしていた時とは違って、同じものを何個も大量生産するつもりもないのだ。気が向くままに作って、それが誰かに気に入って貰えるのが1番嬉しい。
「委託はしないかな。結局、手慰みだからさ」
「……ならば、使用人に市で売らせればいいでしょう」
市とは身分差や大棚、小売と関係なく全ての人が商いを開ける定期的な街のイベントだ。貴族のお下がりのアクセサリーなどが安く手に入ったり、見事な発明品が売られていたりと、この国の人的資源の発掘場所だったりもする。
フリーマーケット的な感じだ。
「ああ、確かに。ダガン卿! その案、採用! フリューリくん、市で売り子をしてくれるメイドを数人集めてくれる? 給金も上乗せしてあげて」
フリューリくんは恭しく頭を下げ、目線で侍女に合図を送る。
俺はというと、また自分の作品を売れる事が嬉しくて、上機嫌だ。
「ふふ、ダガン卿。良い案をありがとう。助かったよ」
「お役に立てたなら良かった。それでは、私はここらで失礼します」
「ああ、そうだ。これを殿下に渡してください」
俺は美しい布で作った袋ごと、それを手渡す。未だに顔を見せない殿下とやらに、俺なりの存在証明だ。
俺はここにいる、雨を降らせる道具ではない、と。
雨を降らす対価として動けなくなった時に、ちょっとだけ腹が立ったのだ。暇を持て余した俺の嫌味みたいなもの。幼稚なのは承知だけど!
「では、これで」
俺はダガン卿の反応を見ないうちに、部屋を後にした。
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