脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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ディストネイルの狙い2

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「悪いな、お取り込み中だったか?」

「っ…。
オーナーは殿下のが酷いと分かってて連れてきたんですよね?
なら、そうなったとしても、とやかく言われたくありません。」

そもそもは隊長が殿下を連れてきたことから始まったことなので、私はムッとしながらも彼にそう言う。




「…それより、どうだったのですか?
何かあったから私を呼んだんですよね。」

彼が私を呼んだのは、きっとリンマナのことだろう。そう思いながら彼の後に続いて歩いていくと、やはり彼女の部屋へと着いた。


「話は入ってからだ。」


ギィッと音を立てて開いたその扉の中にいたのは、リンマナと薬の匂いのする男、そしてクローヴィスだ。

リンマナと男は、逃げられないようにするためか、クローヴィスの包囲魔法によって囲われていて、その場からは動かないようだった。



「まさか微かな匂いを嗅ぎ分けられる人がいたなんて、うかつだったわ。
初めてここにきた日はあなたのような人見なかったのだけれど…。」

クローヴィスの包囲魔法によって動きの制限されているリンマナは口を開いた。


「お前達はこの包囲魔法から出られない。
吐露魔法を使われたくなければ、お前達の目的を全て吐け。」

吐露魔法。それは禁止とされているもので、一般市民に使うことは許されてはいない。
しかし、先日国王陛下が麻薬に染まっていたこともあり、薬の匂いのするこの者たちの狙いを知らなければならないのだ。


「…申し訳ありませんが、私たちも命が掛けなものでして、こちらの国で私たちの安全を確保してくれるのであれば情報を提供しましょう。」

「…こちらはお前らの命を今ここで握り潰すことだってできるんだ。交渉するなんておかしな話だと思わないのか?」


「…国内の者であれば有無を言わすことなくその魔法で口を割らせることはできましょう。だけど、私はディストネイルの者です。」


確かに他国のものに対してそんな対応をしてもいいという法律はない。しかし、相手は隊長だ。そんなことは関係がないだろう。


「…俺がしないように見えるか?」


ジッとリンマナを見ると、リンマナはグッと力んだようだった。


「あなた達を匿うことで、私たちが得られる利益は何?あなた達は私たちに何をしてくれるというの。」


次に私が口を開くと、彼女は両手を握りしめ、下を向いた。


「…私たちディストネイル王のお考え、そして国の情報を提供します。あと…私たちがあなた達の役に立つよう駒となる…。それで手を打っては貰えないでしょうか。」


「…ほう。お前達は何ができるというんだ。他国のものをすんなりと胸元に入れてやると思うのか?」


「……。それは…。」

何も言えない。ということだろうか。私たちに取引を持ちかけた彼女は、どうやって信用して貰うべきかと考えているようだった。

「っ僕は薬師です。毒物、そして調薬、毒味の仕事をしてみせます。僕がいれば、この国で出回る、ニーヴローズのことも止めてみせましょう。」


先程まで黙っていたその男が放った、ニーヴローズの言葉に、隊長は眉を動かした。

「…ほう。包み隠さず全て話せ。お前達の能力もだ。その情報、そしてお前らが匿うに値するものであるならば、“戦場の剣”の名がお前達を守ってやる。」


ニヤリと笑うその顔は、味方であっても怖い。彼の前に嘘の情報など話せば、その場で首を跳ねられかねない。そう思わせた。


「…まず、ディストネイルの狙いからお話し致します。

…ディストネイル現国王は、隣国ジョルジュワーン国と、無敵の国であるヴィサレンス国が対峙することを目論んでおられました。」


「ジョルジュワーンは…その。言いにくいのですが好戦国と聞いております。だから国王陛下にニーヴローズの原油を飲ませれば、ヴィサレンスに戦争を仕掛けるものと思っておりました。そうして共倒れ、はたまたそれ同等のこととなれば、ディストネイルが頂点に立つ。とのお考えでした。」


