脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

文字の大きさ
39 / 104

足湯①

しおりを挟む


それから私とレヴィは、2人で魔力石作りをした後に組み手をするという日を何日か過ごし、それを終えた今は2人で休憩をしていた。


それはミレンネが聖女式典の準備を終えて戻ってくるまでの数時間で、随分とあっという間に過ぎてしまうものだった。


そんな中で声をかけてきたのはいつものようにグリニエル様の腕に寄り添うセレイン様だ。


「まあまあ!エミリー。
こんな場所で一体何をしていたの?汗までかいているじゃない。」

突然入り口に姿を見せたセレイン様はいつもとは違うドレス…いや、見たこともないデザインの服を纏っている。

「あ、…レヴィと組み手をしていたのです。
ヴィサレンスの武術はジョルジュワーンのものと違うので興味がありまして…。」

「ふーん…。体を動かして汗だくになることを厭わないなんて不思議な子ね…、
武術なんて、魔法が使えれば無意味なものだと思うけど。」

「は、ハハハ…。」


まあ、確かに、魔法の使える彼女らであれば武術など必要ないのだからそう思ってもおかしくはない。しかし、私には使える魔法がないのだから、武術に頼るしかないのだ。


それに、ジョルジュワーンにヴィサレンスの武術の技術を持ち帰るのは、ジョルジュワーンにとって利益と繋がるだろう。
まあ、生まれ持ったセンスは必要となるだろうが、みんながみんなできないわけでもないだろうから、レヴィと共に組み手をさせてもらっているのだ。



「それよりセレイン様、そのドレスは変わったデザインですね。よくお似合いです。」


オレンジ色の生地に大輪のバラがあしらわれたその服は、胸元がY字のようになっており、腹部は太い布で縛られている。



「これは着物…その中でも薄い生地で作られている浴衣、というものなの。
イザベラ様の遠い祖国であるサクリ国での民族衣装のようなものなの。
これを着ていると動きが制限されて、とても落ち着きのある雰囲気になるわ。」


サクリ国。それはとても小さな国で、あまり知られていない国だ。ただ一つ私が知っていることといえば、その国の人は漆黒の髪をしているということ。

隊長やイザベラのように黒髪を持つものは、サクリ国の血を受け継いでいるのだろう。
それくらいだ。

謎の国であれば私の知らない服があってもおかしくはない。そう思った。



「本当ならに行きたいところだけど、グリニエル様と一緒に入ることはできないから、足湯に御案内しようと思っていたの。
エミリーも一緒にどうかしら。
気持ちいいわよ。」


今彼女が身につけている衣装はサクリ国の服で、揺れるたびに腕元のゆったりとしたそれは揺れ、足先まで隠す裾は令嬢のドレスのように淑やかに魅せてくれる。

しかし、胸周りの豊かなセレイン様は、そこだけくっきりとしており、きっとそれをグリニエル様に見せたかったのだろうと思った。



「んー…行ってみたいとは思いますが、今はレヴィと過ごしていたものですから…。」

はっきり言えば、セレイン様とグリニエル様と私の3人で行くことに少しばかり抵抗がある。

2人の時間を邪魔したくはない。







「それならレヴィも一緒に行けばいいわ。
そうでしょ、レヴィ。
断るなんてしないわよね。」



レヴィの意見は求めていない。

そういうようにセレイン様が言うと、レヴィはため息をついた。




「…私も行くよ。少し休憩でもしよう。」

眉を下げ、優しく告げる彼はどこか寂しそうに見える。



「決まりね。
さあ、エミリー。浴衣には色々なデザインがあるから、早速見にいきましょう。

せっかくですからグリニエル様もお召しになってください。男性用もありますの。」


グイグイといつものようにグリニエル様の腕を引っ張るセレイン様は、先程までのはんなりとした大人の色気はなく、強引な女の顔に近い。

しかしそれも彼女の魅力の一つ。

私たちは浴衣を選びに別室へと移動し、その部屋に呼びつけられたであろうステファニーによって様々な施しを受けた。












「さあ、行くわよ、エミリー!」

紺色の生地に沢山の華やかな花が散りばめられた浴衣を着せられた私は、ステファニーに髪を綺麗にまとめ上げられ、準備を終えた。


「お待たせ致しましたわ。」


私の手を引きながら部屋から出たセレイン様はそのままグリニエル様の元へと掛けていく。


「…。」

私は慣れない格好に少しソワソワしていると、レヴィが近づいてきた。


落ち着いたラベンダー色の浴衣を着るグリニエル様とは違い、濃い色の浴衣を着るレヴィは、私のものと色が似ている。
そして寒いのか、その上に羽織を着ていた。



「君は濃い色も似合うね。」

手のひらを差し出しながらそう言うレヴィは、しっかりと私の瞳を見つめている。


「…ありがとう。」

なんだか少し恥ずかしい。
セレイン様の薦めで、慣れない下駄というものも履いているため、私は素直に彼の手を取った。


そんな中で、グリニエル様が
私とレヴィを見ていたことなど、
気付くはずもなかった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...