確かにジョルジュワーンは魔物や魔族が出た際に1番最初にその場に赴くほど、戦いの場では名を挙げてきた。しかしそれは、守りの強いヴィサレンスとは違い、国を守れる者がいなかったから、その元凶をすぐにでも摘み取りに行っていたからで、戦いや戦争が好きなわけではない。

現に今は、守りの番人と呼ばれるブルレギアス様が国にいることで、魔物が出てもすぐには駆けつけなくなった。


「しかし、ニーヴローズをジョルジュワーン国王陛下に飲ませたはずが、いくら待っても戦争は始まることはなく、ディストネイルの国王は痺れを切らし、投薬した者、つまり私の師であり、父である者を手にかけました。



「ほう。国王に薬を飲ませた者はもうこの世にいないと言うことか。」


「…はい。そして、ディストネイルの国王が次に目を向けたのが私です。
次は成功させてこいと私をこちらの国に送りました…。
しかし、この国に来てすぐ、国王陛下よりも王太子である第一王子に決定権が移っているのではないかと思い始めたのです。」


それは違う。国王陛下は今も決定権を担っている。しかし、表立って人の前に立つのはブルレギアス様になったというだけだ。


「だから僕と彼女は、まず、情報を得るためにここに潜入することにしたのです。
…そして今日、作戦を諦めてこちら側に寝返る話をしていたところでした。」


「どうして諦めたんだ。」

「…私は…いえ、私も父も、人を苦しめるものを作るのは向いていないのです。やはり人を助けるものでなければ、私は自身を許すことができません。」


「ほう…。」


「ですから、私たちの身の安全を保障してくださるのであれば、今出回っている薬の処分。そしてその者を特定し、解毒させることを約束いたします。」


そこまで聞いて、隊長は悪くない話だと思ったようだ。腕を組み直し、その男を見ていた。



「お前が俺たちの役にどう立つかは分かった。しかし、その女は何ができる。
お前を脅すための人質くらいしか役に立たないだろう。」


彼が変な気をおこさないように牢に閉じ込めておく。しかしそれも考えられている場合なら彼にとっては痛くも痒くもないことだろう。

するとリンマナも口を開いた。

「私は、このだけしかありません。」

一体どういうことだろうか。
するとまた彼女が口を開いた。


「私はディストネイル国王の1人娘です。
それでもこうやって他国へと潜入させられるほどに駒として扱われているのです。
私は父の命令を聞くことで生きながらえてきました。そして今回、上手くいくことのない作戦に、私はもうそれを成功させる気すらないのです。
今日もどうやって父の手から逃れようかと話しているところでした…。
そしてあなた方に見つかってしまった。
いや、見つけてもらった。
あなた達に命乞いをして、匿って貰うことしかできないのです。」



「そうか。それでは、お前の処遇は上に報告してから決めることにする。それでいいか。」

「っ。」


仕方ない。彼女は私たちに何かをもたらしてくれる訳ではないようなのだ。

「…っ。僕が彼女の分まで働きます。だからどうか!…っ。」

彼が咄嗟に彼女を庇ったのを、隊長は睨む。
隊長に願いを聞いて貰うなど、無理に等しいのだ。


それを見てしまった私は口を挟まずにはいられない。


「……隊長。、彼女の命の保証を頼みますわ。彼女は私が面倒を見る、それでどうにかしていただきたいです。」



私がそういうと、隊長はため息をついた。


「エミリー。お前はどうしてそんなに甘いんだ。隙をついて首を取られても文句は言えないぞ。」


「…私の首は安くはありません。私1人を殺せば必ず死が彼女を捕まえるでしょう。」

それは、私1人の命で、何人も動いてくれることを理解してのことだ。


「私が彼女の面倒をみます。」


再度そう伝え、ジッと彼と目を合わせれば、隊長は分かったとだけ言ってくれた。


「ただし、報告は俺がする。分かったな。」

そう言って隊長はクローヴィスに移転魔法を頼み、多分ブルレギアス様の元へと向かった。


残された私は、部屋に戻るわけにもいかず、
隊長の代わりに管理室で休んだ。



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